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ACROSS  作者: ☆あんパンまん☆
第二章 広がる家
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ep.45 信用を積む


 RHEINHARD Mobility Japanから提示された見積額、二億一千八百六十万円。


 その数字を見た翌朝も、優也はいつも通り道路工事の現場へ向かった。


 朝礼を終え、規制材を並べ、工事車両が入るたび一般車を止め、歩行者と自転車を先に通す。二億円を超える見積書を持っていても、赤旗を上げるタイミングは一秒も待ってくれないし、昼になれば腹も減る。


 むしろ、その変わらなさに少し救われていた。


 休憩所で缶コーヒーを開けると、向かいに座った久保田が優也の顔を見た。


「また難しい顔してんな。値段、出たんか?」


「出ました。二億一千八百六十万」


 久保田は飲みかけの缶を口元で止め、そのまま数秒固まった。


「……家何軒買う気や」


「一台です」


「一台でそれかい。で、買うん?」


 優也は少し考えたものの、答えそのものは決まっていた。


「買いたいです。でも、今のままでは無理です」


 久保田はそこで妙に安心したように笑った。


「そこ普通に言えるならええわ。『何とかなるやろ』とか言い出したら、頭冷やせ言おう思ってた」


「何ともならん金額ですからね。せやから、何とかなる形を作らなあかんのやと思ってます」


 言葉にしてみると、自分でもしっくりきた。


 値段を下げるためにGRANZを別物へ変えるのではなく、今の自分では買えないなら、買える状態へ近づく。ただし、そのために本業も生活も壊さない。


 午後の規制が始まるころには、頭の中にあった二億一千八百六十万円という数字も一度引っ込んだ。


 目の前の車を安全に通すこと。


 今は、それでいい。


          ◇


 数日後、優也と真琴はRHEINHARDの担当者とオンラインで話をした。


 今回は車体の仕様ではなく、資金計画について聞くためだった。


「先に言っときますけど、今日契約するつもりはないです。今の俺が何を足らんと思われるのか、それだけ知りたいです」


 優也がそう切り出すと、担当者はすぐに頷いた。


「そのほうがよいと思います。今回のような高額な特注車両では、自己資金だけでなく、契約後も返済と維持を続けられることが重要になります。給与収入、副業の実績、申告内容、保有資金、それから生活資金を含めて見られます」


 画面に簡単な資料が映った。


 一般的な自動車ローンとは違い、二億円を超える特注車両を個人名義でそのまま借りるような単純な話ではない。金融機関やリース会社によって扱いは変わるが、給与だけを根拠に大部分を借りるのは現実的ではなく、副業を返済原資として見てもらうなら、一時的な売上より継続性と帳簿が必要になる。


 真琴が資料を見ながら尋ねた。


「副業は、売上が大きいほど評価されるわけではないんですね」


「はい。売上が増えても、仕入れや在庫に資金が寝て利益が残らなければ意味がありません。毎月どう利益が出ているか、事業として説明できる状態のほうが大切です」


 優也はノートへ書きかけて、手を止めた。


「つまり、金を貯めるだけやなくて、返せる人間やって見せなあかんってことですか」


「大きく言えば、そうなります」


 その言葉は妙に分かりやすかった。


 三百万円のときは、口座残高を増やせば目標へ近づいた。


 今度は違う。


 通帳の数字だけを増やしても、その方法が毎月続かなければ二億円の車を維持できる根拠にはならない。


「提携先に相談だけすることはできます?」


「できます。正式審査ではなく、今の状態で何が不足しているかを見る事前相談なら可能です」


 担当者が紹介したのは、RHEINHARDと取引実績のある『東亜モビリティファイナンス』だった。


 その場で申し込むことはせず、優也はまず自分の数字を整理してから相談することにした。


 通話を切ると、真琴が椅子の背へ少し体を預けた。


「思ったより、普通の話でしたね」


「二億やから何か裏技あるんかと思ってたけど、結局、稼いで、残して、ちゃんと説明できるようにしろってことやな」


「むしろ安心しました。二億円を簡単に貸しますって言われるほうが怖いです」


「それはそうやな」


 優也は笑い、ノートを見た。


 ページの上には、二億一千八百六十万円ではなく、たった一行だけ残っている。


『返せる形を作る』


 今の自分に必要なのは、たぶんそれだった。


          ◇


 その週末、優也は副業の記録を最初から見直した。


 売上、仕入れ、販売手数料、送料、梱包材、委託品、返品、在庫。数字そのものは記録しているつもりだったが、見返してみると、自分にしか分からない書き方が意外に多い。


 梱包材を私用の買い物と一緒に決済した日もあれば、交通費をまとめて月末に書き足していることもある。委託品の販売代金も、全額を一度自分の売上のように見てから、あとで所有者へ返す金額を引いていた。


「これ、人に見せたら分からんな」


 独り言を呟き、優也は北摂リユース商会の店主へ相談した。


 店主は話を聞き終えると、すぐに「うちが頼んでる税理士さんに一回見てもらいます?」と返した。


「俺くらいの規模で税理士って大げさちゃいます?」


「二億の車を買いたい人が、規模の話します?」


 優也は言葉に詰まり、店主が笑った。


「別に顧問契約しろって話じゃないです。一回、今の記録で何が足りないか聞けばいいでしょう。福山さん、自分で分からないことを全部抱えるより、聞いたほうが早いタイプですよ」


「それはまあ……そうですね」


 数日後、店の紹介で会った税理士は、優也の持ってきた記録を一通り見てから、思っていたより穏やかな反応を返した。


「かなり丁寧に付けています。ただ、今は『福山さんが分かる記録』ですね。外へ説明するなら、もう少し分けたほうがいいです」


「どこです?」


「まず、自分で仕入れた在庫と預り品です。委託品は福山さんの資産ではありません。販売代金の全額を売上として扱うのではなく、ご自身に帰属する手数料や利益を分けて記録したほうが流れが見えます。それから、仕事用の口座と決済手段は、できるだけ私生活と混ぜないほうがいいでしょう」


 優也はノートへ書き込みながら頷いた。


「今すぐ会社にするとか、そういう話ではないんですね」


「必要が出たら考えればいいです。形だけ大きくしても意味はありません。それより、第三者が見たときに『何を売って、何に経費を使い、いくら残ったか』が追えることのほうが先です」


 RHEINHARDから聞いた話と、ほとんど同じところへ戻ってきた。


 大きな金額を動かすなら、勢いより記録。


 優也は、副業を「たまたま儲かることがある趣味」のままでは置いておけないのだと実感した。


          ◇


 帳簿を整え始めて間もなく、北摂リユース商会から少し大きな相談が来た。


 閉店することになった写真館から、撮影機材をまとめて預かっているという。


 店主に案内されて奥へ入ると、机の上には鍵付きのアルミケースが三つ並んでいた。


「うちだけで全部値付けするには少し時間が掛かるんで、福山さんにも見てもらえませんか。所有者さんは急いで現金化する必要はないそうなので、今回は買い取りじゃなく委託です」


 ケースの中には、業務用のカメラボディ、交換レンズ、照明機器、測定器、周辺機材がきれいに収められていた。


 これまで一度に扱ってきたものより、明らかに単価が高い。


「俺が難しいと思ったやつ、外していいですか?」


「もちろんです。全部売る必要はありません」


 その条件なら、優也にも抵抗はなかった。


 安く買い取って差額を抜くのではなく、状態を見て、相場を確認し、説明できるものだけを委託で売る。その手間と責任に対して手数料を受け取る。


 優也は一つずつケースから出していった。


 外装の傷、端子、マウント、レンズ内部。通常の手順で確認し、それから鑑定を使う。能力で見えた情報をそのまま口へ出すのではなく、普通の確認で説明できるところまで持っていく。


 その中に、一見ほとんど傷のない高級レンズがあった。


 外観だけなら、かなり上の状態評価を付けたくなる。


 けれど鑑定には、内部の一部に初期段階の異常が出ていた。


 優也は照明へかざし、角度を変えながら何度も確認した。


「これ、見た目めっちゃ綺麗ですけど、一回専門で見てもらったほうがいいです」


 店主が隣から覗く。


「何かあります?」


「はっきり断定できるほど見えへんです。ただ、光の抜け方がちょっと気になる。これ高いんで、美品扱いでそのまま出すんは嫌ですね」


 店主は少し迷ったものの、すぐに頷いた。


「分かりました。メーカー系の修理業者へ回します」


 売れば利益になる。


 だからこそ、売らない判断のほうが難しい。


 優也はレンズをケースへ戻した。


 数日後、そのレンズは内部点検で不具合の兆候が見つかり、整備へ回ることになった。


 店主から連絡を受けた優也は、嬉しいというより、ほっとした。


 鑑定が当たったからではない。


 高いものを高いまま売る前に、一度止められたことのほうが大きかった。


          ◇


 写真館から預かった機材は、短期間に全部を売り切ることはしなかった。


 需要のある品から順番に出し、専門点検へ回したものは整備記録を付けてから販売する。所有者へ返す金額、北摂リユース商会の手数料、優也の手数料も最初に決めた割合で分けた。


 ある日、所有者だった男性が店へ来た。


 六十代くらいで、写真館を閉めることについてはすでに気持ちの整理がついているようだったが、機材が並ぶ棚を見る目には少し名残惜しさがあった。


「ずいぶん丁寧に書いてくれたんですね」


 販売ページを見ながら男性が言った。


「傷も全部書いてある」


「あとで揉めるほうが嫌なんで。欠点あっても、それで納得して買う人おると思うんですよ」


「このレンズ、修理に出したんでしょう?」


「はい。俺がちょっと気になったんで。結果的に見てもらって正解でした」


 男性はケースの中を眺め、それから静かに笑った。


「店を閉めるって決めてから、全部ただの荷物になった気がしてたんです。でも、使う人のところへ行くなら、そのほうがいいですね」


 その言葉を聞いたとき、優也は少しだけ答えに困った。


 自分にとっては副業の一件でも、持ち主にとっては長く使ってきた道具だ。


 鑑定で状態が分かることより、その品がどんな扱われ方をしてきたのかは見えない。


「ちゃんと使う人に買ってもらえるようにします」


 結局、優也はそれだけ答えた。


 男性は「お願いします」と頭を下げた。


 その日の帰り、優也は店主から「福山さん、最初のころより売り方変わりましたね」と言われた。


「そうです?」


「前は品物の状態を当てる人って感じでしたけど、今は止めるところで止めるし、持ち主の条件も先に聞く。うちとしては、そのほうが仕事頼みやすいです」


 優也は少し照れくさくなり、曖昧に笑った。


 信用というものは、売った数だけで増えるわけではないらしい。


          ◇


 数か月もしないうちに、優也の副業は少し形を変えていた。


 自分で仕入れた品を売るだけではなく、北摂リユース商会を通じた委託案件の割合が増えた。そのぶん、自分の金を在庫へ寝かせる額は大きく増えていない。


 写真館の案件は一件としてはこれまでより大きかったが、だからといって翌月から同じ規模の仕事を何件も受けることはしなかった。


 扱えるものだけを受ける。


 本業の休みを全部潰さない。


 現物を見られないものは断る。


 利益が大きかった月の翌月も、仕入れ上限を急に上げない。


 以前から決めていたルールを、金額が大きくなっても変えなかった。


 その夜、真琴が優也の部屋へ来た。


 大学帰りで、薄手のカーディガンを脱ぎながらダイニングの椅子へ座る。テーブルには優也が整理し直した収支表と、GRANZの見積書が並んでいた。


「数字、見てもいいですか?」


「もう税理士にも見せてるから、今さら隠すもんないで」


「じゃあ遠慮なく」


 真琴は収支表を一枚ずつ追っていった。


 以前より利益は伸びている。ただし、高額案件が入った月だけ大きく跳ね、通常月はそこまで急激には増えていない。その一方で、在庫として抱えている金額はほとんど膨らんでいなかった。


「これ、かなり変わりましたね」


「売上?」


「そこもですけど、自分の在庫が増えてないところ。前より大きい金額を扱ってるのに、優也さんのお金が物に変わって寝てる時間は減ってます」


「委託増えたからな」


「前に言ってた『回転を見る』って、今はお金だけじゃなくて優也さんの時間にもなってますね」


「なんか上手いこと言うな」


「事実です」


 真琴は収支表を閉じず、その横にある見積書へ視線を移した。


「でも、今すぐ四千万円ができるわけじゃないですよね」


「無理やな。そこは何も変わってへん」


「焦ってません?」


「ちょっとは焦る。でも、前みたいに何十年掛かるか分からん感じではない。今のやり方なら、商売として伸ばす余地があるのは分かったから」


 そこで優也は、少しだけ間を置いた。


「ただ、本業は辞めへんで」


 真琴が顔を上げる。


「それ、聞こうと思ってました」


「副業がちょっと増えたくらいで辞める気ない。安定してへんし、何より今の仕事、別に嫌いちゃうからな。楽な日もあるし」


「よかったです」


「そこまで心配してた?」


「優也さん、目的が見えたときに一気に行きたがるところあるので。全部GRANZに賭けるみたいになったら止めようと思ってました」


「そこまでアホちゃうわ」


「三百万円のとき、振り込む前に何回確認しました?」


 優也は黙った。


 真琴が小さく笑う。


「ほら」


「まあ……監視役おって助かってるわ」


「監視じゃありません」


「じゃあブレーキ役」


「それも違います」


 真琴は一度視線を落とし、収支表の端を指で揃えた。


「一緒に考えてるだけです」


 その声は何でもないように聞こえたが、優也には妙に残った。


「……ありがとな」


「急にどうしたんですか」


「いや。ここまで付き合ってくれてるし」


 真琴は少しだけ目を逸らした。


「私も乗りたいので」


「それだけ?」


 口に出した瞬間、少し踏み込みすぎたと思った。


 真琴は答えを急がず、見積書の数字へ視線を落とす。


「それだけじゃないですけど、今はそれでいいでしょう」


 優也はそれ以上聞かなかった。


 聞かないほうが、今の距離には合っている気がした。


          ◇


 東亜モビリティファイナンスとの最初の正式な相談は、その少し後に行われた。


 審査ではない。


 現在の給与収入、副業の申告状況、取引の内容、保有資金、RHEINHARDの見積書を見せ、今の状態で何が足りないのかを確認するための面談だった。


 担当者は資料をかなり長い時間見ていた。


「率直に申し上げると、現時点でこの車両価格を前提にした融資を組むのは難しいです」


「ですよね」


 優也は驚かなかった。


 むしろ、簡単にいけると言われたほうが怖かった。


「ただ、副業の内容は整理されています。特に、在庫を過度に抱えず委託比率を高めている点と、帳簿を分け始めている点は説明しやすいです。ただし、金融機関から見れば実績期間がまだ短い。もう少し継続性が欲しいところです」


「四千万貯めたら、それでいけるって話でもないんですよね」


「そうですね。自己資金は多いほど有利ですが、それを出したあとに生活資金や事業資金が残らなければ意味がありません。重要なのは、契約後も返済原資を作り続けられることです」


 優也は頷きながら聞いた。


「じゃあ、次に相談来るとしたら、何を持ってきたらええですか?」


「今の帳簿をこのまま続けてください。申告内容と利益の推移が確認できる状態にして、自己資金も無理のない範囲で積み増す。そのうえで、数か月分の動きが見えた段階でもう一度条件整理をしましょう。正式審査へ進むかどうかは、そのときの数字を見て判断できます」


「数か月でええんですか?」


「審査に通るという意味ではありません。今より材料が増える、という意味です。長く待てば自動的に良くなるものでもありませんから、期間より中身です」


 その言葉に、優也は少し笑った。


「それなら分かりやすいです」


 担当者はRHEINHARDの見積書を閉じ、優也へ返した。


「この金額だと、急いで契約するより、まず信用を作るほうが結果的には近道だと思います」


 優也はその言葉をノートへ書いた。


『金を貯めるだけじゃなく、信用を積む』


 面談を終えて外へ出ると、夕方の空気が少し冷たかった。


 駅へ向かう途中で真琴へ電話する。


『どうでした?』


「やっぱ今は無理やって」


『落ち込んでます?』


「全然。むしろ何したらええか分かった。今のやり方を数か月続けて、帳簿と利益の推移見せられるようにして、また相談する」


 電話の向こうで、真琴が少し安心したように息を吐いた。


『前なら、「数か月も待つのか」って言いそうでしたね』


「今でも早よ欲しいで。でも、何も分からんまま突っ込むより全然ええ」


『それなら大丈夫そうです』


「また安心された」


 優也が笑うと、電話の向こうで真琴も小さく笑った気配がした。


『しますよ。私も乗る予定なので』


「よく、やろ?」


 一瞬、間があった。


『……よく乗る予定です』


 優也は笑った。


 駅のホームが見えてきた。


「ほな、帰ったら数字まとめ直すわ」


『今日はもう休んでもいいんじゃないですか』


「なんで?」


『仕事終わりに面談まで行ったんでしょう。明日でも数字は逃げません』


 優也は歩きながら少し考えた。


 以前なら、そのまま家へ帰ってノートを開いていただろう。


「じゃあ、今日はやめとく」


『珍しいですね』


「成長したんや」


『自分で言わないでください』


 二人とも笑った。


          ◇


 その夜、優也は本当に帳簿を開かなかった。


 代わりに、夕食を食べたあとソファへ座り、スマートフォンに保存してあるGRANZのレンダリングを一度だけ見た。


 全長八・九六メートルの四軸八輪。


 右側の玄関。


 固定式ソーラーを載せた屋根。


 その中には、これまで二人で決めてきた生活がある。


 二億一千八百六十万円。


 数字は変わらない。


 それでも、見積書を初めて見た日のような圧迫感は少し薄れていた。


 金額が小さくなったわけではない。


 自分がやることが、一つずつ見えてきたからだ。


 翌朝、仕事へ行く前にノートを開き、最初のページだけ書き換えた。


 三百万円の目標には、すでに達成の印が付いている。


 その下へ新しく書いたのは、金額ではなかった。


『信用を積む』


 優也は少し考え、その横へ小さく日付を書いた。


 これから何か月でどうなるのかは分からない。


 けれど、期間を決めて焦るつもりもなかった。


 帳簿を整え、利益を残し、本業を続け、無理に在庫を増やさない。高い品ほど慎重に扱い、売らない判断まで含めて信用にする。


 それを続けて、また金融機関へ持っていく。


 派手ではない。


 三百万円を一気に積み上げるより、ずっと地味な作業かもしれない。


 それでも、今度積み上げるものは金だけではなかった。


 ノートを閉じる直前、優也は最後に一行だけ付け足した。


『GRANZのために生活を壊さない』


 それを見てから、優也は作業着へ着替えた。


 二億円を超える家を欲しがっていても、今日やることは変わらない。


 道路工事の現場へ行き、目の前の安全を守る。


 その仕事を終えて帰ってきたとき、また一つ先へ進めばいい。


 GRANZはまだ遠い。


 けれど、遠いままではなくなっていた。


最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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