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闘技大会個人の部、団体の部両日程が終わって二日。
団体の部で帝国が優勝したことにはそれぞれ思うところがあろうが、街中は祭りで賑わった。
この時期にはスリや盗難なども目立つらしく、冒険者の営む自警団や国の騎士団だけでは対応しきれないため闘技大会の出場者は出来る限りの外出を要請された。
ふたりもリリスやフラケート、リンカを連れて王都をブラブラとしていたが行く先々でいい顔はされなかった。
ヤジを飛ばしてくるような輩もいたがリリスが気にしていないと言う理由からソラもリクも別段何かをすることはしなかった。
そして、昼の最も日の高い時間に行われる表彰式。
ここでさらに、いい顔されないどころか嫌な顔をされることがわかっているから何もしなかったとも言える。
リクはリリスを抱っこしながら表彰台に上がる。
団体の部の優勝者であるはずの帝国代表はすでに自国に帰ったらしく表彰式には顔を見せなかった。
リクが国王の前に跪き、係りの者に国王の代わりに賛辞を述べられる。
それから、優勝者として国王に欲しい物を言ってそれを渡されて表彰式は無事終わる。
はずだったのだ。
リクがあの言葉を言わなければ。
あんな事をしなければ。
「では、個人の部の優勝者リク選手への記念品の贈呈です」
係員は仕事は終わったとばかりにそそくさと下がって行った。
「王よ」
「良い、頭を上げ言ってみろ」
「はい」
イスに座った国王に言われリクは立ち上がると、リリスの帽子を取り去り頭を撫でた。
「人間族以外の子どもたちにも権利を。例え、魔人の子であれど平等に育つことの出来る権利を、私は願います」
その瞬間、観客たちが凍った。
華獣族や妖精族ならいざ知らず、よりにもよって魔人の子をあろうことか王都に招き入れた者が闘技大会の王者になっていたのだ。
やがて我に返った者からヤジを飛ばし始めた。
「ふざけるなー!」
「魔人を連れ出せー!」
「魔族は帰れー!」
そして、一人が石を投げだすと次々と石を投げ出す者が現れた。
しかし、事前にこうなることがわかっていた国王直属の騎士は国王の前に出ることによって国王に石が当たらないようにしていた。
一番非難されているリクはと言うと、リリスの障壁魔法によって守られていた。
リクは再度国王に向かって跪くと言う。
「答えは今でなくても、構いません」
そして、リクはリリスに角を隠すための帽子をかぶせなおすと国王の前から下がって行った。
国王はそれをただ静かに見ていた。
表彰式がひとまず終わりソラリク一行は南側の冒険者ギルドに来ていた。
王都はとても広いため、冒険者ギルドが南側と北側に二つある。
「で、案の定宿も追いだされてしまって野宿する、と」
「そうだ」
「リリスちゃんという女の子もいるのにですか?」
「ウェルミュレにいた頃はそうしていた」
「それがダメだって言ってるんですよ!」
あまり気にして無さそうなリクの言葉にフラケートは頬を膨らまして答えた。
「宿はどこも泊めてはくれないだろう」
「仲間を頼ってはどうですか?」
「リンカは王都に家は無いし、フラケートも実家に帰っているのだろう?」
「えぇ、ですから、私を頼ってくださいと……」
「村八分にされるぞ、それに、私が望んで招いたことだ、なんとかする」
「わたし?」
「妙に私という一人称がしっくり来てしまっただけだ、気にするな」
「そうですね、リクさんはソラ君と違って落ち着いてるから合いそうですね」
「待てフラさん、なんでそこで俺の名前が出る?」
「フフッ、リリスちゃんを大事にしなかった罰だよ」
そう言いながらフラケートはソラに笑いかけた。
「ソラ君もまだ子どもなんだから気をつけなきゃダメなんだからね」
「俺は大丈夫っすよ」
まんざらでも無さげにソラがそっぽを向いて見せると、フラケートはその横顔を見て微笑んだ。
「パパとママには話してあります、リクさん、ソラ君、リリスちゃん私の家にいらっしゃい」
「はい!」
フラケートの言葉にはリリスが元気よく手を上げて頷いた。
「わかった、数日世話になろう」
「数日なんて言わずにいくらでも居てくれていいんですよ」
「いや、泊まる場所の当てがすでにあるのだ。それを手に入れられるまででいい」
「あら、そうだったんですね。そのためにここに?」
「そうだ」
実力至上の冒険者とはいえ街に魔人を入れたとなるとやはり嫌な顔は一つ二つで済むものではない。
現に今でも一行は冒険者たちの視線を集めていた。
そんなところにギルド嬢の一人が数枚の紙を持って近づいてきた。
どこかで見たことある様な無表情な顔にウェルミュレのギルド嬢とは少し意匠の違うドレスを身にまとい、魔人の子を前にしようと顔色一つ変えずリクに紙の束を手渡した。
「こちらがリク様の探し求めていたものになります」
「感謝する」
リクは紙の束を受け取るとそれを一枚ずつ見始めた。
その間そのギルド嬢は下がることは無くリリスを見つめていた。
「師匠と似てんな」
「師匠?」
ソラのつぶやきを聞いてギルド嬢は首を傾げた。
「仕草も似てんな。カミナって師匠なんだけど」
知ってる?とソラが続けようとしたところでギルド嬢は返事を返した。
「ウェルミュレの暗部ですね。知っています、友人なので。おとう、弟子のソラを王都にいる間は頼むとの手紙も届いています。私はナーサリー、ソラ、覚えておいてください」
「よろしく、ナーさん」
「ナー、さん」
「あぁ、ナーサリーさんだからナーさん。いやだったらやめるんだけど」
「構いません」
素っ気なく答えるとナーサリーはまた何事もなかったかのようにリリスを見つめ始めた。
リリスも何?といった具合に首を傾げ始める始末。
ふたりとも喋ってコミュニケーションを取ればいいのに、と思うソラだったがそれも声に出さなければ意味は無い。
やがて、ついにリクに引っ付きっぱなしのリリスに我慢がならなくなったのかナーサリーが手を伸ばした。
ここ数時間で人の動きに敏感になっていたソラはリリスを守ろうと腕を伸ばす。
しかし、ソラの腕が到達する前にソラはリクが気にしていないことに気付いた。
ソラよりも人の悪意や視線に敏感なリクが何もしていないのを見てソラは腕を下げた。
「ソラ、正解です」
ナーサリーは一言そう言うとリリスの顔をムニムニと触りだした。
リリスもそれに嬉しそうに笑う。
どうやら、ソラの思い過ごしだったようだ。
考えれば、カミナの友人なのだから疑う理由は無いはずなのだ。
そんなことを繰り広げているとリクが一つの依頼書をナーサリーに渡した。
「これにする」
「これですか、わかりました」
ナーサリーはリクから紙の束を受け取ると名残惜しそうにリリスの頭を撫でた後、ソラの頭も撫でてギルドカウンターの奥へと帰っていった。
「さて、手土産と夕飯の材料を買っていかねばな」
「あっ、リクさん作ってくれるんですか?」
「世話になるのだからな」
「えー、いいなー」
「リンカもおいでよ、一緒に食べよ」
「でも……」
「パパとママにはもうパーティーメンバーだって言ってあるから大丈夫だよ」
「なら」
控えめながらも頷くリンカ。
リンカとフラケートが知らないうちに女同士仲良くなっていたようで、ふたりはそろって優しい溜息を吐いていた。




