愛を知れ2
それを知ったのは、それから間もなくだ。
ずっと見守っていたのっぺら少年の家が火事になった。その時、少年が父親から顔を奪うのを、ボクは止めなかった。
彼の父が強くそう望んだのがわかったから。あれが一つ目の愛。
そして、顔を受け取った彼は、悲しみにも喜びにも当てはまらない涙を流した。あれが二つ目の愛。
そして彼の母が、息子を見つめる目――感情という熱い風を冷やしてくれる海の目。あれが三つ目の愛。
三つの愛をくらったボクは、すっかり変わってしまった。
真・ビリオンバードと行動を共にする時間も減った。
代わりに、顔を得た少年をずっと追いかけた。
彼が仲間を増殖させないように監視する、それが建前だったが、本当は愛のそばに居たかっただけだ。
やっくんのおじいさんは、町を離れてからボクに会うことはなかったと言ったかもしれないけど、ボクの方はずっと見ていた。
彼がやっくんと違ったのは、自分の運命を受け入れ、その後二度と能力を使わず、生涯を終えてくれたことだ。
彼の母親が、はっきり言葉にせずとも教え込んでいたのだと思う。
今を乗り越えれば、神様に近い細胞になれる――と。
実際、彼はそうなった。
ところが数十年後、人間の町を巡回している時、驚くべきものに出会った。
キミだよ、やっくん。顔のない赤ん坊のキミを空から見た。
ボクに愛を教えてくれた、あの少年がまたボクの前に現れた――。いや、でもおかしい。ビリオンバードが顔だけを奪って、命を奪い損ねたと言った話は、あれから聞かない。
真面目なあいつが、ボクに失敗を隠すなんてことはあり得ない。
なのに、これはどういうことだ。ボクの恋しさが幻覚を見せているのだろうか。
ふと、一つの考えが頭に浮かんだ。
突然変異――。
何度か出くわしたことがある。でも、のっぺら顔のケースは初めてだ。
ボクが守ってあげないと。彼が他の鳥たちに目を付けられる前に。
「ボクが責任をもって、彼を見守るよ」
そう、仲間に宣言した。
そうして、キミの前に現れたんだ――。




