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少し短めですが。
リクがゴブリンの王と戦って自分の能力により負傷してから三週間が経過した。
すでにリクの腕は完治し、ソラの修行も実戦訓練へと突入していた。
「ソラ、お前に格闘術を無理に覚えさせることはしない。しかし、その分その能力を完璧に理解し、腕どころか心臓と同じレベルで使えるようになってもらう。」
すでに常人では確実に追いつけないレベルで拳や蹴りをリクは繰り出す。
それを、ソラは速さにものを言わせて無理やりに避けていた。
「どうした、この程度で一々体勢を崩していては世界最強など100年は掛かるぞ。」
「うるせぇな、お前の拳が強すぎて紙一重で避けようとすると風圧でダメージを受けるからだろうが。俺は体は温度に関して以外は普通の人間と変わらないんだぞ。」
「だから、こうして手加減しているだろう。」
「なんで手加減が子どもを片腕に抱っこすることになるんだよ!おかしいだろ!」
「力の手加減がまだ完ぺきではないのだから仕様がないだろう。」
リクの腕の中ではリリスが2人の訓練を見てキャッキャと笑っていた。
「一度休むか。」
「あぁ、休憩をくれ。」
一度腕を止めて2人は気の陰に座り込んだ。
「ああぁ、疲れた。」
「お疲れさま、水分補給は忘れないように。」
「ありがとうございます、師匠。」
息を吐きながら座り込んだソラにカミナが水を差し出す。
「お兄さん、ソラには甘いのかと思ったら私より厳しいのね。」
「弟だからこそ厳しくしているんだ。死なれてしまっては困るからな。」
「死んでたまるか。こんな楽しい所に来れたんだ。」
「そうだな。」
二人が話していると、カミナが立ち上がり木の陰を出ていき準備運動を始める。
「もう次かよ。少しは休ませてくれよ。」
「おにいちゃん、がんばれ!」
「おう、リリス、今度はここから見ててくれよ。」
「うん。」
この三週間でリリスも少しづつ人間族の言葉が喋れるようになってきた。
頻繁にリクが図書館のカンナの部屋に連れ込んでいたからだ。
リリスが魔人だと知っているのはギルド嬢のミミュレットと、ギルドマスターのフリンドルとカミナと、図書館のカンナとその親友のマリン、そしてこの兄弟だけだ。
外出するときはいつも麦わら帽子を被るように言い聞かせてある。
ただ、一人ではリリスは外出したことは今のところない。
リクかソラと外出するときも絶対に二人のうちどちらかが抱っこしていないと頑なに動こうとしない。
リクは体格的にも能力的にも可能だからいいのだが、ソラには大変らしい。
「パパ、なんでおにいちゃんはおねえさんとたたかってるの?」
「強くなるためだろう。」
「なんでつよくなるの?」
「あいつの気持ちは知らないが、俺はリリスや仲良くしてくれる人たちを守るためだ。」
「ふーん。」
リリスはカミナと戦うソラをを見つめて少しだけ首を傾げる。
「じゃあ、リリスはパパとおにいちゃんまもるためにつよくなるね!」
「ふっ、そうか、もし俺が誰かにやられたらリリスに助けてもらおう。」
リクは膝のリリスの頭を撫でながら笑顔を見せた。
その後、ソラの修行は日の入り前まで続いた。
これはいつも通りだ。
終わると、四人そろって湖で水浴びをする。
ソラは最初は嫌がっていたが、カミナに無理やり脱がされて連れて行かれるぐらいなら自分で行くと諦めることとなった。
「師匠、俺はいつごろ卒業できますかね?」
「?性行為の話?私でいいなら協力するけど。」
「違うっすよ!修行の話っすよ。」
「分かっている、冗談。そんなに赤くならなくてもいいのに。そうね、私を超えられたら、かな。」
そこにリリスと潜水をしていたリクが水中から出てくる。
「空間属性の魔法剣士についての文献を少し読んだが、アドバイスはいるか?」
「いや、いらねぇ。ありがたいが、俺には細かい戦術は向いていないからな。」
「そうか。」
「で、リリスは?」
「まだ潜水している。」
リクは水中を指し示す。
「もう5分は入ってねぇか。大丈夫なのかよ。」
「見た感じは大丈夫なようだ。」
「二人は魔素の流れも見えなかったのね。リリスちゃんは魔法を使って潜水しているみたいだから大丈夫。」
「なるほど、それなら大丈夫か。ま、兄貴がリリスを放っておくとは思えないけどな。」
「ぷはぁ。パパ、おなかすいた!」
丁度そこにリリスが水面へと戻ってきた。
「そうだな、ご飯にしようか。」
「今日は何だ、兄貴。」
「今朝獲って来た兎肉でシチューでも作ろうかと思っている。何か要望があったか?」
「いや、それでいい。兄貴の料理は何でも旨いからな。」
「女の私より料理が上手なのはずるい。」
カミナは少し頬を膨らましてリクを見つめる。
それにリクは笑って返した。
「ただの知識だ。いつか役に立つだろうと思い本を読んでおいたのがたまたま早めに使うことになっただけだ。これから精進していかねばな。」
濡れた体を拭き服を着てたき火を囲む。
リクだけはたき火には当たらず料理へと取り掛かった。
40分ほどしてシチューが完成するとリクが器によそい各人に配っていく。
「いただきます。」
「いたっきやーす。」
「いただきます!」
「あぁ、召し上がれ。」
全員が一口食べたのを確認してからリクも木製のスプーンを持つ。
「やっぱうめえな。さすがだぜ。」
「ありがとう。」
「それで、なんか話があんだろ、兄貴。」
「ん?なぜそう思う?」
リクが一度スプーンを止めてソラの方を向く。
「理由なんてあるか。何年あんたの弟やってると思ってるんだ。なんとなくだよ。」
「そうか、なら話しておこう。俺はお前の修行が一段落ついたらダンジョンに潜ろうと思っている。」
「何を言っているの、お兄さん。まだこの子には危険。」
「分かっている。だから、今回は俺だけで行くつもりだ。」
「もっと危険だろ。」
ソラとカミナも一度手を止める。
「情報はしっかりと調べてある。危なそうであれば撤退する。」
「リリスはどうするんだよ。」
「連れて行く。」
「はぁ!?」
「何を!?」
ソラとカミナが驚く。
魔人とは言えまだ子どもであるし、まずリクが子どもを危険なところに連れて行くと言った事に驚いていた。
ここ二週間でリクが子ども好きなのはばれている。
四六時中リリスを抱いていればばれるのも当たり前ではあるが。
「何かしたいことがあるんだな。」
「あぁ、いくつかな。」
「……はぁ。わかったよ、行って来いよ。ただ、わかってんだろうな?」
カミナやリクのレベルでギリギリ気付くであろう静かな殺気を込めてソラはリクを睨む。
その視線にカミナは小指をピクリと反応させた。
「リリスに傷は付けさせない。わかっている。」
「ならいい。」
「パパ、たべないの?」
「食べるか?」
「いいの?たべる!」
「お兄さんも食べないと。」
「大丈夫だ。育ち盛りはお腹がすくんだ。」
全員が食べ終わると、近くの川で食器を洗う。
元の世界じゃ考えられないことだ。
こっちの世界は川も湖もとても綺麗だ。
昼は中で泳ぐ魚たちの元気な姿が見え、夜には反転した世界が月の光によって作り出される。
洗い終わるとたき火に当たりながらただくつろぐ。
時々、話題が思いつけば話し出す。
そして、夜も更けリリスが夢の世界に入ってしまった頃、そろそろ寝るかと声を掛け張ってあったテントの中に入る。
一本多いが、四人で川の字になって寝床に着く。
(俺は、ここに来て、何がしたかったんだろうな。)
リクは、リリスの寝顔を見ながらいつの間にか眠りについていた。




