第63話 炎熱の再会
私とシェリーは強化兵を蹴散らしながら突き進む。
シェリーの水魔術が致命傷を与えてくれるため、私は死にぞこないの個体を精霊刀で腐らせるだけだ。
実に楽な作業である。
射程外を歩く強化兵は、ノルフやバジル、伯爵に任せればいいだろう。
彼らが束になれば、どれほど強靭な敵だって凌駕するはずだ。
掴みかかってきた強化兵の首を刎ねると、シェリーが目を輝かせて賞賛してきた。
「さすがお姉様! 見事な腕前ですわ!」
「お前の攻撃が的確だから上手くやれるんだ」
「はうっ、ありがたきお言葉ですわ!」
張り切るシェリーが濁流を発生させて、進路上の瓦礫と強化兵の死骸をまとめて押し流す。
その後も数体の強化兵を殺したところで、エルスワーズ家の屋敷が見えてきた。
私は鎖で精霊刀をぶん回して投げ放つ。
「よっと」
精霊刀の一撃が、封じられた正門を破壊した。
そのまま敷地内の芝生の上に着地する。
水魔術を解除したシェリーは軽く呼吸を整えている。
連続使用は疲れるようだが、まだまだ余裕はありそうだ。
私は改めて屋敷を眺める。
外観は記憶のままだが、あちこちから禍々しい魔力を感じる。
やはりグールや強化兵の元凶はここにあるのだろう。
「ずいぶん久々な感じがするな」
「そうですわね。嬉しいものではありませんが」
話しているうちに屋敷の玄関扉が開いた。
ゆっくりと現れたのは、ライン・エルスワーズ――つまりシェリーの兄だ。
私に切り落とされた右腕と右脚はそれぞれ金属製の義手と義足となり、少しぎこちない動きで歩いてくる。
その顔には深い憎悪が刻まれており、纏う魔力も以前とは比べ物にならないほど邪悪なものに変貌していた。
(色々と強くなる"工夫"を凝らしたようだな……)
ただの鍛錬でそこまで変わるはずもない。
非合法的な手段に頼ったのだろう。
私は皮肉を込めてラインに話しかける。
「好き勝手やってるそうじゃないか」
「それはこっちの台詞だ、リア。エルスワーズの名を穢す狂人がッ!」
怒鳴るラインがいきなり紫色の炎を放ってきた。
炎は芝生全体へと瞬く間に広がっていく。
咄嗟にシェリーが水の壁を張らなければ、私達も火だるまになっていたに違いない。
ラインは怒りが静まらない様子で両手に炎を灯す。
「シェリー……お前には失望したぞ。まさかそいつの味方をするとは」
「話しかけないでくださるかしら。あなたはエルスワーズの面汚しです」
冷淡なシェリーの返答を聞いた瞬間、ラインが吠えて襲いかかってきた。




