第8話 戦闘訓練
翌日から使用人としての仕事が無くなり、座学と戦闘訓練に集中することになった。
ノルフの説得が上手くいったらしい。
エルスワーズ家による虐待やら人体実験は続いたが、あまり気にならなくなった。
気持ちが前向きになったからではない。
戦闘訓練の方がずっと厳しいからだ。
砂利の敷かれた敷地内の一角で、私とノルフは剣を持って対峙する。
ノルフが一気に走り寄ってきた。
身体強化による加速に反応できず、鋭い刺突が首を貫く。
「……っ」
私は血を吐きながら剣を振り回した。
ノルフは最低限の動きで回避すると、そこから力強い蹴りを繰り出してくる。
蹴りが腹にめり込んで私は吹っ飛ばされた。
地面を転がった末に嘔吐する。
ノルフがゆっくりとこっちに歩いてきた。
「早く立ってください。休憩はまだ先ですよ」
「ま、待って……」
「いいえ、待ちません」
ノルフが容赦なく剣を振り下ろしてきた。
私は斬撃を剣で弾こうとして失敗した。
こちらの防御を読んだノルフが、刃の軌道を寸前で変えてきたのだ。
滑らかな動きで迫る剣が私の顔面を叩き割る。
視界が裂けてノルフが二人になった。
「あなたは己の才覚を理解しておりません。不死身の肉体とは、途方もない可能性を秘めています。鍛えれば鍛えるほど真価を発揮するのです」
ノルフが連続で突きを放つ。
突きはどんどん速くなり、私の目ではまったく追えなかった。
全身に穴が増えていくのが分かる。
傷の治りもいつもより遅い。
絶えず致命傷を負い続けるせいで再生力が不足していた。
私はその事実に驚く。
(こんなこと初めてだ)
ただ再生魔術に任せているだけでは駄目だ。
意識して制御しないと絶対に敵わない。
私は自分の魂に刻まれた術式に強く念じ、再生力を瞬間的に高めた。
全身の穴が塞がり、視界が元通りに繋がる。
ノルフが意外そうな顔になった。
「おや」
私は勢いよく踏み込み、ノルフの首を狙って剣を薙いだ。
今度こそ当たると思ったが、剣は空を切った。
特に動揺もすることなく、ノルフは涼しい笑みで私を褒める。
「良い反撃ですね」
「渾身の一撃を簡単に躱すなよ……」
「まだ私にとっては遅すぎる攻撃ですから。そこは忖度は致しませんよ」
そう言ってノルフは猛攻を再開する。
結局、この後も私はひたすらノルフの剣技を浴びる羽目になった。
彼との鍛錬はとんでもなく過酷だが、決して意地悪なことはしてこない。
すべては私の成長のためだと分かっているので、割と楽しい時間であった。




