第64話 兄妹の衝突
突進してくるラインに合わせて、私は精霊刀を投擲する。
腐蝕の闇を込めた一撃に、ラインは回避を選んだ。
炎の噴射で挙動を変えながら加速し、そのまま義足による飛び蹴りを放ってきた。
私は片手で蹴りを受け止める。
そのまま握り潰そうとした瞬間、ラインが勝ち誇ったように笑う。
「馬鹿め! 焼き殺してやるッ!」
ラインの義足から無数の棘が飛び出し、私の手を貫いた。
さらに噴き上がった炎が私を包み込んでくる。
炎は腕から全身へと伝わり、骨の髄まで焼き尽くしそうな勢いだった。
(仕込み武器の義足か。面白いな)
私は感心しながら鎖を引く。
投擲した精霊刀が戻ってくるも、それを察知したラインが紙一重で躱す。
ラインは私を睨んでから、瞬時に距離を取った。
至近距離での攻防を続けるのは危険だと判断したのだろう。
憎悪を滾らせながらも、判断力は保てているようだ。
全身が炎上する私にシェリーが水をかける。
彼女は慌てた様子で呼びかけてきた。
「お姉様、大丈夫ですかっ!?」
「ああ、平気だ」
焼け焦げた肌を一瞥し、私はラインの能力を分析する。
最初の印象通り、以前と比べてとてつもなく強くなっていた。
機動力、破壊力、反応速度のすべてが高い水準でまとまっており、優秀と評しても差し支えの無い段階に達している。
バジルやノルフのような達人に比肩するほどではないものの、並の兵士ではまず敵わないはずだ。
たぶん薬物や禁術を使って強化したのだろうが、戦闘技術も向上した様子がある。
私達が不在の間、それなりに実戦経験を積んできたらしい。
全身の火傷が再生したところで、私は静かに微笑む。
「悪くないな……」
精霊刀を握って攻撃を仕掛けようとしたその時、シェリーが手で制してきた。
私は目だけ動かして訊く。
「なんだ?」
「お姉様……ここはわたくしが戦います……いえ、戦わせてください!」
「大丈夫なのか?」
「はい! 妹として引導を渡そうと思います」
そこまで言われたら邪魔することもない。
私が下がると同時に、シェリーが水の壁を作りながら歩き出す。
全身に炎を纏うラインが吐き捨てるように言う。
「図に乗るなよ、シェリー。お前如きが――」
ラインの言葉を遮るように、シェリーが圧縮した水が発射した。
目を見開いたラインは、展開した炎の盾で攻撃を散らす。
冷酷な雰囲気を放つシェリーはラインに命じる。
「余計なことを喋っていないでかかってきなさい。格の違いを教えて差し上げます」




