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殺戮令嬢リア・エルスワーズの華麗なる侵略史  作者: 結城 からく


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第6話 最低な役割

 鋼鉄で補強された部屋の中央で、私は裸になっていた。

 出入り口のそばには、杖を構えたマーサ・エルスワーズが立つ。

 マーサは何かに苛立った表情で私に命じる。


「感謝の言葉を述べなさい」


「はい。ありがとうございます、マーサ様」


 風の刃が放たれ、私の左肩を掠めた。

 皮膚と肉が裂けて出血する。

 見た目よりは痛くない。

 傷を見たマーサは冷たい声で言う。


「感謝の言葉」


「ありがとうございます」


 また風の刃が飛んでくる。

 今度は骨ごと切断されて右腕が床に落ちた。

 私は腕を拾い、切断面を密着させて再生させる。

 すぐに繋がって指先まで動かせるようになる。


「感謝は?」


「はい、ありがとうございます」


 受け答えのたびに風の刃が放たれた。

 連続で切り刻まれた私はあっけなくバラバラになった。

 首から下を失った私は、ぼんやりとした顔でマーサを眺める。


 マーサは風で私の肉片を集めて再生を促した。

 肉片同士が繋がり、血みどろの私はゆっくりと立ち上がる。

 発言しようと思ったら、風の刃が腹を引き裂いた。

 こぼれ出す臓物を見下ろして、小さくため息を吐く。


 その後もマーサは何十回と攻撃を繰り返した。

 私は切断されては再生し、何度も何度も生と死を味わう。

 虐待が始まってから一体どれだけの時間が経ったか分からない。

 脳を刻まれるたびに感覚が狂うせいだ。

 これ以上、頭が馬鹿になったらどうしよう。

 座学で学んだことも忘れやすくなってるんじゃないか。


 心配になった私は、切り刻まれながら頭の中で復習をする。

 そのうちマーサが魔力切れになり、疲れた様子で部屋を出て行った。

 去り際に「つまらない娘ね」と罵られたのは、どんな苦痛にも私が泣き言を洩らさなかったからだろう。


(親子でやることが同じなんだよなぁ)


 用意された井戸水で血の汚れを落とす。

 これだけ致命傷を受けたのに、もう傷一つとして残っていない。

 我ながら本当に優れた魔術を持っているものだ。

 ノルフが褒めるのも納得だった。


 虐待部屋から出ると、そこにはエルスワーズ家の主——バートン・エルスワーズがいた。

 バートンは顰め面で私に告げる。


「新薬の実験だ。いつもの部屋に来い」


「……はい」


 くそ、もう仕事は終わりかと思ったのに。

 休憩する余裕さえないじゃないか。

 しかし文句を言ったところで意味はない。

 私は歩き出したバートンについていくしかなかった。

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― 新着の感想 ―
魂を壊さない限り死なないのかなぁ…
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