学園編 63
63話から始まる学園編以降は“”(引用符、クォーテーションマーク)に囲まれた技名や固有名詞が出てきます。
その読み方に不正解はありません。自由に読んでください。
リクの毒殺未遂事件はソラの尽力により事なきを得た。ただ、毒殺されかけたのがリクだから助かったようなものだが。
容疑者は地下牢に入れられ、ふたりは後日辺境伯として屋敷を王から賜った。その際に、貴族家として家名を名乗ることを許されたためふたりはアース家と名乗った。
それから一週間ほど後、リクが容疑者の牢を訪れていた。
靴の鳴らす音が石でできた床に反響する。
リクはその人物の牢の前まで来ると牢の端で背中を向けて座っているのを見て話しかけた。
「起きているのだろう?」
「そろそろ向かえが来る頃だと思っていたよ」
その人物は立ち上がる。振り返ると、その髪は伸び銀に輝いた。
「何のつもりだ?」
リクはその少女を睨む。対して少女は頬を膨らませた。
「君こそ僕の弟に何のつもりだい!」
「何のことだ?」
「能力の半分を奪うなんて、僕は許さないよ」
「自分が兄だとも名乗れない奴が何を言う。文句があるのであればお前があいつの横にいればいい」
リクは鼻で笑って見せる。少女はさらに憤慨し頬を膨らませた。
「君だって僕の半身の癖に」
「だから迎えに来たのだ。私の一部となれ」
「なに?告白?」
少女はにやにやと微笑む。リクはいつもよりさらに険しい顔になった。
「わかっているはずだ、私は――」
「世界で一番自分が嫌い。知ってるよ。僕も君も中二病だけは抜けなかったんだね」
リクは黙ると息を吐いた。
「さ、僕もう眠いや。あとは任せたよ」
「任された」
リクと少女が手を合わせると少女はその場から消え失せた。
ところで、ソラはその頃何をしてたのかというと……
「すげー!カミナの剣も刺さんねえのかよ」
「不思議なからだ」
屋敷の庭でリクから移った能力を満喫していた。
「すごいのね、でもソラ、能力を貰ったっていうならリクさんはどうなってるの?」
「知らね、リリスは変わらずに抱っこして出かけたし支障は無さそうだったな」
フラケートは首を傾げるが、ソラもわからずに肩をすくめた。
「ねえねえソラ、稼げるダンジョンがあるんだけど攻略しに行かない?」
「リンカさんは金のことばっかだな。よだれも拭いて」
ソラは苦笑をしながらリンカにハンカチを渡す。それからすぐに振り返った。
「カミナ、拭いてやらねえからよだれ垂らすなよ」
「あう」
口を開けてソラに手を伸ばしていたカミナはそこで固まってしまう。
そこへ、メイドのマリーが歩いてきた。
「皆さま、お昼ごはんになります。」
柔らかく吹く風に長いスカートをなびかせながら一礼をする。
「よし、ご飯食べるか」
答えると、ソラたちは屋敷へと戻っていった。
お昼ご飯の時間も過ぎ、夜ご飯の時間。
キッチンから手を拭きながら現れたリクはイスに座るとソラに一つの提案をした。
「学校にー!?」
「そうだ。王都にあるストレノス学園は知っているだろう?」
「一回行ったことあるとこで合ってんならな」
「そこで合っている」
リクはフォークを持ちポテトを食む。ソラも肉にかぶりついた。
「それで学園に関してだが、入るには試験がある。世界中から来るのに対し150人しか合格できない」
「能力ありゃ簡単だろ」
ソラは鼻で笑いフォークを振る。それをマリーが顔だけで止めさせた。
「それについてを話す必要があった」
「あ?」
「能力は試験前に封印させてもらう」
リクは言い放った。
「はあ!?」
ソラはもちろん驚くが、リクは事も無げに続きを話した。
「試験はちょうど二か月後の三月の十五日だ、なんとしても合格しろ。ヒシャ、残りは食べておいてくれ」
「良いんですか、皇て、リク様?」
笑顔を浮かべながらヒシャは言い間違えそうになったのを直し聞き返す。リクが無言で頷いたのを見るや否やヒシャはリクのフォークを掴んで肉にかぶりついた。
「ヒシャ、マナーが――」
「マリー、構わん。所詮私が作った程度の物だ」
リクはダイニングルームを出ていった。
「ソラ?」
さっきからずっと固まっているソラにカミナが話しかける。
「はぁっ!」
周りの者たちが肩をビクつかせるほど唐突にこの世に返ってくるとソラは文字通り頭を抱えた。
「お兄ちゃん、だいじょうぶ?」
リリスまで心配して声を掛ける。それに気づいたソラは手を振った。
「大丈夫だ、試験は大丈夫じゃなさそうだけどな」
「勉強教える?」
カミナがソラの顔を覗き込む。
「お願いします、師匠」
乾いた笑顔を浮かべながらソラは頭を下げた。




