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闘技大会関係者の男が宣戦布告しに来た一週間後。

少しづつざわつきだしていた王都が、祈農祭が始まることでついにお祭り騒ぎを始めた。

闘技大会はさらに一週間後に始まるわけだが、街中には既に気の荒そうな冒険者たちが跋扈していた。

そんな中、ふたりはリリスを連れて出店を楽しんでいた。


「パパ、次はあれ食べたい。」


リリスがリクの腕の中から乗り出して指差す出店はリンゴ飴の屋台だった。


「ソラ、食べるか?」

「リンゴ飴か、懐かしいな。欲しい。」

「2つ貰えるか。」

「あいよ、毎度あり。」


リクは屋台の男から2つのリンゴ飴を受け取ると一つをリリスに、もう一つをソラに渡すとまた道を歩き出した。

その後ろを付いて行きながらソラは話しかけた。


「この世界のリンゴは小さいんだな。」

「品種の違いだ。前の世界と同じほどの大きさのリンゴもある。だが、単価が高く屋台で出すには適さないらしい。」

「だからってこんな小さくなくてもいいだろうにな。」


そう言ってソラは、持っていたリンゴ飴を一口に頬張った。


「一口サイズって、数が無いとちょっとむなしいのな。」

「そうかもな。」


リクもそれに頷いた。


と、その時リクが一つの店の前で立ち止まった。

中からはパキン、パキン、と鉄で鉄を叩く音が漏れ聞こえてくる。

そう、いわゆる武器屋、とか防具屋と呼ばれる店だ。

顔色一つ変えずリクがフラっと入っていくのでソラもその後を付いて行った。

中には色々な種類の剣やら斧やら鎌が少し乱雑に立て掛けられていた。

店内は少し暗めだが、奥にあるカウンターに突っ伏して眠る少女は見ることが出来た。

それをリクは一瞥するとそこらの武器を物色し始める。

武器に興味のないソラは、一応起こしておいた方がいいのでは、と思いカウンターの前まで歩いていった。


「お姉さーん、起きなくていいの?」


ソラが、軽く数度肩を叩く。

すると、それに気づいた少女はガバっと起き上がった。

そして、丁度ソラと目が合う。


「あ、いらっしゃいませ?」

「お姉さん、絶対に寝ぼけてるよね。」

「え、えっと?」


少女は首を傾げる。


「俺じゃないが、ここに武器を買いに来たってことだよ。」

「……わあっ!いらっしゃいませ!」


やっと気づいた少女は慌ててイスから立ち上がると頭を下げた。


「邪魔している。」

「何をお探しでしょうか?」

「適当な剣とメイスを。メイスは全金属製で。」

「わかりました。じゃあ……こんなのどうですか?」


そう言って少女は近くの樽に入っていたメイスとブロードソードを取り出して見せた。


「それでいい。買っていこう。」

「闘技大会用か、兄貴?」

「闘技大会の出場者さんなんですか!?」


ソラの言葉に少女は驚いた声を上げた。


「あぁ、俺も兄貴も近くのウェルミュレって街の代表だぜ。ま、人選をめんどくさがったマスターに無理言ってエントリーさせてもらったんだけどな。」

「そうなんですね、がんばってくださいね。」

「もちろん。」

「でも、それならこんなところで買わずに大通りに面した店で買った方がいいんじゃないですか?」

「俺は使わないから知らないけど。」

「闘技大会は見に来るのか?」


ブロードソードを触っていたリクが話に入ってくる。


「もちろんですよ。闘技大会の最中は大通りに面したお店以外はほとんど閉めちゃいますよ。ただでさえお客さん少ないのにお祭りの最中は基本来ませんから。」


と、そこに店の奥からリクのものよりも幾分も低い声が響いた。


「閉めとりゃせんわ。ジーナ、客か?」

「あっ、パパ。作業は終わったの?」

「水分補給に来ただけじゃ。すぐに戻る。」

「そっかー、頑張ってねー。」


ジーナが声を掛けるとすぐに足音が遠ざかっていった。


「パパ?」


それを聞いてリリスが首を傾げた。

それにリクが他の人と話すよりも優し気に聞き返した?


「リリス、どうした?」

「パパにもパパがいるの?」

「……あぁ、いるよ。」


返事が一瞬遅れるもリリスは気にしていないようだった。


「ママは?」

「いるよ。」

「リリスのママは?」

「……ママは……」


リクは口ごもってしまう。

それにリリスは可愛らしい顔で首を傾げた。

それがリクには悪魔の笑みにも見えた。


「ママはお仕事で遠いところに行ったんだぞ、リリス。リリスが良い子にしてたらちゃんと帰ってくるからな。」


ソラが笑みを浮かべてリクの腕の中のリリスの頭を撫でると、うん、とリリスも笑顔で頷いた。

その様子にリクも小さくため息を吐く。


「弟、助かった。」

「困った時はお互い様、ってな。」


親指を立てるソラにリクは頷きで返した。

ふと、ふたりがカウンターのジーナを見ると困惑した様子でまごまごしていた。


「すまないな。これのベルトもセットで買わせてもらおう。」

「あ、はい。ありがとうございます。」


少し慌てながらもジーナはしっかりと受け答えをして、ふたりは手を振られてその店を出ていった。

それから、ふたりは大通りに出た。

相変わらず大通りは騒がしくお祭り騒ぎで、騎士団も警備に目を光らせていた。

ところどころで帯剣した白銀の甲冑が歩いている。


「それで、まだなんかやることあんのか?」

「お前の武器がいらないのであれば後は大会までのんびりしてればいい。」

「そうか、じゃあのんびりしてればいいな。」

「そうだな。」

「パパ、あれ食べたい!」


またしてもリリスが身を乗り出し指を差す先には今度はチョコバナナの屋台があった。


「カカオがあったのか。」


リクがそう呟くとリリスは首を傾げるが、なんでもない、と答えるとチョコバナナを買いに向かった。



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