井戸の番人
キルフェを出て数日、夏の乾いた太陽に晒され続けたアトゥリナは、さすがに消耗し始めていた。丘が連なる高地のこととて気温はさほどでもないのだが、そのぶん空気は薄いし陽射しが強い。夏の今頃は毎年、彼も帝国の高地で過ごすのだが、その場合はもちろん宮殿に引き籠っていて山歩きなどしないから、こんな経験は初めてのことだった。
珍しく空が雨模様になった昼下がり、一行は地図にも記されていた井戸のある人家に到着した。家と言っても小屋のような風情だ。その辺から拾い集めたと思しき大小の石と芝土を押し固めた壁、同じく強風にも飛ばされない重たげな芝土の屋根。家全体が何かにのしかかられたように平べったい。
周囲には牧囲いがあり、数頭の山羊が短い草を食んでいる。
井戸には釣瓶がなかった。代わりに、錆びた銅板を張った板と太い棒が置いてある。ハルタシュが棒を取って板をガンガン叩くと、ややあって小屋の扉が細く開いた。
中から用心深く現れたのは、がっちりした体躯の男だった。手にはいつでも攻撃できるよう、槍を構えている。ハルタシュは合図の棒を置き、片手を挙げて挨拶した。
「神々の平安がありますように」
「あなた方にも」
男は決まり文句で応じ、一行をじろじろ眺め回してから、一旦屋内に引っ込んだ。次に出て来た時には、槍の代わりに長い縄のついた桶を持っていた。
無言でずいと突き出されたそれを、ハルタシュは礼を言って受け取る。慣れた手つきでするすると縄を操り、桶を井戸の中へ下ろすと、くいと縄を引いて桶に水を入れ、今度は手繰り寄せて引き上げる。
近くに据えられた家畜用の水飲み台にザアッと空けると、荷を負ったままの馬が我先に鼻面を突っ込んだ。
「私もやってみていいかな」
ハルタシュの動きがあまりにそつないので簡単そうに見えて、アトゥリナは興味半分に言い出した。途端に周囲の全員が否定的な空気を漂わせる。誰も何も言っていないのにここまであからさまにわかるとは、大したものだ。アトゥリナが不満げに皆を見回すと、ハルタシュが意地の悪いにやにや笑いを浮かべて桶を渡してくれた。
「まあ、やってみろよ、王子様。縄ごと中に落としたりするなよ、取りに行かせるぞ」
脅されてアトゥリナはぎくりとし、深い井戸を覗き込む。縁から体を引っ込めると、彼は途端に自信がなくなった様子で頼んだ。
「じゃあ念のために、端を持っていてくれるかい」
「へいへい、仰せとあらば」
ハルタシュは皮肉っぽく言いつつも、縄の端を握る。アトゥリナの背後から手を添えるようにして、桶を下ろすのを手伝ってくれた。
ぱしゃん、と桶が水に触れる音。
「よし。で、こうして……あれ?」
ハルタシュの見よう見真似で縄を引くが、うまく水が入らない。
「え? あれ? こうじゃないのかな。こっちかな?」
えいえいと苦心しながらあっちこっちへ動かすが、縄にかかる重みはまったく変わらないまま。しまいにハルタシュが笑い出し、よこせ、と縄を取り返した。
「こうするんだよ」
くいっ、と一回引いただけで、水の重みで縄がピンと張る。引き上げろ、と縄を手渡され、アトゥリナはよいせと力を入れた。
「うわっ……」
予想外の重さと痛みに顔をしかめる。しっかり縄を握り直して一回だけ引き上げたが、早くも手のひらが真っ赤になった。ビードが素早く加わり、作業を手伝う。二人がかりで引き上げる間に、縄の先で桶はぐるぐる回ったり踊ったりして、どんどん水がこぼれた。
なんとか桶を手元に戻した時には、水は半分ほどしか入っていなかった。
「あんなに苦労したのに」
はあ、とアトゥリナは落胆し、赤くなった自分の手を見つめる。皮が剥けるところまではいかなかったが、ヒリヒリしてたまらない。ハルタシュが横から桶を支えて笑った。
「最初はそんなもんだ。まあ飲めよ、折角自力で汲んだんだから」
「うん。それじゃお先に」
アトゥリナは気を取り直し、両手で水をすくって口に運ぶ。冷たく甘い、極上の美味。喉を鳴らして味わい、ぷは、と息をつく。
「ああ美味しかった! それにしても水汲みは重労働なんだね、知らなかったよ」
「いいご身分だよな」
ハルタシュは苦笑したが、声には非難も辛辣さもなかった。そういう存在だから仕方ない、と受け入れているのだろう。アトゥリナは小首を傾げて言った。
「身分もあるけれど、デニスではこういう井戸はほとんど見かけないからね。田舎に行ったらどうだかわからないけれど、王宮には水路でいつも新鮮な水が送られていたし、井戸ももっと汲みやすい仕掛けがついていたから」
「魔法の泉ってわけか?」
言いながらハルタシュは手際よく水を汲み、ナヒティやビード達にも飲ませてやる。なんだかんだで面倒見が良い。
「魔術は使っていないと思うよ。私も詳しいことはよく知らないけど」
答えてアトゥリナは肩を竦めた。改めてつくづく無頓着であったものだ。金銭的なことだけでなく、毎日飲んでいる水がどこからどんな仕組みで運ばれているのかさえ、知ろうともしていなかった。
(帰ったら誰かに聞いてみよう)
無意識にそう考え、次いで少し気分が沈む。帰ったら、ではない。帰れたら、だ。この先の長い道のりを無事に乗り越えて、本当に故郷に帰り着けたならば。
悲観的になりかけたのをごまかすように、アトゥリナは笑顔を作って辺りを見回した。
「それにしても、こんな何もないところに住んでいるなんて、あの家の人は井戸の番人なのかな」
「ああ、まあそんなところかな。この辺はもうムバンの縄張りだから、住んでるのもムバン族なんだろう」
答えたハルタシュに、アトゥリナは問いを重ねる。
「じゃあ、この井戸も?」
「そういうこと。部族の喧嘩が多かった頃は、仲の良い部族だけしか使えなかった。今は旅の者なら誰でも、盗賊でない限りは、使わせてもらえる。来いよ、今日はここで泊めてもらおう。一雨来そうだからな」
ハルタシュは言うと、空にした桶を持って、馬の手綱を引きながら小屋に向かう。暗黙の了解か、男も当然のような態度で厩へ案内してくれた。
馬の世話が済むと、一行は小屋の中に招かれた。背を屈めて低い扉をくぐると、がらんとした一部屋になっていた。板張りの床に古い絨毯が敷かれており、家財らしきものは最小限しかない。壁際の長櫃が二棹、食器、丸めた毛布などの寝具。
よく見ると奥の壁は一部通路になっていて、帳で区切られていた。恐らく男と家族の暮らす部屋はそちらなのだろう。むろん、普段はここも彼らが使っているのだろうが。
絨毯には素足で上がるものらしく、アトゥリナ達はハルタシュにならって靴を脱いだ。
小屋の主は余計な口は利かず、名乗りもしない。にこりともせず、座れ、使え、などと命令形で一言二言発するだけで、つっけんどんに薄っぺらい座布団をよこす。
ハルタシュはまるで気にした様子もなく、荷物を下ろして床に胡坐をかいた。男はのそりと奥に消え、しばらくして盆にあれこれ載せて戻ってきた。水差しと人数分の碗、チーズと何か干した果物らしきもの。もてなしの一揃え、ということだろう。
無言で盆を一同の中央に置いた男に、ハルタシュとナヒティが頭を下げる。慌ててアトゥリナ達もぺこりと一礼した。
それが済むと、義務は果たしたとばかり、男は一人壁際に行ってどすんと腰を下ろし、なにやら道具の手入れを始めた。アトゥリナが目をぱちくりさせている間に、ハルタシュがさっさとチーズに手を伸ばす。
「ほら、おまえも食えよ」
「あ……うん、ありがとう」
戸惑いながらアトゥリナも、干し果物をひとつ取った。赤黒くて小さくしぼんだその姿からは、元の果実が何だったのか想像がつかない。奥歯で噛み潰すと甘酸っぱさが口に広がり、旅の疲れを癒してくれた。
その時、窓から強風が吹き込んだ。明り取りの必要から開け放たれているが、天候を見るに、閉めたほうが良さそうだ。外はどんよりと雲が垂れ込め、屋内と変わらないほど暗くなってきている。
男も雲行きに気付いて立ち上がり、部屋の隅から蝋燭を取ってきて灯すと、窓を閉め始めた。木の板を窓枠にはめ、小さな閂を下ろす。それでも板は強風でカタカタ揺れた。
じきに雨が降り始めた。ザアッ、と飛沫が屋根を打ち、地面を走り抜けていく音。互いの話し声が聞き取りにくいほどだ。
「ワファリィが荒れてんなぁ」
ハルタシュが暗い天井を見上げてぼやいた。アトゥリナは束の間きょとんとし、ああ、と思い出す。嵐の神の名前だ。キルフェにいる間に彼から教わったレクスデイルの神話では、嵐の神と旱の神との戦いが、一連の神話の中で最も重要な位置を占めていた。
「変わってるよね」
「うん? 何だって?」
「君達の神話は面白いね、って。嵐と旱が戦うなんて、どっちが勝っても大変だろうに」
ちなみに結果は嵐の神の勝ちである。おかげでなんとか人も動物も生き延びた、というのだから、この地の気候がいかに極端から極端へ荒れるものであるか、そしてどちらがより恐れられているのか、如実にわかるというものだ。
「言われてみりゃそうかもな。けど嵐がなきゃ川も井戸も涸れちまうから、旱よりはマシさ。こうして家とか岩陰とかでじっとうずくまってりゃ、大抵はおさまってくれるし」
「ワファリィは確かに勝ったけど、だからって好き勝手にしてるわけじゃないんだよ」
口を挟んだのはナヒティだった。少女は蝋燭の炎に目を落とし、誰の顔をも見ないまま続ける。
「とどめる旱がいなくなったから、嵐はしばらく地上で暴れ狂った。そのうち自分が何者なのか忘れてしまいそうになるぐらいにね。それを、舞楽の姉弟神が鎮めたんだ。ムシュナの奉納舞はそれを受け継いでいる、本当はとても大事な舞で、決して欠かしちゃいけないんだって」
寂しげに伝聞形で語るのは、彼女にそれを教えた人がもうこの世にいないからだろう。
アトゥリナは思いやりを込めてささやいた。
「だから君は、故郷を目指しているんだね。一族の神殿で、古式に則ってきちんとした奉納舞をするために」
「うん」
ナヒティの返事は短く、力がこもっていた。しばし唇を引き結んで炎を見つめ、それから己の決意を再確認するように深くうなずく。
「あたいらの務めだから。生き残ったムシュナがちゃんとしなきゃ、嵐を鎮められなくなっちゃうからね。神殿が残ってるかどうか知らないけど……土台だけでもあれば、きっと建て直せるだろうし。無理でも、祭壇さえあれば舞はできる。あたいがやらなきゃ」
意志の力が漲る静かな声に、普段は批判的なハルタシュも、何も言わなかった。
一夜明けて嵐が去り、旅の一行が小屋の外に出ると濡れた草が陽光にきらめいていた。鮮やかさを増した一面の緑を、小さな花が愛らしく彩る。
「気持ちいいねえ」
アトゥリナが満面の笑みで深呼吸すると、横でビードも「はい」とうなずいた。いつもの無表情ながら、目元が穏やかだ。
出発前に、ハルタシュは小屋の主を相手にちょっとした商いをすることにしたらしい。乾いた場所に敷物を広げ、キルフェで仕入れた品物の一部を無言で並べる。
「ハルタシュのお手並み拝見だね」
アトゥリナはビードにささやき、邪魔をしないよう静かに、しかし急いでそばに寄る。丁々発止の駆け引きが始まるかと思ったのだが、意外にもハルタシュは沈黙していた。主の方も無言だ。
「……?」
アトゥリナがきょとんとしていると、男が並べた品物の中からいくつかを取り、自分の方に引き寄せた。岩塩や色糸の玉だ。だが男はそれを置いたままでじっくり考え、一旦のしのしと小屋の裏手に回ると、あれこれ両手に抱えて戻って来た。
相変わらず無言のまま、男はハルタシュの向かいにどっかり腰を下ろし、持ってきた物を並べる。固いチーズや干し肉、レンガのようなパンなど。すべてこの小屋で作られたのだろう。ハルタシュは男が選んだ物を睨むように見つめ、それから今度は自分が相手の品物からいくつか選んで引き寄せた。
まるで見えない秤に交互に載せたり下ろしたりしているように、二人は品物を増やしたり減らしたりする。しばらくかかってようやく二人共が、それ以上手を出さなくなった。
ハルタシュが固唾を呑んで男を見つめる。小屋の主は最後にひとつ、大きくうなずいてから、手を差し出した。商談成立だ。ハルタシュはぱっと笑顔になり、がっしと手を握り返す。男もようやく少し笑みらしいものを見せた。
二人が立ち上がり、それぞれの品物を片付ける間、アトゥリナはぽかんとしていた。
ハルタシュが荷物をまとめ終える頃、男も手に入れた物を小屋に片付けて戻って来た。そして、短く問いかける。
「初めてか」
「っ、ああ」
ぎくりと竦み、ハルタシュは緊張した返事をする。何かへまをやらかしただろうか、と身構えた初心者の少年に、男は悪意のない微笑を見せた。
「そうか。頑張れ」
言葉は短いが、温情がこもっている。ハルタシュはほっとして力を抜き、頭を下げた。
小屋を後にして少し歩いたところで、アトゥリナは早速ハルタシュに尋ねた。
「こっちでは皆、黙って商売をするのかい? でもキルフェでは普通に客引きもしていたし、値段の交渉もしていたよね?」
「市場ではな」
ハルタシュはうなずき、荷馬の手綱を握り直す。その横顔にはまだ緊張と興奮の名残が見えた。
「交易は違うんだ。市場は敵対部族でも流血沙汰はご法度だから、安心安全に取引できるけど、交易商人は単独だろ。下手に話をしたら、実は相手の親類とこっちの親類が敵同士で、殺し合わなきゃいけない間柄だってことが判っちまうかもしれない。だから何も言わないのさ。まぁ実際ずっと昔には、部族ごとで言葉がかなり違ってたから、そもそも通じなかったって事情もあるみたいだけど」
「ええっ、なんだいそれ。じゃあハルも、出先で顔を合わせたら殺し合うような相手がいるのかい?」
物騒な、とアトゥリナは非難めいた声を出す。ハルタシュは肩を竦めて軽い口調で「一応な」と肯定した。それから彼は振り返り、渋面の異国人を見て笑う。
「心配すんなよ。どの部族の誰の血筋は仇だって話は教えられるけど、それで本当に殺し合いになったのは、祖父さんの代ぐらいまでさ。親父はまだ、仇の一族とは目を合わせたくもない、って感じだけど。俺達はそんなこだわりはないし」
そこまで言い、彼は己の身の上を思い出してしまって、辛辣に自嘲した。
「大体、今の俺は村を追い出されてるんだぜ。どこの誰だろうと、何の因縁もありゃしねえよ」
「……ごめん」
「なんだよ、おまえが謝るこっちゃねーだろ、辛気臭いな!」
ハルタシュは必要以上に威勢の良い声を出し、アトゥリナの腕を叩く。よろけたアトゥリナが目つきで抗議したのも構わず、彼はくるりと前を向いて独り言のように続けた。
「どっちにしろ、俺はいずれこうやって一人で商売を始めなきゃいけなかったんだ。それが思ってたより早くなっただけなんだ。家の山羊とか商売相手は兄貴が継ぐし、俺には何も回って来ないから、村を出るのは決まってたんだ」
己を説得するかのように、彼は小さく何度もうなずきながら語る。アトゥリナはふと不思議な気分になって、じっとハルタシュを見つめた。カウロンの宿で出会ったばかりの頃のような、奔放な少年の印象が薄れている。口に出す言葉以上に、彼が己の人生について覚悟を決めたことが、強いまなざしに表れていた。
「ふうん。次男以下って、どこでも大変なんだね」
「おうよ!」
途端にハルタシュは活気を取り戻し、聞いてくれとばかり勢い込んで、積年の恨みつらみを語りだしてくれた。父母のみならず親類一同のあからさまな長男贔屓、服はお下がりばかりで大切な祝い事の晴れ着も新調されず、あれもこれも、それもこれも。
しまいにアトゥリナも話に釣り込まれ、笑い出してしまった。その勢いで、後ろを振り向いて声を掛ける。
「ハイラムもやっぱり、兄上方が羨ましかったかい」
他愛無い話題を自然に振られ、ハイラムは苦笑を浮かべてうなずいた。その前に一瞬だけ息を詰まらせたが、もちろんアトゥリナはそれに気付いた様子など微塵も見せない。ハイラムは目を伏せ、記憶の扉をそっと押し開くように静かな声で答えた。
「幼い頃は妬んでおりました。己のどこが劣っているのか、何ら遜色はないであろうに、後から生まれたというだけでこうも違うのか、と。とりわけ昔は、兄達は弟の目から見ても明らかな愚行で、父上を怒らせてばかりでありましたから。自分の方が賢いと思い込んでいたものです」
言葉尻で、彼は自嘲めいた吐息を小さくこぼした。そこに込められた意味は明らかだ。
アトゥリナは足を止め、真顔になってハイラムに向き直った。
「そうだね。実際に自ら行動を起こしてみるまで、己がどの程度の人間かわからないというのは、私も思い知ったよ。ただね、ハイラム。私は今、おまえがいてくれて良かったと思っている。おまえの立派な兄上達のいずれでもなく、おまえが私の供であってくれたことを、嬉しいと思うよ」
「……殿下、しかし」
「単なる慰めだと取らないで欲しい。おまえでなかったら、難破して生死も知れぬ語り部一人のために、無謀な跳躍を試みたりしなかっただろう。再会した後でも、おまえは一度も私を責めなかったね。余計なことをしてくれたせいで巻き添えだと、恨み言をぶつけられても当然だったのに」
そこまで言い、アトゥリナはハイラムが目を丸くしたのを見て失笑した。
「ほらね。そんなこと考えもしなかった、っていう顔だろう。そんなに私を甘やかしてくれるのは、おまえとビードだけだよ。だから、今さらだけれどありがとう、ハイラム」
「っ……」
ハイラムは言葉に詰まり、みるみる目を潤ませる。途端に横からビードが肘打ちをくらわした。
「泣くな鬱陶しい。身に余るお言葉を頂戴したのだ、少しは見苦しくないよう己を律するよう努めるがいい」
手厳しい叱咤さえ、ハイラムの耳には入っていないようだ。彼はアトゥリナを見つめたまま身じろぎもせず、静かに涙を流している。
長い穏やかな沈黙の後、ハイラムは長躯を二つに折るようにして、深く頭を下げた。




