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 そして、革命決行日。

 レジスタンスの集まっていた酒場が燃やされた。

 明け方のまだ日が出ていない頃に何者かによってレジスタンスに肩入れしていた酒場の主人は殺され火が投げられた。

 唖然とした様子で酒場を見つめるレジスタンスたちを周りの貧民街の者たちは冷たい目で見ていた。

「逆らうからだ」

「自業自得だ」

 ひそひそと話し合う声が、パチパチと木が燃える音に紛れて聞こえてくる。

 ロイドはまだ火の残る瓦礫に入っていくとその真ん中で剣を突き刺した。

「我らが正義の下、革命を成功させる」

 宣言をするとロイドは剣を抜き鞘に抑えた。

 ふたりはレジスタンスに入ってすぐであったが、ロイドたちレジスタンスはこの酒場の主人に救われた者も少なくない。そんな人物と場所を失った悲しみは計り知れない。

 ソラもロイドの背中を叩くとフードを被った。

「リク、物資は?」

 まだ落ち込んだ雰囲気を拭うには至らないが気持ちを入れ替えたらしいロイドが振り返るとすぐにリクに話を掛ける。対してリクは別段気にした様子もなく答えた。

「弓などの遠距離武器は全滅、近接武器は半分が溶けている。銃器に関しては別の場所に移してあった八割は無事だが、酒場にあったものは消えている。恐らく没収されたのだろう」

「わかった、リク、ソラ君、君たちは国に帰るんだ」

「おい、待てよロイドさん、それはねえぜ」

 突然のロイドの提案にソラは驚くが、リクは当たり前だ、とつぶやいた。

「これはもう僕たちの戦いだ、やっぱり帝国の事は帝国の者が片づけないと」

 そのセリフをソラは知っている気がして、思ったことがつい口に出ていた。

「ロイドさん、あんた、死ぬつもりだな?」

「……もう時間が無い。じきに兵士が来て掴まるか殺されるだろう、その前に君たちは逃げるんだ」

 ソラの質問には答えずロイドはソラの肩を掴む。その手には力がこめられていた。

「こんな状態残して帰れるわけねえだろ」

 ソラはロイドの手を払いのける。

「なんでこの世界の奴らはそんなにすぐ死にたがる。皇帝ってのはそんなに強えのかよ」

「すぐにわかるさ、圧倒的強者に立ち向かう弱者の気持ちが」

「何を言って……」

「ソラ、ロイド、もう話をしている暇はないぞ!」

 珍しく声を荒げるリクにソラが慌てて振り向くと貧民街に古銃を担いだ兵士たちが走りこんできていた。

 咄嗟に瓦礫の陰に身を隠す。その瞬間、足元を亜音速の鉛がすり抜けていった。

「ソラ君、今は力を貸してくれ」

「今も何も、毒口に入れちまったんなら皇帝まで食ってやる」

「……ありがとう。でも、ちょっと邪魔かな」

 すると、ロイドはソラに拳銃を向けると引き金を引いた。

 破裂音とともに飛来する鉛の玉。それは火花と共にソラの左胸を貫いた。

「ああああああああぁぁぁぁ」

 酒場跡に響き渡るソラの悲鳴。ソラを焼けるような痛みが襲った。

 それに気づいたリクが駆け寄ろうとするも、その足を鉛が引き裂いた。

 リクはバランスを崩し倒れこむ。それでもソラの下に来ようと腕を動かす。しかし、残酷にもその背中に銃弾が撃ち込まれた。

 力なく倒れ伏すリク。

 それを見てソラは腕で後ずさりながらもポケットからデリンジャーを取り出すと、最大限の恨みを込めてロイドを睨みつけ銃口を突き付けた。

 しかしロイドはそれを鼻で笑い銃を突きつけすとソラに問いかけた。

「君に撃てるかい?」

「殺してやる、裏切り者!」

「裏切り者、か。面白いことを言うね、最初から一人も君たちの味方は居なかったのに」

 ロイドの隣にジェミナ、ウィンズドム、クラッディの三人が集まった。

 ジェミナ、ウィンズドムはもちろんのこと、あのクラッディさえソラを蔑んだ目で見ていた。

「クラッディ、そいつの銃を奪っておけ」

「りょ、了解」

 命令しながらロイドはフードを脱ぎ捨てる。下には帝国兵制式制服が着込まれていた。

 そこに一人の兵士が駆け寄る。

「ライネード中佐、あちらの男はどういたしますか?」

「地下牢に入れておけ」

「はっ」

 兵士は敬礼をすると下がって行った。

 ソラの下には恐る恐るといった感じでクラッディが歩いてくる。目の前まで来てしゃがみ込むとソラのデリンジャーを手で包む。ソラが手の力を抜くとクラッディは深くため息を吐いた。その時のクラッディの眼はソラにさえ理解できない不思議な眼をしていた。

「この銃の装弾数は二発、覚えておくんだ」

 クラッディは小声でソラにそう言うとわかりやすくデリンジャーをポケットにしまった。

 ソラにはこれが何を意味するかはまだ分からない。ただ、どことなくリクの匂いを感じてそれを覚えておくことにした。

「ウィンズドム、そいつを運べ」

「はい」

 ウィンズドムは冷たく一言答えるとソラを担ぐ。

 周りを帝国の兵士に囲まれながら歩き出した。

「あんたら、役者集団か何か?演技、上手かったぜ」

「……」

「答えないのかよ、いいさ、もう、いや最初から仲間じゃ無かったんだしな」

 ソラは指をコキリと鳴らす。その瞬間、ソラの胸ポケットから塊が零れ落ちた。

 その音に気付いたウィンズドムは足を止め振り返る。

 それは、鉛の刺さった懐中時計だった。

 ウィンズドムはそれに気付く。

 しかし、ウィンズドムが動くよりも早くそのこめかみを殴りつけていた。軍人相手に通常状態のソラが勝てるわけはない。これまで何度も感じてきたことではあるが、ソラは今ほどリクに戦闘訓練を受けていたことを感謝したことは無いだろう。

 バランスを崩したウィンズドムはソラを取り落とした。骨が折れているのか打ち付けた左胸に激痛が走るが、ソラはそれを血と一緒に吐き捨てるとクラッディを殴りつけた。

 マウントを取りデリンジャーを奪い返すとすぐさまポケットにしまい込み走りだす。

 後ろでは呪文の詠唱が聞こえた。

「雷帝の怒りよ、彼の者を撃ち滅ぼせ、ボルテックス」

 体が引き裂けるような痛みと共にソラの意識は掻き消えた。



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