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そして、闘技大会個人の部初日の朝、ソラはフラケートとリンカとリリスと一緒に冒険者ギルドで適当な朝食を摂っていた。
周りから見ればハーレム染みた状況になっているからなのか少し視線が痛いが、それ以上にリリスを見守る親衛隊たちの視線の方が強い。
ソラからすればリリスは妹みたいなものだし、二人は姉みたいなものだからそんな気は無いのだが。
それと、リクはと言うと個人の部のために精神統一をしたいとリリスのおでこに軽く口づけをして宿屋の前でお別れとなった。
ソラとしてはリリスがぐずらなかったからあまり気にしてはいないがフラケートと会ってご飯を食べるまでは少し不機嫌だった気もする。
だが今はギルドの料理長の自信作を味見しては料理長に向けて笑顔を向けていた。
時折その笑顔をこちらに向けてはお兄ちゃんも食べろと言わんばかりにあーんをしてくる。
断ろうとすると涙目と上目遣いで訴えてくるためソラもリンカもフラケートも少しでいいからと言いながら一口貰ってしまう。
ただ、とてもおいしい。
料理長は卵が好きらしく特に料理長の作るオムライスは世界で一、二を争う程に美味しいと評判になっている。
ちなみに、料理長と一、二を争うのはリクだったりする。
リクも卵がとてつもなく好きでどこかで自分で鶏を飼えないものかと場所を探しているほどらしい。
そんなリクの作るオムライスは卵はもちろんのこと、米の種類や味付けにまでこだわって作られている。
もちろん、料理長のオムライスも最大限の努力はされているがあまりこだわりすぎると値段が高くなって商品として出せなくなってしまうらしく安くて旨いを目指しているようである。
だがリリスはそんなことを知ってか知らずかどっちも美味しいと言う。
ソラもフラケートもリンカも同意見であるが、それでは料理長は納得いかないらしくリクに料理対決をいつかしようと申し出た。
リクはリリスの顔を一度見るとそれを受け入れた。
そこに金の匂いを嗅ぎつけたリンカが何やらリクに耳打ちしていたが、小さなため息とともにデコピンを受けて痛がっていた。
リンカが苦笑いをしていたから受け入れられたのだろう。
そんな様子を見てソラとフラケートは一瞬顔を見合わせて笑っていた。
思えば、この所ずっとフラケートとリンカと一緒に居る。
時たまにリクが抜けるぐらい。
ギルドの依頼も一つだけパーティーで成功させた。
内容は野草の採取だが、リクがついでに調味料を採取しに行くと一泊二日のキャンプで弾丸特攻だった。
もうすっかりリリスの角は二人に受け入れられてしまった。
綺麗で羨ましいとも言っていたぐらいだ。
だが、これからはどうなるかわからない。
せめて兄貴が居ない時は俺がリリスを守ってやらないと、とソラは決意を新たにするのだった。
ところ変わって闘技大会会場。
ソラ達は大会開始を前に騒々しい観客席にいた。
リリスもポップコーンの入った籠を手に大人しく座っている。
「フラさん、あとどれくらい?」
ソラは席の上にあぐらをかいてあくびをしながらフラケートに聞いた。
するとフラケートは上を一度見上げると答える。
「もうすぐだよ。」
この世界に人たちは日にちや年数の概念はあれど、時間の概念がとても薄い。
リクも時間を指定して集合する場合はとても難儀するらしい。
そのくせ二時間後とか三十分後という表現は当たり前のように使ってくるのだから困る、とも言っていた。
この世界にも時計といえる物は存在するらしいのだが、とても高く貴族のステータス装備と化しているとか。
それらをリクは異世界語の翻訳ミスではないか、と言っていた。
ソラもリクも日本語で話し日本語を聞き取っているが、それが実はこの世界の言葉でなんらかの翻訳機能が働いてそう聞こえているだけなのかもしれない、と。
時計も一度見たが元の世界の物とは全く違い時間を読み取ることは出来なかったらしい。
ちなみに、ソラはまだこの世界の文字を読み取れないし書けない。
一度も練習をしていないからだが、その翻訳機能があるとすれば会話、言葉にしか効かないようである。
それが幸いした、もとい災いを招いたと言ってしまえることが後に起きることになる。
「フラさん、リンカさん、トイレ行ってくる。リリス頼んだ。」
「うん、頼まれました。」
「はいはーい。」
ソラは帽子の上から一度リリスの頭を撫でると席を離れて足早にトイレに向かった。
試合がいつ始まってしまうかわからないからだ。
しかし、ソラはトイレの前で足を止めることになった。
この世界にも公衆便所はしっかりとあるし男女も分かれているのだが、その標識が読めなかったのだ。
ソラがどうしようかと悩んでると一人の人物が話しかけてきた。
ソラよりも少し背が小さい程度の少年だった。
「お兄さん、女子トイレなんて見つめてどうしたの?変態さんかな?」
「あぁ、いや、字を読むのは苦手なんだよ。男子トイレはどっちだ?」
ソラが頭の後ろを掻きながら聞くと、美形の少年は一度小さく首を傾げてから答えた。
「トイレの標識が読めないなんてお兄さん、もしかして貴族さん?」
「いや、むしろ森で生活してたって感じだな。」
嘘ではない。
ウェルミュレではずっと森の中でキャンプをしていたのだから。
「ふーん、こっちだよ。じゃあね。」
「え、お前もトイレに来たんじゃねえのかよ?」
「そうだけど、なんか恥ずかしいからボクはいいや。」
「連れション恥ずかしい派か?気にすんなよ。それに、トイレは我慢すると体に悪いぜ。」
そう言うと、ソラは答えも聞かずに少年の手を引きトイレに入っていった。
中まで入るとソラは立ち小便器で用を足す。
用を足し終わり腰の紐を締めなおしたところで少年が固まっていることに気付いた。
「どうした?しねえのか?」
「できるわけないでしょ。」
「なんでだ?」
「ボクは女の子だ!」
頬を少し朱に染める美少年、改め美少女の言葉でソラはやっと気付いた。
「それは、すまん。」
「まぁ、もうボクも男子トイレくらいで恥ずかしがるような年齢じゃないからいいけどさ。」
さっき恥ずかしがってたじゃねえか、とソラは思うも何も言わないでおいた。
「じゃ、ボクは帰るからね。」
「お、おう、ありがとな。」
ソラは美少女がトイレから出ていくまで小さく手を振っていることしか出来なかった。
「何も起きなかったってことはフラグかな?」
ただそうとだけ呟いてソラは観客席へと戻っていった。




