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ソラが溶岩竜を倒し、リクがダンジョンを踏破してから一か月ほどが経過した。
ダンジョンをたった三人で踏破したということもあり、リクの冒険者ランクはCまで上げられた。
ソラは報告をめんどくさがった結果、リクが冒険者ギルドまで溶岩竜の鱗を持っていくことになった。
倒してすぐに離脱したためあまり多くは無かったが。
今二人は、知人を呼び寄せてギルドの酒場で宴会を開いていた。
ダンジョンから持ってきた宝で金だけは潤沢にあるリクが今日は全部おごりだと宣言して冒険者こぞっての大宴会となった。
正確に言えば、宣言したのはソラだが。
ただ、リクがダンジョンで得た資金の半分はソラの口座に入れているためソラでも払えないことは無い。
そのせいでギルドの酒場の裏方はてんてこまいだった。
さっきまでリクが手伝いとして入っていたほどである。
リクが入ったことで手が止まってしまい怒られていた女性も何人かいた。
今回誘ったのは、ギルドマスターのフリンドル、カミナ、ミミュレットとその一番の友人であるエリーネ、リクと一緒にダンジョンを攻略したリンカにフラケート、最初に二人を門番として対応してくれた二人だ。
2つのテーブルをつなげて11人で座っている。
リリスはしっかりとリクが膝の上に乗せている。
周りはテーブルなどあってないようなものになっているが。
無論、リクはミミュレットの隣に、ソラはカミナの隣に座っている。
みんなが酒を飲み、世間話が一段落したところでフリンドルが祝いの言葉を述べた。
「まずは、リク君、Cランクへの昇格おめでとう。前代未聞というわけじゃないが、かなり早い方だ。」
「ありがとうございます。」
リクが一度グラスを置いて少し頭を下げる。
「次にソラ君、溶岩竜を討伐したんだってね。しかも一人で。」
「そうだな。」
「本人からの提出が無いと冒険者ランクへの加算が出来ないようになっている、ていうのはリク君から聞いたかな?」
「あぁ、聞いた。ランクなんてどうでもいいい、それでいい。」
「そうか、君がいいならそれでいいんだ。それで、これから君たちはどうする予定だい?」
フリンドルが今度はリクの方を向いて尋ねる。
そこにフラケートが口を挟んだ。
「リクさん、少しいいですか。」
リクが頷き返すとフラケートは続けた。
「1週間後にここから王都への商隊護衛依頼が出てました。その依頼で王都に行きませんか?推奨ランクはEですがCでも受けてはいけないという規則は無かったはずです。」
リクは横にいるソラを見る。
「俺は良いぜ。」
「その依頼で王都に行ってみるとしよう。」
「王都に行ってしまうのか、眠っている依頼を頼みたかったけど、しょうがないね。気が向いたら頼むよ。」
「はい。」
フリンドルは苦笑した。
「エリーネ、その依頼書を見せてもらえるか?」
「え、私?宴会中なのに。隣のミィに頼みなさいよ。」
「ミィ、頼めるか?」
「はい、少々お待ちください。」
リクに言われたミミュレットは笑顔を浮かべると席を立ちギルドカウンターへと入っていった。
エリーネがにやけ顔を向けてくるがリクは無視することにした。
そんなリクたちを鼻で笑いソラはグラスに入ったワインを飲み干す。
それを見たウェイトレスがワインを注いでいった。
現在、ソラは17歳だが、この国では16歳から飲酒が認められている。
元の世界であれば、20歳になるまでお酒は絶対にダメだ。
「師匠。」
「何?」
「兄貴に付いて行ってもいいですか?」
そう。
ソラは師匠であるカミナから許可を貰わないとどこかに行ったりできないのだ。
精神的に弱いとか、弱みを握られているわけではない。
半強制だったとはいえ、自分から弟子になると言ったのだ。
勝手に離れていくのは失礼だろう。
日本人だからこそのこんな考えなのかもしれないが。
しかし、カミナにとってそれは嬉しいものだった。
奴隷や従者とは違う、己を頼り離れて行かない存在。
「帰ってきたらまた修行ね。」
仲のいい弟のような。
「はい。」
「あと、敬語。」
「あ、あぁ、わかった。行ってくる。」
「うん。」
カミナはソラにしかわからないほど微かに笑顔を浮かべた。
「リクさん、こちらになります。」
そこに、ミミュレットが数枚の書類を持って戻ってきた。
リクはありがとう、と言って紙の束を受け取り代わりに酒の入ったコップをミミュレットに渡す。
ミミュレットはリクの隣に座ると酒のコップを傾けた。
リクは一通り確認すると横のソラに渡す。
ソラを一瞥もせずにカミナに横流しした。
「ボードには張られていなかったようだが、どうやって知った?」
リクはフラケートを見る。
リクはそのつもりはないのだが、フラケートは一瞬、竜にでも睨まれたかのような錯覚を覚えた。
「たまたま聞こえたんです。一昨日、日帰りで出来る依頼が無いかとボードを見ていた時に。」
「あぁ、すまない。責めているわけじゃない。フラケートが商隊の関係者なら仲良くできないかと思っていただけだ。」
「そうでしたか、すいません。」
「謝ることはない。」
「それで、王都に行くのはやっぱりあの為かい?」
一段落したと判断したのか今度はフリンドルが質問をする。
「ダンジョンスターをオークションにかけます。」
「他にも出品したいものがいくつかありますしね。」
フラケートが付け加えた。
「そうか、どれくらいで帰ってくる予定だい?」
「オークションが終わり次第でしょうか。」
「実は、約2か月後に王都で闘技大会があってね。それに君たち二人に出場してもらおうと思っていたんだ。」
「闘技大会ですか。」
「あぁ、個人の部と団体の部があって個人の部の優勝者には王の御前で欲しいものを要求できる。無茶な物でなければほとんどはその場ですぐに用意されて渡される。」
「欲しいモノ……」
リクはチラとジュースを飲むリリスの顔を見てから頭を撫でる。
リリスは頭の上に疑問符を浮かべながらも笑顔で撫でられていた。
「団体の部は。」
「個人の部にはこの街から君たち二人のどちらかが。団体の部には君たち二人とこちらが用意する3人とで5人でパーティーを組んで出てもらう予定だ。」
「個人の部には僕が、団体の部には二人だけで出場させてください。」
「…………。」
フリンドルは黙って思案顔を浮かべる。
少し考えると、フリンドルはすぐに決断した。
「いいだろう、4年に一回しかない国を挙げてのお祭りだから私の街も全力を出そうと思っていたんだが、ダンジョン制覇者と竜を一人で討伐した者だ。他の街や国も強い連中を出してくるだろうが、任せてしまおう。これで、人を探さずに他の仕事にも専念できるしね。」
「マスター……」
カミナがジト目で溜息を吐いた。
フリンドルはカミナに苦笑で返すと続ける。
「存分に王都を楽しんでくるといい。悔しいが、ここウェルミュレよりも大きいし、賑やかだし、物も多いからね。」
「はい。というわけだ、ミィ、受注を頼む。」
「言っても無駄とは思いますが、闘技大会、無茶はしないでくださいね。」
「あぁ、わかっている。」
ミミュレットはカミナから紙束を受け取ると再度席を立ちカウンターに入っていった。
「兄貴、俺の意見は聞かないのか?」
「出たくないのか?」
「そっちじゃない、個人の部の方だ。」
「俺が出たかった。」
「そうか、じゃあいい。」
酔ったように微笑するとソラはワインのグラスを持ち上げた。
実際に酔っているのだろうが。
「あのー、私も付いて行っていい?」
出るタイミングを失っていたのかおずおずといった感じでリンカが口を挟む。
「金がないのか?」
「おかげさまでたくさんあるよ!王都に行ってみたいだけよ。」
リンカは頬を膨らませて赤くした。
「構わない。それと、リンカとフラケートのランクはどうなったんだ?」
「それは私が説明しようか。」
フリンドルが話し始める。
「本来はパーティーを組んで依頼を受けた場合仕事をしなかったとしても全員が同じ評価になるんだが、今回はフラケートさんとリンカさんからお願いされてね。自分たちは本当に何もしていないから評価はリク君だけにしてほしいとね。」
「そうか、それでいいなら構わない。」
フリンドルが頷くと、リンカとフラケートも頷いた。
それからは他愛のない世間話に入っていった。
その中で興味深い話が門番の二人から出た。
「最初、二人とあった時俺ら飲み物を買いに行くって言ってギルマスに怒られてただろ?実はあれ演技だったんだよ。」
「マジかよ。」
リクは最初から気付いていたようで顔色一つ変えず、反対にソラは驚いていた。
「兄貴は気付いていたのかよ。」
「あぁ。」
「流石だな。」
「生き方の問題だ。」
「え?」
「気にするな。」
「そか。」
適当に返事をすると、ソラは頼んであったビーフジャーキーを噛みちぎった。
「ま、ほんとだろうと嘘だろうと街に入れてもらえたから何でもいいんだけどな。」
「そうだな、これからも頑張れよ、ソラ。」
「あぁ、言われなくてもな。」
最後にみんなからの激励があり、リクが寝てしまったリリスを抱いて出て行こうとしたところでその日はお開きとなった。
次の日、ソラは相変わらず修行に戻っていったがリクは図書館の司書のアンナとマリンに挨拶をしに行った。




