第62話 本隊到着
強化兵の死骸を目撃した伯爵が驚嘆する。
「すごいな……あれだけの怪物を一撃とは……」
「レグゥの置き土産のおかげだな」
私は精霊刀をくるくると回す。
改めて使ってみたが、三種の属性が込められているのは非常に便利だ。
敵の特性によって使い分けたり、今回のように畳みかけるように追加攻撃を打ち込めるため、とにかく汎用性が半端ではない。
再生魔術は直接的な攻撃手段に乏しいので、私にとって最高の相性と言える武器であった。
そんなことを考えていると、新たな強化兵が続々と出現し始めた。
見える範囲でも十数体はいる。
いくつもの巨体が街を粉砕して突き進む光景に、私は舌打ちをする。
「ったく、面倒くせえな……」
「ここは私が引き受けます。リアさんは先に進んでください」
ノルフが毅然と前に出る。
頼もしいその背中に私は問いかけた。
「いけるのか?」
「リアさんの攻撃を見て、対処法を閃きました。討伐は十分に可能かと」
「オイラも手伝いやしょう。重力魔術は足止めに最適ですぜ」
のんびりとした様子で現れたのはバジルだ。
彼の背後から竜の部隊も集結し、上空から強化兵にブレスを浴びせた。
ブレスを食らった強化兵は転倒し、焼け爛れた皮膚を晒してのたうち回る。
いくら強固な肉体を持っているといっても、さすがに竜の攻撃は通用するようだ。
竜は付近を旋回し、強化兵に断続的な攻撃を繰り返していく。
変動した戦局を見て、伯爵は嬉しそうに微笑む。
「ふうむ。これだけの戦力なら対処できそうだね」
「じゃあ私だけ屋敷に向かうか」
決意した直後、遠くからシェリーが疾走してきた。
いや、あれは走っていない。
足場にした水を操作することで高速移動しているのだ。
シェリーは滑るように近付いてくると、私に向かって手を伸ばしてきた。
「お姉様っ!」
私はシェリーの手を掴む。
その瞬間、私の足元も水に覆われて高速移動に加わった。
特に何もせずとも足は沈まず、景色がどんどん過ぎ去っていく。
これは楽でいい。
シェリーの鍛錬の成果ということだろう。
手を繋ぐシェリーは意気揚々と叫ぶ。
「このままぶち抜きますわァッ!」
ブレスを突破した強化兵が私達に迫る。
シェリーは予備動作なしに水を発射した。
極限まで圧縮された水は強化兵の額を撃ち抜き、さらに後方の強化兵を何体か倒す。
最低限の消耗で急所を破壊する、完璧な攻撃だった。




