再起動
わたしは失敗した。
だから、こうしてまた静かになった島のこの小屋で、人間の姿になって記録を作成している。
再起動――次の大循環期に入る前に、神様の魂に組み込まなければ。
世界の記録を他の鳥たちから受け取って神様に渡すのが、わたしたちオシドリの仕事だから、それ自体は自然なことだ。
違うのは、これは本来二人で行う作業だということ。
オシドリ夫婦として。
一度バラバラにされたわたしは、この任務から解かれ、二度と夫と会うこともないはずだった。
トモくんの計らいによって、この時間を許され、夫と再会できる。
再起動後の世界で――。
その瞬間は目前だ。完成させなくては。
皮肉にも、このトモくんが使っていた管理人小屋で。
外でドサリと屋根から雪が落ちる音がした。
街灯もない窓の外は真っ暗だ。わたしには関係がないことだが。
大粒の雪がしんしんと降り注ぎ、朝には膝まで埋まるほどの深さになっているだろう――朝が来るならば。
再起動の前夜はいつもこうだ。
そうだ、わたしはどこまで記録したのだっけ?
そう――トモくんが不死蝶を呑み込むところだ。
♢♢
トモくんが不死蝶の群れに向かって行った時、不思議なことが起きた。
飛び散るかと思っていたその銀色の蝶が、なんとトモくんの方へと向かって行ったのだ。
わたしは最初、トモくんがそれを喰らうものだと思っていた。
ところが実際は、まったく違った。
蝶がトモくんの身体をどんどんと覆っていく。
そうして、あっという間に月光も霞む、巨大な銀色の鳥になる。
その様子に、わたしはすっかり魅入られていた。
異能はなぜ、トモくんと同化することを望んだのか。
答えは簡単だ。『救い』。
わたし自身が欲しているものだから、すぐにわかった。
トモくんは選別しない。異能とか、普通とか、善良とか――くだらない仕分けを放棄している。
あるのは赦しと救いのみ。それが彼の本性だ。
だから、あの異能の王を目指したやっくんも、彼に魅かれた。
そう、彼らは魅かれ合ったのだ。
それが、あんな奇跡を生むとは――。




