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第四話:誤解は正解

 白金に様々な部屋を案内され、伊織の興奮も徐々に治まってきた頃、(彼女)は来た。


「あらぁ? どうしたの白金ちゃん」

「おや、スイ様ではないですか。実は、新しい住人になる方を今案内していまして」

「まぁ! 新しい住人の子が増えるのね! きっとみんな喜ぶわぁ!」


 彼は、低音ボイスの声の持ち主であった。


 余程手入れされているのか、横に流されている艶のいい水色の長髪に、前髪に留められた花の髪飾り、首に巻かれた白いストール、そして深緑の羽織を肩にかけて、薄い緑色の和服を着た男。


 その男は白金ほどではないが、整った顔立ちだからなのか、嬉しそうに笑うその姿は男と言うよりかは、女にも見えた。


 彼の名はスイ、彼もまた、この建物の住人でありそして──どの住人よりも、乙女心のある男である。


 ──こいつ、男……だよ、な? え、女とかじゃないよな? ……どっちだ?


 スイと白金が、なにやら楽しそうに話し始めたのを眺めながら、伊織はスイがどちらの性別なのかを考えていた。


 ──見た感じ、このイケメン野郎ほどではないけど充分イケメンな男に見える。見えるんだけど……女の口調だからわかんねぇ。


 別に、それは本人に聞けばいい話なのだが──伊織は過去に一度、同じような経験をして、本人に聞いたら叱られたのだ。


『そんなこと、女性に聞く奴がいるか! このバカ!』……と。


 その人物の表情と言い、声色と言い──何から何まで怖かった伊織にとって、また同じようなことを経験するのは御免だった。


 だから、とりあえずは今こうして嫌々だが自分と手を繋いでいる白金に紹介されるまで、静かにしておこう──そう、伊織は考えた。


「初めまして、アタシの名前はスイよ。よろしくね! アナタの名前は?」

「オレは伊織だ! よろしくな、スイ!」


 伊織の目線までしゃがみ、優しい笑みを浮かべて差し出したスイの手を、伊織は無邪気な笑顔で握った。


 ──なんだ、こいつ女なのか! 男じゃないのか! イケメンだけど女なんだな! スイとは仲良く出来そうだ!


 白金ほどではないが、充分イケメンの部類に入るスイの事を、伊織は女性と誤解していた。


 一人称が“アタシ”だから、というか喋り方が女性だから、そんな理由で、伊織はスイをイケメンな顔をした女と、誤解したのだ。


 彼は確かに女口調だし、一人称も“アタシ”だが──心は確かに乙女だが、体的な意味での性別は“男”なのである。


 もっとも、スイに“男だよね?”と言うような事を訊ねるのは、あまりにも危険なので──伊織の誤解はある意味、正解かもしれない。


 楽しそうに話し始める二人をよそに、白金はそんなことを考えるのだった。

12/8:最後3行変更。

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