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自分たちの控室の前で倒れる警備と壊された扉を見てふたりは警備が生きていることを確認すると、控室の中を窺った。
中は色々なものが散乱し、壁やソファには大きく切り裂かれた跡が残っていた。
リクはその跡に触れる。
「どうするよ?」
落ちていた麦わら帽子をソラがリクに投げ渡した。
「恐らくルパンではないだろう。まだ街中に居ればいいのだが。」
「おもしれぇ。見つけて潰してやろうじゃねぇの。」
「あぁ……実に、面白くない、展開だな。」
そう呟くと、ふたりはその場から消え去った。
リクは上空に。
ソラは町全体を走り回った。
リクは飛び上がった上空で『力の操作』を最大出力で発動させた。
目が痛くなるほどに視力を上げ、聴力を限界まで上げ、上空数百メートルの位置から王都全体を見渡す。
その時だった。
「……パパ。」
本当に微かにだがリリスの声が聞こえリクはそちらを見る。
目の前の微細なほこりさえ鮮明に見える視力で、ボロ馬車の幌の隙間からリリスの角に反射した光を捉える。
それを見ると、リクは落ちる方向を微調整し、馬車の前に飛び込んだ。
一方、ソラは注がれるコーヒーさえ何時間経っても注ぎ終わらないような遅延された世界の中で、リクが見つけたのと同じ馬車を見つけていた。
劇場の裏から車輪の跡が続いていたのだ。
ただ、それをたどって来ただけとも言える。
果たして、兄貴がわざわざ飛び上がった意味はあるのだろうか、と思うもさっき自分も同じことをされたんだからいいか、とソラは馬車の後ろで能力を解除した。
そこに、丁度よく空からリクが降ってきて業者は慌てて馬車を止めた。
「び、ビックリするじゃないですか。どうかされましたか?」
業者は、リクの顔を知らないのか当然の様にシラを切る。
もしくは、業者はモノを運ぶ以外の事には関与していないのかもしれないが。
「お前が運搬を依頼された組織の者だ。乗せろ。」
そう言うと、リクは返事を待たずに業界台に乗り上げた。
その反対側にソラも飛び乗る。
「騒がせたな、出せ。」
「は、はい。」
周りで唖然と見ていた都民に一言言うと、馬車を進ませた。
「弟、ケガはないか?」
リクがソラに聞くも、ソラにケガなどあるわけがない。
荷台の三人の事か、と察したソラは
「大したケガは無さそうだった。」
とだけ言った。
リクは小さくため息を吐くと頷いた。
十五分ほど走って馬車はある大きな屋敷に着いた。
「兄貴、ここは?」
「アダムズ商会。そこそこ大きな商会だ。」
馬車は、屋敷の敷地に入る門で一度止められ業者が何やら怪しげな文字の書かれた紙を渡すと中に通された。
「なんだお前ら?来るのは一人だと聞いていたんだが?」
業者台に乗るソラとリクを見て門番はいぶかしげな顔をした。
「アダムズに用があって来た。この馬車には運んでもらっただけだ。」
「そうか。じゃあ行け。」
あまり警戒心が無いようだが、表向きは普通の商会をしている関係でこういうことはよくあるのかもしれない。
邪魔されないのならいい、とソラも何も言わずに業者台に座ってあくびをした。
業者は庭の真中で馬車を止めるとでは行きましょうか、と言うと業者台を降りて歩いていく。
「皆を頼む。」
とだけ言うと、リクも業者の後を付いて行った。
残されたソラはリクに言われた通りフラケートたちを助けるかと馬車の幌を引き裂いて乗り込んだ。
「大丈夫っすか?みなさん。」
「あっ、ソラ君。来てくれたんだね。」
突然明るくなった荷台で太陽の光を眩しそうにしながらもソラの言葉に気付いたフラケートが声を上げた。
リリスとリンカも一緒に居るのを確認すると、ソラは二重の意味で胸を撫でおろす。
フラケートとリンカはどうかわからないが、リリスがケガでもしていたらこの屋敷が吹っ飛びかねない。
最悪、自分たちは国外に逃げてしまえばいいが、損害賠償だったかなんかがフラケートやリンカに行きかねない。
せっかく仲良くなれたのだ、迷惑かけてはいさようなら、はソラ自身したくなかった。
それこそ、リクがどう思うかはわからないが。
ソラやリリスさえ見捨ててどこかに行ってしまいそうで怖くもある。
「リクは?」
「中に行ったっすよ。」
腕を縄で縛られたままのリンカの質問にソラが答えるとリンカとフラケートは納得したように頷いた。
リリスはキョロキョロと辺りを見渡していたが、ソラが頭を撫でてやるとソラの腰に引っ付いて顔をうずめた。
突然誘拐されて怖かったのだろうが、あいにくソラに子どものあやし方はわからない。
リクが帰ってきたら任せるとしよう。
そう思いながら馬車のへりで座って待っているとリクが一人の男と建物を出てきた。
さっきの馬車の業者とは違い、少しばかり小綺麗なスーツを着込んだ男だった。
その男はリンカとフラケートの元まで来ると突然頭を下げた。
「部下が迷惑をおかけしました。それで、勝手なのはわかっているのですが、今回の件については内密にお願いしたいのです。」
自分でも言っているように明らかにこいつの勝手でしかない。
ソラが予想するに、この商会は裏で人身売買、人さらいをしている口だろう。
リクが何も言わずに後ろに立っているのが気になりはするが、被害者はリンカとフラケートとリリスなのだ。
ソラにくっ付いたまま離れないリリスは何も言わないとしても、リンカとフラケートは文句の二つや三つあるだろう。
いや、普通なら文句だけで終わらないのか。
「リクが何か企んでるみたいだから私はもういいけど、フラーはどう?」
そう言いながらも、リンカは言葉に多少の怒気を含ませていた。
「わたしは……そうですね、アダムズさん、でいいんでしょうか?」
「はい。」
「あなたのしていることは、いわゆる誘拐による奴隷売買ということで合ってますか?」
「……はい。」
自ら出てきた商会長のアダムズはゆっくりと頷いた。
「それをリクさんは?」
「知っている。」
事も無げに頷くリクにフラケートは少しムッとするもこういう人だったと諦める。
「じゃあ、いいです。」
「なっ、は、はい、ありがとうございます。それと、お詫びと言ってはなんですが、我が商会の自慢の品を持って行ってください。」
「いりません。」
「私もいいや。」
リンカにもフラケートにもいらないと言われたアダムズは次にその隣にいたソラの方を見た。
「いや、俺はただの被害者の関係者ってだけだから受け取る権利はないぞ。」
「あぁ、そうでしたか。男娼としてさらわれてきたわけでは無いのですね。」
その言葉に、ソラは意味はわからないがなぜか背筋がぞっとした。
それからすぐにソラ達はアダムズ商会を出ると演劇ホールへと戻って事態の収束を報告して他の客たちを帰らせた。
犯人は逃してしまったと報告するとケガはなかったかと心配された。
逃してしまったも何もわざと見逃してきたのだから何も言えない。
その後、事情聴取をされたが奪われたものは取り返せたということですぐに帰っていいと言われ、ギルドにも報告しておいた方がいいだろうとギルドに向かったが、途中でリリスがお腹がすいたと言い出し食事を摂ることにした。
さっきのように邪魔されては気分が良くない、と少しお高い料理店に入る。
そこでは、リリスもお腹いっぱい食べることが出来て満足できたようだった。




