トモくん2
ボクはね、産まれてしまった異能が暴走を始めないか、監視する役割を持って誕生した。
キミが想像もつかないほど昔のことだよ。
異能者にもタイプがある。一生それに目覚めない者もいれば、気が付いても否定し、一度も能力を使わずに生涯を終える者もいる。
それなら良いんだ――。いや、そうしていて欲しいんだ。
でも、やっくんやヨシカズくんのように、一度でも異能を使ってしまったら、ビリオンバード部隊の標的になる。
やっくんのおじいさんと会ったのは、彼が異能を発動させる前だから、特別だった。
ある日、真・ビリオンバードが慌てた様子でボクのところへ飛んできた。
「しくじった」
金色の羽の下が青ざめているんじゃないかと思うほど、深刻な声だ。こいつがしくじるなんて、いつものことじゃないか。
ジドっとした目で見てしまう。彼らが完璧な仕事をしてくれていたら、ボクはどんなに幸せだろう。
「で?」
うなだれる真・ビリオンバードに冷たく言ってしまう。
「顔だけを奪ってしまったんだ」
「なんだって!?」
これには驚いた。今までだって幾度となくこいつのしくじりは聞いてきたが、これは初めてのケースだ。
「それは……顔の機能だけを奪ったってことだよね?」
お願いだ、そうだと言ってくれ。
「いや、顔そのものを奪ってしまった」
希望が打ち砕かれる。
真・ビリオンバードが失敗のたびに真っ先にボクのところへ来るのも、今これだけ落ち込んだ姿をさらしているのにも訳がある。
彼とわたしは兄弟のような関係だ。
そして彼は失敗しても、相手の人間との関わりはそこまでだ。
でも、ボクにとってはこれからが本番。
滅ぼし損ねた異能の監視がボクの仕事。
「本当にすまない。意外な出来事が起こって、動揺してしまったんだ」
あまりに落ち込んでいるので、責めるのが可哀想になって聞いてしまう。
「まあ……仕方ないよ。それで、何があったの?」
真・ビリオンバードの話は、にわかに信じられなかった。
なんと、異能の母親が救いを求めてきたというのだ。子どもを奪わないで欲しいというのでも、自分だけは助けてくれというのでもなく――。
「ねえ、もしかしてだけど……」
言うのも憚られたが、はっきりさせておきたい。
「あの女、わたし達の目的を知っている」
真・ビリオンバードはきっぱりと言い切った。
「まさか……。どうやって……」
これまで、ボク達は――特に真・ビリオンバードは、胎児を奪う魔物のような扱いを受けてきたはずだ。
人間たちの間では『件の鳥』などと呼ばれている。
奪われた胎児のその後など、知る者はいないはずだ。しかし、その母親は確かに『救って』と言ったという。
ボク達が胎児を奪うことは、世界の秩序を保つためだけじゃない。神様に近い魂を回収する目的もある。
神様には遠く及ばないが、それに近しい力を持つ者。放っておくと使い方を間違え、暴走することがある彼らを、罪を犯す前に拾ってやるのがボクらの務めだ。
そうすれば、循環の過程で限りなく神様に近い役割を与えてもらえる。ボクや真・ビリオンバードのように。欲や苦痛からの永遠の解放だ。
だから、救ってくれと言ったのか……? その女、何者だ? ボクの知らないボクたちの仲間か? いや、そんなわけない――。
「わかった……あとは任せて。ボクがその異能を監視する」




