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怪奇電話

「わたしに嫌がらせをしていたのは、この女じゃなかったというのか……」


 冷静な社長すら、動揺を隠せないようだ。


「ナンノ、ハナシダ」


 また、女性の機械的な声が闇に響いた。


 この女性——助手さんの声だけは、張り上げてもいない時でも、俺たちの誰よりもよく通る。


 助手さんが自分から前に進み出て、その顔がチラリと見えた。


 どうしよう、とても冷静に説明できない。


 この助手さん、驚くほど美人じゃないか。トモくんさんの話から、もっとこう、アーミーな女性を想像していたが、儚さすらあるその顔立ちは、社長の娘と言われたって信じる。


 いや、顔が似ているのは当たり前なんだ。社長の方が奪ったのだから。助手さんこそ、自分に似たおじさんが突然現れて、不快に思っているだろう。


 俺が不思議なのはそこではない。なぜ、この助手さんは歳を取っていないのだろうか。


 どう見ても二十代だ。計算が合わない。


「異能ではたまにあるんだよ」


 トモくんさんが小声で教えてくれた。


「ここしばらく、わたしを脅している者がいた。わたしの会社に電話をかけてきては、あの夜の音声を流すというものだ。『お前の行いを知っているぞ、お前が何者か知っているぞ、お前を許さないぞ』という脅しだと思っていた。あの時、この島にはわたし達しかいなかったはず……」


 普段冷静な人が怯えている姿を見て、俺の中の恐怖がますます膨れ上がる。


「いやいや、その電話って火事で死んだ研究者の呪いとか? イヤだイヤだ、僕、そういうの本当に弱いから」


 怯えるトモくんさんに一瞥もくれず、助手さんはすっと社長を指さした。


「オマエ、コロシタ」


 瞬きもせずに社長の顔を捉えるその目に、夜露のような涙が光った。


「そうだ――。実質手を下したわけではないが、臆病なわたしは研究者Aを見捨てた」


 見ている俺の方がハラハラする。


 二人の間は、助手さんが素早くナイフでも突き立てたら、すべてが終わってしまうくらい近い。


「あの電話——確かに抑揚がなくて、助手さんと同じような話し方でした。でも絶対に別人だ。俺の力なんてなくてもわかるくらい、全然違う……」


 社長が考え込むように、細い顎に手を当てた。


「となると、考えられることは三つか。本当に研究者の男の呪いなのか、もしくはあの場にわたし達以外の誰かがいたか、あるいは……」


 その時、林の方から何かが爆ぜるような大きな音が鳴り響いた。

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