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異療

 わたしは『異療』を見た。

 伝説かと思っていた。

 実在したのか――。


 銀色に狂おしく燃えていた異能の群れが、溶けて一つになっていく。

 無数に散って震えていた蝶たちが、異能たちが。

 さっきまで細かく、それぞれの速度で瞬いて、まるでデジタルのようだった彼らが、滑らかに一つの鳥の形を形成していく。


 美しい――。そうだ、究極の治癒は一つになること。

 特に、世界から弾かれ続けた異能にとっては。


 トモくんがこれから何をするのか、わたしには予想できた。

 空で雷に打たれ、消えるのだ。跡形もなく。

 排除でも、破壊でもない。

 無かったことにするという究極の赦しを、自分の身体を使って行うつもりだ。


 それが、ほんの一握りの神の使いにできることは知っていた。


 夜空に稲妻が一度だけ光って、スタートの合図を出した。

 銀色の不死蝶で出来た治癒鳥。

 その真上に、白銀の鋭い雷光。


 全てが完璧に思われる時こそ、一番危ういのが世の性だ。


「トモくん!!」


 あの男――やっくんが叫んだ。

 聞こえるはずのない距離。でも、わたし達には関係ない。


 トモくんの動きが止まった。

 当たり前だ。愛する人の声に反応しない鳥はいない。


「トモくん!! 僕も連れて行って!!」


 ああ……なんでこのタイミングで、そんな可哀想な声を出すんだ。


「トモくん……。お願い、僕を一人にしないで。君だけが、友だちなんだ」


 やめて、やめて……。そんな事を言わないで。


 トモくんの身体がこちらを向いた。

 ああ、なんて優しい銀色で輝いているんだろう。

 もう夜明けなんていらないと思える。


 どうしてだろう、涙が出てきて止まらない。


「トモくん、僕は――ここだよ」


 そしてあの男は、やっくんは最期の呪いの言葉を吐いてしまった。


「助けて――」

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