心臓決戦
顔が奪われたと感じた。痛い、痛い、痛い——。
顔が液化して、それが掻き混ぜられている。見えなくても、感覚でわかる。
だめだ、痛みが少し和らいだと思ったら、今度は眩暈だ。
眩暈? 果たしてまだ、俺の顔に目や耳や口はあるのか?
両手で顔を狂ったように撫ぜると、にゅるりとした気色の悪い感触があった。泥に手をついてしまった時のようだ。
自分の顔がこんなに気持ちの悪いものだったなんて。
嘔気がするが、吐き出す口がない。
どれだけそうしていただろう。体感半日、現実数分といったところか。
「終わったよ、目を開いてごらん」
トモくんの声がした。
「鏡は……ありますか? どうして交換する必要があったんですか」
社長と顔が入れ替わったと思うと気持ち悪い。
「見ない方が良いよ、戦意喪失されちゃ困る」
始めから戦意などないが、それほどひどいのだろうか。
後半の質問には答える気はなさそうだが、神様は顔で判断をしないなら、この行動は――あ、そういうことか。
「じゃあ、行くよ。やっくん、待っていてね。彼らを運んだら、必ず戻ってくるから」
「約束だよ、トモくん」
……俺を置いて、二人の友情だか愛だかよくわからないロマンスが展開されている。
そして――急にトモくんが飛んだ。
ビリオンバンブーの林の方へ。
何であっちなんだ。まだ煌々と燃えているぞ。
神様の心臓に向かうと言うから、なんとなく空に向かうのかと思っていた。
「あの、どうしてあっちに……えっ!!」
「加速するから驚かさないでよ、何?」
トモくんは何とも思わないのか? 俺の声、どうなってしまったんだ! これ、社長の声じゃないか。もう声を出すのも怖い。
「そんなに嫌がらないでよ、やっくんが可哀想だよ。あ、経路がわからないから怖いんだね。説明するよ。神様の心臓には血管を通っていく。キミの目からすると、地中に入るけど、ちゃんと息はできるから安心して」
何も安心できない。現に、今、目の前に緑色に燃える大木が迫っている。ひと際デカい木だ。樹齢が桁違いに見える。
「あの木の中に入る」
「え??」
あの大木が神様の毛細血管とでもいうのか?
「正解」




