第91話 降り立つ雷鳴
七色騎士の残骸から溢れた芳醇な魔力が、私の握る精霊刀へと吸収されていく。
内包する魔力の質が格段に良くなった気がする。
虹魔術の性質が部分的に引き継がれたようだ。
私にかかった重力魔術を解いたバジルは、構えを解いて笑う。
「七色騎士は雑魚でしたね」
「虹魔術は強いが、とにかく能力頼りって感じだった。本人の実力も高かったら、もっと苦戦したと思うな」
「楽に勝てたんですし、運が良かったと思っときやしょう」
崩壊した酒場で、私達はテーブルと椅子を立てて座る。
奇跡的に無事だった酒を見つけると、それを開けて飲み始めた。
ちびちびとグラスを傾けつつ、バジルは私に尋ねる。
「今までの標的からは何か得られたんですかい。そいつらの武器とか魔術とか」
「剣王は大剣を貰った。茨妃は宮殿の宝だったな。それぞれノルフとシェリーに預けてある。討伐証明として分かりやすいだろ」
「七色騎士はどうします?」
「うーん……鎧は死体は肉片になったし、槍だけ持っていくか」
私は陥没した床に目を剥ける。
そこには穂先が折れてひん曲がった槍があった。
七色騎士の持っていた武器だ。
一見するとガラクタだが、虹魔術が馴染んで特殊な力が宿っている。
それだけで相当な価値があるし、他にも使い道がありそうだった。
席を立ったバジルは、新たな酒瓶を探しながら訊いてくる。
「そろそろ次の標的のもとに行きやすかい?」
「いや、行かない」
「ん? それはどういう――」
バジルの疑問を遮るように、天井が爆発した。
轟音と共に着地したのはソヂナだ。
逞しい腕は満身創痍のドワーフの老人——盾神ココンを掴んでいる。
派手に登場したソヂナは嬉しそうに声をかけてくる。
「よう、リア! 連れてきたぞぉ!」
「ちょうどよかった。そっちに置いといてくれ」
「おう!」
頷いたソヂナは盾神に雷撃を浴びせて動きを封じる。
持続的な痺れで拘束しているようだ。
酒瓶を持ったバジルは、ソヂナと盾神を交互に見て困惑していた。
「えっと……どうして雷神の旦那が……?」
「ソヂナには一時的に精霊刀から離れてもらって、盾神の捕獲を頼んだんだ」
「そんなことできたんですかい」
「別に封印されてるわけじゃないからな! 俺はいつでも出入り自由ってわけさ!」
ソヂナは元気よく応じる。
望まぬ憑依だったバートンの時と比べ、実に上機嫌な様子だった。




