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世界の癌

 ショックだった。

 わかっていたけれど、改めてこの世界に悪影響を及ぼす『異物』であるとはっきり聞かされ、全身から力が抜け落ちた。


「ヨシカズくん……」


 芝生にへたりこんだ俺に、トモくんさんがしゃがみ込んで声をかけてきた。


「ボクも――辛いよ。でも、今はとにかくやっくんを止めなきゃ。話はそれからだ」


 賛成だ。こんなに虐げられてなお、俺は自分より世界を思っている。俺はお人好しの悪人だ。


「細胞の性、でしょうかね」


 鳥が淡々と言った。もしかしたら感情を込めているのかもしれないし、俺たちに同情しているのかもしれない。ただ、それは誰の耳にも――俺の耳にすら届かない。


 鳥の黒目がわずかだが、しっとりと濡れていた。


「わたしは納得がいかない。この世界が神の身体の中だとか、わたし達異能が癌だとか、どうやって証明する?」


 責めるように問う社長の意志は固い。どうしよう――。


「あの!!」


 思わず大きな声で鳥に向かって叫んでいた。


「なんでしょうか」


 機械的に鳥が答える。


「俺たちが『癌』だと証明する方法を教えてくれないか。そうしたら、みんな諦めがつく」


 鳥が、すっかり背景になっていた燃える林の方に顔を向けた。


「まさか……」


 意外と勘の良いトモくんさんが声を震わせる。


「そうです。あの炎の中に入ってみれば良い。あなた方は焼死などできない。縮小して、そしてわたしに喰われて消えるのです」


 その言葉を聞いて、迷わず立ち上がった。まだ足は僅かに震えている。


「ヨシカズくん! 駄目だ!」


 そう言うトモくんさんの手を振り払って、林に向かって走り出した。


 鳥と助手さんは微動だにせず、社長の全身は怒りのオーラで包まれていた。

 社長を言葉で説得することは、もう無理だ。


 俺が――身をもって示してやる。俺たちが消えるべき存在であるということを。


 足を動かすスピードを上げた。夜風が気持ちいい。

 どんどんオリーブグリーンに燃え上がる林が近づいてくる。

 懐中電灯は、とっくにどこかに捨てていた。


 ああ……あと……もう、少し……。

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