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静止の境目

 やっぱりな――。


 安寧など、やすやす手に入る訳はないのだ。


(戦うって――もっと具体的に言ってくださいよ)


 俺が必死なのに、トモくんは同時進行で外にいる社長と、愛の告白みたいなのをしているから質が悪い。


 俺の質問がないがしろにされているような気がする。


(神様の心臓に、ボクが大量の異能を送り込む。神様はどうするか? 可能性は二つだ。まずは神様が諦めて、自ら『死』を選ぶ。神様の死はこの世界の終わりで、次の世界の始まりだ。キミの知る『この世』は消滅する)


(……)


 何言ってんだ、この人。そんなことになっては困る。俺はこの世界を憎んでいるわけじゃない。


(そんなことをキミが望んでいないのは知ってる。神殺しなんてさせるつもりはない。キミにして欲しいのは、神様を殺すフリだ)


 絶句している俺を、素直に聞いていると勘違いしたのか、トモくんは饒舌に話した。


(もう一つの可能性、それは神様が異能を克服することだ。やっくんのおかげで、今、世界に散らばるほとんどの異能がここに集結した。身体中に散らばっていた異能を神様が一掃できる絶好の機会だ。もしかしたら、最初で最後のチャンスかも知れない)


(それは、異能たちが殺されるということですか?)


 それも嫌だった。同胞には幸せになってもらいたい。


(だから――キミには神様を良い感じに煽って、異能を浄化させて欲しい。そして、神様の心臓になってこの世界を守り続けるんだ。どう? そんなに難しいことではないでしょ)


 この人アホなのか――。


 思わず口に――脳内に吐き出しそうになって、慌てて取り繕う。


(簡単なわけないでしょう。そんな状況初めてですよ。どうすれば良いんですか)


 できるだけ冷静に言った。


(ちょっと黙ってて、良いところなんだから)


(……)


 社長との感動の場面らしいが、何故俺が怒られるのか。『トモくん』、『やっくん』とべたべたやってるが、大概にしてくれ。


 神様に戦いを挑んで、負ける演技をしろなんて、バイトで食いつないできた男に頼むことじゃない。異能じゃなくてもいいから、俳優に言ってくれ。


「すまない」


 ふいにその言葉が耳に響いて、社長の方を見た。


 目が合った——。少し前まで隣にいた社長が、まるで知らない人のように見えた。


「どういう意味ですか……」


「僕から手短に説明する」


 せっかく社長が話しだそうとしたのに、説明下手のトモくんが割って入ってきた。


「ヨシカズくん、やっくんと顔を交換してくれないか」


「へ?」


 やっぱりこの人に話させてはだめだ。なんで俺が社長と顔を交換しなきゃいけないんだ。


「だってキミは顔、もういらないじゃない」


 そういうことじゃない。


「トモくん、僕から説明するよ。キミは昔から説明が下手だ」


「良かった。お願いします」


 この幻想的な場面で、ここだけ社内会議みたくなっている。


 トモくんは不服そうだが、関係ない。


「ヨシカズくん、キミはこれから神様の心臓に運ばれることは聞いただろ? 神様の心臓は究極の浄化装置だ。あそこまで行けば、異能は――キミと銀色の蝶たちは浄化され、待たざる人間として生まれ変われる可能性が極めて高い。ただし、ひとつ問題がある」


 そこで社長が芝生に視線を落とした。何か言いにくいことがあるのか。


「神様はヘタレなんだ。衝撃を――例えば、不意打ちに大勢の異能が自分の心臓に運ばれたりすると、もう無理だ――と世界を捨てて、生まれ変わってしまうかも知れない」


 なんてことだ。俺たちはそんな腰抜けの身体の中に囚われているのか。今すぐみんなで出て行った方が良いのではないか。


「呆れるかも知れないけど、まあ、自分の身体のことだからね。許してあげて」


 トモくんが神様を庇う。


「つまり、神様が『自分にも勝ち目がある』という程度の攻撃を仕掛けないといけない」


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