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「さて、情報をまとめようか」
貧民街で兵士から隠れながら帝国の情報を探ること一週間ほど。
ついにレジスタンスの革命は決行目前というところまで来ていた。
今はレジスタンスのメンバー十人ほどとふたりが例の酒場の奥で最終会議を開いている。
「ジェミナ、兵士たちの巡回ルートは把握できているかい?」
ロイドが聞くとジェミナは頷いて返した。
「把握は出来ているわ」
「意味深な言い方だね」
「巡回ルートが一週間前くらいから変わったの。嫌な予感がするわ」
「わかった、侵入ルートは改めて改良するとしよう」
ロイドが提案するとジェミナは頷き下がった。
「ウィンズドム、戦力の確保は?」
「リクの指導でだいぶ強いのが待機してるぜ」
「期待しているよ」
「クラッディ、リク、バックアップは万全かい?」
「もちろんだよ」
クラッディが拳を握って答える。リクも頷くと続けた。
「監視と狙撃の排除は任せろ、排除し次第ソラに合流する」
「了解、任せるよ」
「おい、待て」
そこにそれまで黙って聞いていたソラが口を挟んだ。
「兄貴、殺すなよ」
「善処しよう」
リクは頷くことなく果実酒の入ったジョッキを手に取った。
「さて、ソラ君、本当に君に任せてしまっていいんだね?」
「言いも何も、俺がやるって決めたんだ、任せてくれ」
「潜入は一番危険なポジションだ、僕たちもバックアップは最大限するが何があるかわからない」
心配するロイドの肩を掴むとソラは頷いた。
「ロイドさんだって納得してただろ、俺が一番体が小さくて見つかりにくいし小回りも利くって」
「でも……」
「いいんだよ、ロイドさんは俺と兄貴が裏切った時と死んだ時の対応策を考えておけばいいんだよ。それか、良くなった帝国で何がしたいか、とかな」
笑って親指を立てるソラにロイドは一度目を閉じ深く息を吐くと心配するような顔を消した。
「じゃあ、次は作戦の確認と訂正だ」
そう言いながらロイドは帝都の地図を広げる。手書きで書かれた地図は思いの外緻密で分かりやすい。
「この赤い点がこの酒場だ。ジェミナ、兵士の巡回ルートを改めて書き入れてもらえるかな?」
「わかった」
ジェミナは筆を手に取ると地図にルートを書き込んだ。
「これは、本当かい?」
書き終わった地図を見てそのルートの変わりようにロイドは目を細める。ソラも横から覗き込み眉をひそめた。
「街の巡回が、やけに少なくなってる」
「そう、しかも、城の周りは今までの三倍は動員されているわ」
「これは一週間前からかい?」
「えぇ、一週間前から少しづつ変わっていったんだけど、それにしても変わりすぎよ」
「そうだね、これは、侵入はさらに難しくなったね」
ロイドは口を結び頭を押さえた。
「よし、まだ情報はある、仕入れてきた情報を全部教えてくれ」
「わかったわ」
ジェミナは頷くとさらに地図に書き込みをした。皆でそれを覗き込む。
「これは?この周りは警備が厳しいけど」
ロイドが地図上のひし形を指差して聞いた。
「兵士たちが魔力や能力を封じるための結晶だって言っていたらしいわ。此処と此処と此処にも、都市の東西南北に合計四つ仕掛けてあって全部壊せばこの都市でも魔法が使えるって」
「それは壊したいところだね、魔術師にも活躍してもらえるかもしれない」
ロイドは地図上のひし形を見て神妙に頷くが、そこにウィンズドムが待ったをかけた。
「戦力を分散させるための罠だ、結晶は見なかったことにして決めてあった方法で行くべきだ」
「それも一理あるだろうが、魔法が使えるようになるのは戦力面で見てもおいしい。ただ、その結晶の破壊にどれほどの威力の物がいるのかわからない。爆薬はソラ君の逃走用と陽動用の二つしかない。爆薬は使えない」
次々に情報と提案とダメ出しが出ては複雑に絡み合っていくレジスタンス会議。
正直、ソラにはすでに何がなんだか分からなくなっていた。これはただのステルス潜入ゲームじゃない。失敗すればやり直しは出来ないし、大勢が死ぬ。
ソラは自分で立候補しておきながら潜入役をやめたい気持ちでいっぱいだった。
そんなソラの肩を掴む者がいた。
「大丈夫か?」
兄であるリクだった。
「あぁ、大丈夫だ」
「これを」
リクはソラに拳大の塊を手渡した。ソラはそれを見る。
「これは、デリンジャー?」
「そうだ、弾は純金製のものが二発のみ。装填してある」
「了解だ」
デリンジャー。ポケットに入れてしまえる、手袋の中に隠してしまえるほどの小さい拳銃。暗器としてとても有名だが、その威力も射程距離もとても小さく相手の体に密着させることで確実に殺害しに行く。
そんなモノをリクが渡してきたということは。
理解していたつもりでも受け入れがたく、ソラにはそのほんの五百グラムも無い小さい暗器が嫌に重たく感じた。
「この巡回ルートなら城壁の近くまでは簡単だな」
「ソラ君、聞いてくれるかい?」
「あ、あぁ」
リクから受け取ったモノをポケットにしまうとソラはまたロイドの隣で地図を覗き込んだ。
「ソラ君、運が良いのか悪いのか軍は貧民街のパトロールをしなくなった。通りもそこまで厳重じゃない。勝負は城壁周りと城壁を破ってからだ」
「つまり?」
「完全に陽が落ちてからここを出発してもらう。貧民街を北上して大通りに出る一つ前の通りをパトロールに気を付けながら進み城壁前の通りまで一気に駆け抜けてもらう」
「そこは簡単なんだよな?」
「そうだね、ここからはしっかりと作戦を頭に叩き込んで行ってほしい」
「了解だ」
ソラは頷くと地図に指をあて確認をしながら話を聞いた。
「あまり城壁前の通りを長時間動き回りたくないから西の門に爆薬を仕掛けてすぐに堀に逃げ込んでほしい。西の門のすぐ下に上水道の排出口があるから、ソラ君の背丈だと腰辺りまで水が来ると思うけどそこから侵入してもらう。上水道に逃げ込んだのを確認したらこちらで爆薬に火矢を放つよ。それからソラ君には上水道から城内に入ったところで、正面から突撃した陽動隊のリクと合流して皇帝の暗殺に向かってほしい。それまでにリクには狙撃手を排除してもらうことになるけど出来そうかい?」
「やってみせよう」
リクは頷いた。
「それは頼もしい。さて、ここからはふたりとも聞いてくれ。暗殺には成功しようと失敗しようとすぐに逃げること、それと逃げる際にはどのタイミングでもいい、絶対に爆薬を使ってくれ、それが全体の撤退の合図になる」
「了解」
「了解した」
ふたりが頷くとロイドは頷き返した。
「城壁の中の事は何一つわからないが、後はその場で尽くせる最善を尽くすしかないだろう。決行は明後日の日没後、革命を」
ロイドが出す拳に皆が拳を合わせた。
「革命を」




