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二か月も更新が空いてしまいすいませんでした。
ソラが席に戻るとすでに開会式が始まり、周りがざわざわと試合の開始を待っていた。
ソラの出ない個人戦は全七試合あり午前に四試合午後に三試合行われる。
リクが負けるはずが無いから七試合中三試合はリクが出てくることになるだろう。
そんなことをソラが思いながら司会者の言葉を聞き飛ばしていると早速、舞台の入り口の片方からリクが歩いて出てきた。
腰に剣とメイスを差し、いかにも冒険者らしい洋服に身を包みいつも通り眠そうな目をしている。
前に冗談半分に眠いのか、とソラが聞くと弱く見えるだろう、と答えが返ってきた。
いつもリクの強さを実感、もとい痛感しているソラからすればわからなかったが眠そうなダルそうな顔をしている敵はだいたい弱いか凄い強いかどちらかな気がするなと気付き頷いておいた。
リクの反対の入り口からはローブを着た人物が出て歩いてくる。
大きい杖を突いているから魔法使いなのかもしれない。
リクならもう相手の情報を調べ上げてあるのだろうが、リクは自分からそういったことを話すことは少ない。
ソラから聞けば答えてくれるが、特にリリスの前では戦いや魔物に関しての話はしない。
リリスを不快にさせないためだろう。
そこに司会者の大声が響く。
「ウェルミュレ代表、リク選手!新進気鋭の冒険者でたった数か月ですでにC級冒険者。対するはケネッペン教皇国、央都代表フリック・ジーテンド!教皇お抱えの魔導士だ!」
二人の説明に会場が湧き立つ。
「名字持ちか。」
司会者の言葉にソラが反応するとフラケートが頷いた。
「ケネッペン教皇国のお抱えの上級魔導士で、教皇から直々に名字をもらい受けたみたい。」
「へぇー、フラさんは何でも知ってるんだな。」
「ふふっ、リクから聞いたの。」
苦笑しながら言うフラケートにソラも小さく笑って返す。
それを見てリリスは笑みを浮かべてフラケートの膝の上に座った。
そして、それから司会者の言葉が少し続き闘技大会が開始されることとなる。
「さてさて、選手の説明はこの辺にして、準備体操も出来たようだし試合を始めていこうか。」
司会者はそう言うも、さっきからリクもローブの男もほとんど動いていない。
ただ、睨みつけるでもなくお互いにお互いの顔を見つめて。
ソラには到底わからない情報戦でも繰り広げられているのだろうか。
リリスはフラケートの膝の上で大人しくリクの事を見ている。
リリスもわかっているんだろうか。
いや、わかっているはずがない。
ソラがリリスの様子に勝手に一人で焦っている中、闘技大会の一試合目がゆるりと進められていた。
「では、両者握手をしてから距離を。」
司会者の言葉に従ってリクとフリックがゆっくりと歩き出し握手をしてまたゆっくりと距離をとる。
およそ闘技大会の初戦とは思えないのんびり加減に観客もどう反応していいのかわからずにざわざわとしていた。
しかし、そんな雰囲気の中でもついに試合は開始される。
「ここに女神の加護の元、決闘を開始する。闘技大会第一回戦、開始!」
司会者の掛け声に、リクは腰から剣を引き抜きゆっくりとジーテンドの方へと歩いていく。
それを見たジーテンドはこちらもゆっくりとした動作で杖を振ると、ソラにはよくわからない言葉で呪文を唱えだした。
するとジーテンドの周りに拳大の大きさの火の玉が漂いだす。
それらはジーテンドがもう一度杖を振ると、歩くリクの方へと一斉に押し寄せた。
それに対し、リクは腰を低く構えるとその火の玉たちを手に持つ剣で切り裂いた。
切られた火の玉はその場で小さな爆発を起こすと空中に霧散した。
「本気で来い。」
低い声でリクはジーテンドに言う。
ジーテンドは溜息を吐くと、持っていた杖を放り投げた。
「一つ質問する。なぜお主のようなモノがこんなところにいる?」
一歩後ずさりをして問うジーテンドにリクはいつもと変わらない顔で答えた。
「俺の、勝手だろう?」
明らかに質問に答えていないその答えに何かを読み取ったのか、ジーテンドは一度咳ばらいをするとまたも呪文を唱えだした。
「kilt gkooy waga marikwo waga tkeiw snnemtuesy 」
その呪文に呼応してジーテンドの後ろには、先ほどよりも巨大な魔方陣が浮かび上がる。
その瞬間、会場の一部で息をのむ音がソラには聞こえた気がした。
それと同時に観客席の後ろからローブを着て仮面をつけた集団が飛び出した。
その集団は観客席全体に散開するとステージに向けて手を広げ高速で呪文を唱えだした。
観客の前に薄いガラスのようなシャボンの幕のようなものが張られる。
そして、ステージではジーテンドの頭上で直径3mは優に超える巨大な火球が出現していた。
それはゆっくりとリクの方へと進んでいく。
もしかしたら、緊張したソラが無意識に能力を発動してしまっていただけかもしれないが、それほどに場は緊迫していたのだ。
闘技大会は国同士の関係をよくするための祭りという面が大きい。
過去には八百長が行われていたこともあったほどだ。
だから、どちらかといえば毎年飲んで騒いで楽しむために催される大会なのだ。
それが初っ端から上級の炎属性の魔法が発動され、魔法障壁担当の係員まで慌てて出てきたのだ。
騒然となるに決まっている。
しかし、それはほんの数秒だけだった。
火球が剣を構えるリクに押し寄せ、会場が光に包まれる。
そしてその光が消え観客たちの目が慣れステージを見ると、立っていたのはリクだった。
魔法を放ったはずのジーテンドは吹き飛ばされ、壁際で倒れていた。
すぐに救護班が出てきてジーテンドは回収されていった。
会場全体が煤でまみれる中、リクの後ろだけはすすで汚れてはいなかった。
「勝者、ウェルミュレ代表、リク選手ー!」
司会のその言葉に、一瞬遅れて会場が沸き立つ。
唖然とするソラの隣でフラケートやリンカも胸をなでおろしていた。
リンカは撫でおろす胸があまりないが。
「ちょっと、ソラ、今失礼なこと考えてたでしょ?」
「いや、なにも。」
「そう、ならいいけど。」
「あー、兄貴はやっぱり強いな。」
話題を変えるために退場していくリクを見ながら言う。
「今の戦いは全然見えなかったけどいつもすごいもんね。」
フラケートも頷く。
フラケートは非戦闘要員なだけあってリクに守られる場面が多いからなおさら感じるのだろう。
横で戦うソラもそう思っている。
相変わらずリクの勇姿にはしゃぐリリスの頭を撫でステージの方を見ると、すでに次の試合の選手が出てきていた。
ここウォーライズ王国は王都ロンダレスとウェルミュレの他にまだ二つの大都市を有する。
魔法学の盛んなピティリスと、職人の多い街ノンハイカだ。
ちなみに、ふたりが代表をやらせてもらっているウェルミュレは冒険者の街と呼ばれている。
ゆえに、冒険者になりたがったふたりが比較的容易に受け入れられることが出来たのだ。
もちろん、リクがソラの知らないところで根回しをしていたせいでもあるが。
ステージに出ていたのは、ウォーライズの大都市のうちの一つのノンハイカの代表と、いわゆる獣人族の少女であった。
少女といっても17歳のソラと変わらないくらいだと思うが。
それに加えて、ソラはリクからケモノの耳やしっぽが生えた種族を獣人族と呼ぶな、と教えられている。
数百年前にまだ人間族とソレが種族間で争っていた頃、人間族が蔑みの意を込めてそう呼んでいたものだかららしい。
正しくは、華獣族。
確かに、華やかという表現がとても合う戦い方だった。
華獣族の少女と戦ったノンハイカの代表は職人の多い街にふさわしい重厚な鎧を着込んだ重戦士だった。
それを相手に少女は、まさに踊るように、舞うように、一撃も貰うことなく倒してしまった。
ソラは、こいつが次に兄貴と戦うのか、と楽しく思った。
重戦士が運ばれて行き、司会者が華獣族の少女の勝利を宣言すると少女はしっぽを一振りして控室へと戻っていった。
そして、少しして次の組がステージへと出てくる。
そこで、ソラは唖然としてしまった。
ステージの片方から出てきたのがさっきソラが男子トイレに連れ込んでしまったボクっ娘だったからだ。
下がスカート型になった白銀色の鎧に身を包みソラに手を振ってくる。
それに気づいたフラケートがソラを見た。
「ソラ君、知り合い?」
ソラは、一度後ろを振り返って誰も手を振り返していないことを確かめてから、手を振り返そうと向き直るとボクっ娘が頬を膨らましていることに気付いて慌てて手を振り返した。
「一応、知り合いって言やあ知り合いっすね。」
「ふふっ、可愛い子ね。」
「否定はしないっすけどね。」
スカートを履いていると少しは可愛らしく見えるが、ソラはシャツにパンツというラフな姿のボクっ娘を見ているからかなんとも言えない気分になるのだ。
もちろん、ここで言うパンツとは下着のことではない。
女の子を男子トイレに連れ込んで下着を見たとか犯罪臭しかしないだろう。
それに対するのは、帝国の帝都代表のこちらも重戦士らしい。
真っ黒な鎧を着て大剣を片手で軽々と振り回して準備体操をしていた。
なぜこう言う表現をしたかというと、結局試合中には帝国の戦士の剣は一度も振るわれることは無かったからだ。
準備体操の時点ではあんなに軽々と大剣を振っていたのにもかかわらずボクっ娘の攻撃を避けることも出来ずにひね伏せられた。
明らかにボクっ娘が何かを隠していると明言するような勝ち方だったが、次の敵を警戒させることは出来るのだろう。
団体戦では組み合わせ次第ではソラも戦う可能性があるのだ。
掴める情報は掴んでおきたいところだ。
それに、知り合いならなおさらやりやすい。
退場しながら手を振ってくるボクっ娘に、ソラは手を振り返していた。




