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第三話:対照的な二人

「伊織様……素敵な、名前ですね」

「やめろ、オレの名前を呼ぶなイケメン野郎」

「それに手まで繋げるほど警戒を解いてもらえるとは……嬉しいことこの上ないです」

「それは断じて違う。てかお前が勝手に繋いできただけだろ!?」


 周りに花が舞うほど、嬉しそうに笑う白金に対し、伊織の気分は最悪であった。


 滅べばいいと思う程に、苦手なイケメンという存在の男と手を繋いでいる上に、一緒に歩いている。


 それがどれほどまでに最悪なのかは、伊織の表情を見ればすぐに分かることだった。


 にもかかわらず──この男、白金はそんな伊織に気付いていないのか、ただ嬉しそうに笑い、花を舞わせている。


 二人の雰囲気はあまりにもわかりやすく、対照的だ。こんな場面を、何も知らない人間が見かけたら思わず二度見してしまうだろう。


 そんな事を想像するような位に、対照的な雰囲気を出しながら、歩いていた二人の足──と言うより、白金の足が、ある建物の前で止まった。


 建物は大きく、まさにどこかの漫画や映画などで出てきそうな、そんな雰囲気をしている和風の建物だった。


「ここが、今日から伊織様も住む場所です。様々な方々がいますが、伊織様ならばきっとすぐに馴染めると思います」


 白金はクスリと笑い、空いた片手で自身よりも幾分か小さな背の持ち主の頭を、優しく撫でる。


 その手を伊織は弾くこと無く、ただ大人しく受け入れた。


 なぜ、受け入れたのか。

 それは伊織の単なる単純な考えからきたものだった。


 ──確かに、この白金とか言うヤツはイケメンだからオレは苦手だ。うん、確実にそれは言える。でもなんか、よく分かんないけど普通に良いヤツな気がする。


 そこに確信など存在しない。あるのはただの伊織の単純な考えだけだ。


 そう──性格最悪のヤツが、人助けをするはずがない。という、そんな考えだけで、伊織は白金を受け入れようとしているのだった。


 ──────────


 ぺたぺたと鳴る足音が、静かな廊下に響く。

 伊織は現在、白金に建物の中を案内してもらっていた。


 そうは言っても、完全に白金の善意から来たものであり、伊織は一言も頼んでなどいないのだが。


「これ、本当に普通のヤツが住む家なのか?」

「ええ、そうですよ」


 白金の言葉に、伊織は興味深そうに返事をして辺りを見回す。


 (いく)つもの襖に、長い廊下。

 時々聴こえる鳥達の声や、水の音。


 都会に住む学生だった伊織にとって、自然の音を聴くことは滅多になくなり、レアな体験と言ってもおかしくは無かった。


 自身が住んでいた街では滅多に見れないであろう建物の中を、今歩いている。


 先程までの不機嫌さはどこへやら、伊織のテンションは目を覚ましてからで、一番と言ってもいいほどにテンションが上がっていた。

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