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ACROSS  作者: ☆あんパンまん☆
第一章 一枚の皿から
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ep.17 奈良の山へ


 約束の日曜日、福山優也は朝八時前には近鉄大阪上本町駅へ着いていた。


 待ち合わせは八時十分なので今回も少し早かったが、以前のように時間を潰すため周囲をうろうろすることはせず、改札近くの柱にもたれながらスマートフォンで道路情報を確認していた。目的地は奈良県南部の山間部にある古い民家で、電車だけでは向かいにくいため、途中まで近鉄で移動し、そこからは予約してあるレンタカーを使う予定にしている。


 二月の大阪市内に雪がなくても、山沿いまで同じとは限らない。念のためスタッドレスタイヤを装着した四輪駆動車を予約し、現地付近の道路状況も何度か調べてきた。


「今回はちゃんと準備してるやろ」


 誰に聞かせるでもなく呟いたところで、少し離れた場所から聞き慣れた声が飛んできた。


「何を一人で満足そうにしてるんですか?」


 顔を上げると、三浦真琴がこちらへ歩いてきていた。淡い色のニットに濃紺のパンツ、その上から膝丈の冬物コートを羽織っており、普段はロングスカート姿を見ることが多かった優也には少し新鮮に映る。


「今日は動きやすい格好なんや」


「山に行くって聞いたので。スカートで古い納屋の周り歩くのも変でしょう?」


「それはそうやな。靴もちゃんとしてる」


「福山さんが『泥あるかもしれんで』って言ったんじゃないですか」


 真琴は歩きやすそうなスニーカーへ視線を落として笑った。


「そこまで覚えてたんや」


「言われたことは覚えてますよ」


「耳が痛いな」


「何か忘れたんですか?」


「いや、今回は大丈夫」


 優也は肩へ掛けたバッグを軽く叩いた。中には例のキーホルダーと三つの金属部品、記録用のノート、モバイルバッテリー、手袋、小さなメジャーなどを入れてあるが、現地から何かを勝手に採取するような道具は持ってきていない。


 調べるのは、親族から許可を得た範囲だけ。その点については、二人で事前に何度も確認していた。


     ◇


 大阪を出た電車が市街地を離れるにつれ、車窓の向こうでは建物が少しずつ減り、住宅地の背後に山並みが近づいてきた。


 優也は窓側へ座り、その隣で真琴がスマートフォンに保存してある現地資料を見返している。


「片づけ業者さんとは十一時ですよね?」


「うん。車借りてからも時間に余裕持たせてる。山に入ったら道細くなるみたいやし、急いで行く必要もないやろ」


「そんなに慎重なんですね」


「知らん山道を急いで事故ったら、一番アホやん」


 道路工事の現場で毎日のように車両を誘導しているだけに、知らない道で無理をする気はなかった。真琴も納得したように頷きながら、少しだけ笑う。


「安全第一?」


「そう。警備員を舐めたらあかんで」


「この前も聞きました」


「大事なことは二回言うねん」


「はいはい」


「“はい”は一回ちゃうん?」


「あ、それ私が言ったやつ」


 二人で笑っているうちに目的の駅へ着き、外へ出た瞬間、優也は大阪より明らかに冷たい空気に首をすくめた。


「寒っ」


「そんなに違います?」


「体感で三度くらい低い」


「鑑定ですか?」


「ただの勘や」


「最近、それが一番信用できないんですよね」


「まだ言うか」


 駅前で予約していたレンタカーを受け取り、車体の傷や保険内容を確認したあと、優也は運転席へ座ってシートとミラーを調整した。目的地は車載ナビとスマートフォンの両方へ設定し、表示された経路を見比べながら、できるだけ広い道路を優先する。


「ナビ二つ使うんですか?」


 助手席へ座った真琴が画面を覗き込む。


「山の方やと、たまにとんでもない細道へ連れていくやろ。片方だけ信用するよりマシ」


「慎重ですね」


「初めて行く場所やからな」


 駅前を出ると、道沿いの建物は次第に低くなり、田畑と冬枯れの山が広がり始めた。主要な道路は乾いていたものの、日陰や路肩にはまだ雪が残っている場所があり、優也はそれを見るたび速度を少し落とす。


「スタッドレスにしといてよかったな」


「使わずに済むのが一番ですけどね」


「ほんまそれ」


 道幅のある区間では他愛もない話をしながら進んでいたが、集落を抜けて山へ近づくにつれ、優也の口数は自然に減っていった。前方の道路と対向車に意識を向け、カーブの手前では十分に速度を落とし、真琴も邪魔をしないよう必要な時だけナビを確認している。


「次の分岐、右です。その先から少し細くなるみたいです」


「見えてる。ゆっくり行こ」


 冬の山間部を走る道は、運転さえ気をつければ穏やかな景色が続いていた。澄んだ川が道路の横を流れ、斜面には杉林が広がり、古い木造家屋の残る集落を抜ければ、再び山と川だけの風景に戻っていく。


 優也はハンドルを握りながら、ふと思ったことをそのまま口にした。


「こういうとこ、旅行で来たら普通にええな」


「分かります。今日は調査ですけど」


「帰り時間あったら、どっか寄る?」


 言ったあとで、それが調査とは関係のない誘いだと気づいたものの、真琴は特に構える様子もなく窓の外を見ながら頷いた。


「いいですね。暗くなる前に山を下りられたら」


「ほな、その時考えよ」


「はい」


 それだけの会話だったが、優也は少し機嫌よくハンドルを握り直した。


     ◇


 目的地へ近づくにつれて道路はさらに細くなり、ナビの示す先には山の斜面に沿って小さな集落が見え始めた。その外れから舗装された生活道路が奥へ続いているのを確認した優也は、対向車が来ても邪魔にならない場所で一度車を止め、片づけ業者へ電話を掛ける。


「もしもし、福山です。今、近くまで来たんですけど……はい。白い軽トラ? あ、見えました」


 少し先の空き地には一台の軽トラックが停まっており、その横で五十代くらいの男性がこちらへ手を上げていた。


「たぶんあの人やな」


「ですね」


 空き地へ車を入れて停めると、二人は外へ出た。


 男性は片づけを担当した業者の責任者で、宮田と名乗った。以前の所有者の親族から事情は聞いているらしく、二人へ軽く会釈したあと、少し不思議そうに笑う。


「遠いところご苦労さん。古い金具のこと調べてるんやって?」


「はい。すみません、変なお願いして」


「いやいや。あんなガラクタ、何が気になるんかなとは思ったけどな」


「俺らも、それを調べてるところなんです」


「研究か何か?」


 優也が答え方に迷ったところで、真琴が自然に口を挟んだ。


「個人的に古い材料の状態を見てるんです。大学の正式な研究ではないので、ご迷惑掛けない範囲だけ見せてもらえれば」


「ああ、そういうことか。まあ危ないことせんかったら構わんよ。ただ、母屋だけは入らんといてな。中、床が傷んでるところあるから」


「分かりました」


 そこだけは優也も迷わず答えた。


 宮田の案内で敷地へ入ると、母屋は二階建ての古い木造住宅で、屋根や外壁にはかなり年季が入っていた。外から見ただけでは倒壊しそうには見えないものの、内部の安全まで判断できるはずもない。その横には小さな納屋があり、さらに奥へ目を向ければ土の庭と石垣、その向こうには使われなくなった畑らしい場所が続いていた。


挿絵(By みてみん)


「家財はどこに置いてたんです?」


 真琴が尋ねると、宮田は納屋の前を指差した。


「最初はこの辺へまとめて出してた。家具みたいな大きい物は直接トラックへ積んだけど、細かい物は納屋にあった箱を使って仕分けしたんよ」


「例の金具が入ってた木箱も?」


「たぶんそうやと思う。あの店へ持ってった細かい金具は、ほとんど納屋から出てきた物やったから」


 優也と真琴は自然に顔を見合わせた。


「納屋の中も見ていいですか?」


「中まではええよ。ただ、奥に積んである物は親族の物も残ってるから、勝手に動かさんといてな」


「もちろんです」


 宮田は一通り注意事項を説明したあと、別の仕事があるため三十分ほどで戻ると言い残し、軽トラックで山道を下っていった。


 残された二人はすぐ納屋へ向かうのではなく、まず敷地全体から確認することにした。


「最初は外から?」


「うん。いきなり納屋だけ見るより、何もない場所も確認しといた方が比較できるやろ」


「私もそう思います」


 優也はキーホルダーや金属片を取り出さず、何も持っていない状態で周囲へ意識を広げてみた。


 これまでの鑑定では、目の前にある特定の物へ意識を向けることがほとんどだった。今回は対象を一つに絞らず、『この周囲に魔素反応を持つものがあるか』と問い掛けるように意識する。


 最初は、これといった反応はない。


 母屋の外壁へ意識を向けても、庭に転がる石や古い物干し台を見ても、例の引っ掛かりは感じられなかった。


「どうです?」


「今んとこ何もないな」


「じゃあ少しずつ移動しましょう」


 二人は敷地の端からゆっくり歩き、優也が数メートルごとに立ち止まって周囲を確認する。その横では真琴が位置と結果をノートへ書き込み、反応がなかった場所についても後から分かるよう印を付けていた。


「ここ、なし。この石垣も普通やな」


「じゃあ、あっちの古い農具は?」


 真琴が指差した錆びた鍬へ意識を向けると、鉄製でかなり腐食していることは分かったものの、魔素反応は感じられない。


「古い金属やから反応するってわけでもなさそうやな」


「キーホルダーも中古でしたし、“古い物”が条件なのかとも思ってましたけど、違いそうですね」


「今んとこはな」


 そんな会話をしながら少しずつ納屋へ近づいていったところ、入口まで十メートルほどの場所で、優也の足が自然に止まった。


「……三浦さん、ちょっと待って」


「反応ですか?」


 すぐに尋ねられ、優也は返事をせずもう一度周囲へ意識を向けた。


 何も感じなかった場所とは明らかに違い、頭の奥へごく薄い引っ掛かりがある。キーホルダーを直接触れた時ほど明確ではないものの、その場から一歩下がれば弱まり、再び前へ出れば僅かに感じやすくなった。


「たぶんある。めちゃくちゃ弱いけど、さっきまでとは違う」


 真琴の表情がすぐに変わり、ノートへ現在位置を書き込む。


「方向は分かります?」


「ちょっと試してみる」


 その場でゆっくり身体の向きを変え、左右と後方へ順番に意識を向けると、反応は均一ではなかった。左側や背後ではほとんど感じないのに対し、納屋がある正面へ向くと微かな違和感が戻ってくる。


「……納屋の方やと思う」


「じゃあ、近づくほど変化するか見ましょう。ただし体調悪くなったら、そこで終わりです」


「分かってる。今日はちゃんと聞くから」


「今日は、っていうのが気になりますけど」


 二人は冗談を交わしながらも、歩く速度を上げることはせず、数メートル進むたびに反応を確認していった。入口へ近づくにつれて違和感は少しずつ分かりやすくなったものの、これまで試料から感じていた反応とは質が少し違う。


 キーホルダーや古い金属の場合は、一つの物に何かがまとわりついているように感じられた。ところが今は、どこか一点から強く出ているというより、納屋の周囲そのものへ薄く広がっているように思える。


「物じゃないかもしれん」


「どういう意味です?」


「どれから出てるって感じがせえへん。ここら辺の空間全体に、薄く残ってるような……そんな感じ」


 真琴は入口から少し距離を取り、納屋全体を見回した。


「元々ここにあった何かから周囲へ残った可能性と、場所そのものに反応がある可能性、どっちもありますね」


「うん。まだどっちかは分からん」


「よろしい」


「先生みたいに言うなって」


 少し笑ったあと、優也は納屋へ入る前に一度だけ自分自身を鑑定した。結果は『魔素反応――極微量』で、普段と変わっていない。


「俺の方はいつも通りや」


「基準確認、記録しました」


 真琴が時刻を書き込むのを待ってから、二人は納屋の内部へ足を踏み入れた。


     ◇


 納屋の中は外から見た印象より少し広く、壁際には古い棚や木箱、農具が残されていた。小さな窓と板壁の隙間から入る光の中を細かな埃が漂い、床には家財を動かした時についたらしい擦れ跡がいくつも残っている。


「宮田さん、細かい物はここで仕分けしたって言ってましたね」


「うん。その箱も元々この中にあったはずや」


 優也は足元へ注意しながら一歩ずつ進み、その都度どこから反応を感じるのか確かめていった。


 魔素反応は確かに残っているものの、壁際の棚や置かれている工具、目につく木箱へ個別に意識を向けても、強い反応は返ってこない。それなのに奥へ進むほど周囲の違和感そのものが僅かに強くなっていくため、優也は途中から物ではなく床や空間を意識するようになった。


「右側の棚は?」


 真琴が尋ねる。


「そこちゃうな。棚そのものは普通」


「じゃあ床?」


「……そっちかもしれん」


 納屋の一番奥に近い場所で、優也はゆっくりしゃがみ込んだ。


 古びた板張りの床には、見た目だけなら特別な物は何もない。ただ、板の下から何かが滲むような感覚があり、直接触れずに手を少し上へかざして意識を集中すると、これまでよりはっきりとした情報が頭の奥へ浮かんできた。


『魔素反応――中程度』


 その結果に、優也は思わず眉を寄せる。


挿絵(By みてみん)


「……三浦さん、ここ強いわ」


 真琴もすぐ横へしゃがみ込んだ。


「キーホルダーより?」


「そこまではない。でも外で感じてた薄いやつとは全然違う。ここだけなら、かなりはっきり分かる」


「この下に何かある可能性は?」


「それを見てみる」


 優也は『何があるのか』『材質は何か』『どれくらいの範囲なのか』と質問を変えながら鑑定を試したが、普段の物品鑑定のようには情報が整理されなかった。しばらく意識を向け続けた末、ようやく曖昧な形で二つの情報だけが浮かんでくる。


『対象範囲――不明確』


『複数反応』


「……一個やないっぽい」


「複数ある?」


「そう出てる。ただ、何が何個あるとかまでは全然分からん」


 真琴は床板へ視線を落としたものの、触ろうとはしなかった。


「床板を外せれば早そうですけど、そこまでは許可もらってないですよね」


「うん。勝手に開けるのはあかんから、今日はここまでやな」


「その判断でいいと思います」


 優也は立ち上がり、後から同じ場所を特定できるよう床と周囲の柱をスマートフォンで撮影した。写真に魔素反応が映るわけではないが、位置の記録には使える。


 さらに納屋の中を移動して反応の分布を確かめていくと、強さにばらつきはあるものの、奥側に沿って細長く続いているように感じられた。


「点じゃないな。こっちへ続いてる感じする」


「納屋の外まで?」


「見てみよ」


 二人は入口へ戻り、建物の裏側へ回った。


 そこには納屋と山の斜面に挟まれた細い土の通路があり、その先には古い石垣と杉林が続いている。優也が納屋の内部で反応を感じた方向へ意識を向けると、薄くなりながらも魔素反応は途切れず、そのまま山側へ伸びているように思えた。


「外まで続いてる」


「どっちです?」


「山側やと思う」


 二人は石垣の手前まで進んだが、その先は斜面になっているため、それ以上無理に近づくことはしなかった。


 そこで優也は一度目を閉じ、納屋だけでなく石垣、その向こうの杉林、さらに山の斜面まで含めるように意識を広げてみる。


 すると、それまで試料を一つずつ鑑定していた時とは全く違う感覚が返ってきた。


 特定の物が反応しているのではない。


 山側の一帯に、薄く広い何かが存在しているように感じられる。


 優也はゆっくり目を開いた。


「……これ、物ちゃうわ」


 真琴がすぐ隣から顔を向ける。


「さっき言ってたのと同じ意味ですか?」


「うん。キーホルダーや金属に付いてた魔素って、元々あの物だけにあったんちゃうかもしれん。ここら辺にある何かが、長い間に金属へ付いただけって可能性もある」


「つまり、この場所が発生源?」


「そこまではまだ分からん。この辺に強い反応があるってだけで、発生源かどうかは別やろ」


 自分から慎重な言葉を返した優也を見て、真琴が少しだけ笑った。


「成長しましたね」


「誰のおかげやと思ってんねん」


「私です」


「自分で言うんや」


 笑いながらも、二人の視線はすぐに山へ戻った。


 敷地へ来る前は、キーホルダーと同じように魔素反応を持つ古い物を探すことになると思っていた。しかし実際に見つかったのは、納屋の床下から山側へ続いているらしい、場所そのものの反応だった。


 古道具店で見つけた三つの金属部品も、単に同じ箱へ入っていたから似た反応を持っていたのではなく、ここで長く保管されていたこと自体が関係しているのかもしれない。


 もちろん、まだ仮説にすぎない。


 だからこそ、今できる範囲の記録を残して、次に調べる条件を考える必要がある。


 真琴はしばらく山を見上げたあと、ノートを閉じた。


「今日はここまでにしません?」


「もう少し見たい気もするけど……宮田さんも戻ってくるしな」


「それもありますけど、この先へ入る許可はもらってません。斜面まで調べるなら、親族の方や土地の範囲も確認してからの方がいいと思います」


「せやな。今日は納屋までって話やし、勝手に山入るのは違うわ」


 以前の優也なら、「ほんの少し見るだけ」と自分に言い訳して先へ進んでいた可能性は否定できない。しかし今は、そこまでして急ぐ意味がないことも分かっていた。反応がそこにあるのなら、きちんと許可を取ってから来ればいい。


 二人は記録した場所を最後にもう一度確認し、納屋の扉や周囲を来た時の状態へ戻してから、車を停めた空き地へ向かった。


 歩きながら優也は一度だけ振り返る。


 古い納屋の向こうには、冬の杉山が何事もなかったように続いている。鳥の声と風が枝を揺らす音が聞こえるだけで、目に見える異変などどこにもない。


 それでも優也には、その静かな景色の中に、今まで手のひらの上でしか感じたことのなかった魔素が広がっているらしいことが分かる。


 一枚の白い皿が消えた夜から、謎はずっと優也の部屋の中にあった。やがてキーホルダーや古い金属へ移り、今日になって初めて、山という大きな場所へつながった。


 その先に何があるのかは分からないが、少なくとも一人で無理に追いかける必要はない。


 優也は隣を歩く真琴へ一度だけ視線を向けると、彼女がノートを見ながら今日の記録を確認していることに気づき、少しだけ笑った。


「何ですか?」


「いや、別に」


「また何か考えてました?」


「ちょっとだけな」


「勝手に山入ろうとかじゃないでしょうね?」


「入らへんって。そこまで信用ないん?」


「前科がないうちに止めてるんです」


「前科扱いすんな」


 二人で笑いながら車へ戻っていく。


 白い皿から始まった謎は、とうとう奈良の山へ辿り着いた。


 けれど優也にとって、その先へ進むことはもう、一人だけの冒険ではなくなっていた。


最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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