友情と空
「トモくん……」
感情のわかりにくいやっくんの声に、明らかに愛が滲んだ。
ボクの勘違いなんかじゃない。ボクには彼のことが何でもわかる。だから余計に、『異能が世界を支配しよう』なんて考えを持ち始めた時はつらかった。
「自分がトモくんのことを守ってるつもりでいた。でも、逆だったんだ。キミの方がずっと見守ってくれていたんだね……」
やっくんの綺麗な目が――彼の母親の瞳が、優しい水で濡れる。
「ねえ、やっくん……ボクはキミのことを愛してる」
恥ずかしげもなく言った。本当のことだ。何を言い淀むことがあるだろう。人間は考えすぎなんだ。
「だから、キミには救われて欲しいんだ。いや、ボクに救わせて欲しいんだ。争う必要なんてないんだよ」
ボクの心からの言葉が届いたのだろうか。やっくんの顔に、少年の笑顔が浮かんだ。
「テヲクレダ!」
存在を忘れていた助手さんが叫んだ。
「あなたが、夫を見殺しにされて怒っているのはわかる。けど、それでやっくんを責めるのは――」
「チガウ!!」
助手さんの指さした方を見て、心臓が凍り付いた。
無数の不死蝶だ――。
僕たち神の鳥に対抗する鉄の蝶。異能たちの本来の姿だ。
ビリオンバードの放つオリーブグリーンの炎を嘲笑うかのように、輝くシルバーの羽で夜空を舞っている。
神様を滅ぼすものとしては、あまりにも美し過ぎる。
「やっくん……キミが呼んだのか?」
「ごめん……。仲間が必要だから……運命に抗うために」
やってしまったか――。
もう終わりだ。この世界は捨てられる。
そんな悲しみの中、改めて夜空を見上げた。鉄の蝶のさらに上。
星座だ――。星でできたやっくんの顔。
真・ビリオンバードが奪った、やっくんの優しい、優しい本当の顔が夜空に浮かんでいた。
それを目印に、地上の異能たちが集まってきたのだ。
ああ、愛おしい異能たち。ボクの兄弟たちだ。
キミたちも争ってはいけない。この世界は一つなんだから……。
「ドウスル?」
まだ状況を完全に呑み込めていない助手さんが聞いてきた。
「やっくんに呼びかけてもらおう。蝶にこのまま去ってもらうように……。そうしないと、真・ビリオンバードが――」
またしても言いかけた時だ。ボクは昔からタイミングが悪い。
ミリオンバンブーの林が動いた。遅かった――。
真・ビリオンバードが変態したのだ。
いや、もともとあの林はあいつの身体の一部だった。
それが今、鳥と一体になった。接合部となったのはヨシカズくんだ。
早く気が付くべきだった。真・ビリオンバードはボクなんかよりずっと役者だ。
ヨシカズくんを林に誘い込んだんだ。そして、その魂を喰わずに接合部として利用した。
なんてことだ。ボクはあの青年も好きだった。今ならまだ助け出す術はあるはずだ。
「ビリオンバードはボクに任せて! 助手さんとやっくんは不死蝶を頼んだ!」




