鳥、現る
「な、何が起きたんですか」
「鳥が現れたんだ」
それ以外ないのに口にしてしまった自分が恥ずかしい。
林は爛々と輝いている。これに比べたら、昼間など暗闇に等しいと思えるほどに。
「さ、行こうか。鳥を説得しに」
社長が当たり前のように歩き出した。まだ、さっきの「切り札」とやらも聞いていないし、そもそもこの助手さんはどうするんだ?
彼女は無言で、俺たちの数歩後ろをすたすたとついてきている。
社長を狙って、待ち伏せしていたんじゃないのか?
ちょっとトモくんさんと目配せを交わしたようだが、気のせいだろうか?
それにしても、林が美しい――。もしかしたら、太古の森はこんな感じだったのかも知れない。植物は燃える宝石からできていて、その残骸を俺たちは今、高級品として崇めているとか……。
そんな妄想が、現実と思えてしまうほどの荘厳さだ。
スフェーンという宝石の色、オリーブグリーンというのか? あの金色の混じった緑が、艶めかしく揺れながら、俺たちを呼んでいる。
あそこに、鳥がいるんだ。俺の異能を喰ってくれる鳥、普通に戻してくれる鳥が。
もう、世間への復讐なんてちっぽけなことはどうでもいい。
俺は、やっぱり普通になりたい。
社長は今、復讐どころか世界征服を企んでいる。
自分を受け入れてくれない世界に恨みを持っているのは、俺も同じだ。でも、だからといって――。
だって、俺たちが世界の異物なのは事実じゃないか。
あの緑を見ろ。あっちの方がどう見ても正しい。
他の二人はどう思ってるんだ?
トモくんさんは、炎に向かっていく社長の身を案じてアタフタしているし、助手さんは全くの無表情でトコトコ歩いているだけだ。
みんな、頭がおかしいんじゃないか? どうしたって、社長を止めなくちゃならない状況だろ。
——誰もやらないなら俺がやるしかない。
そう覚悟を決め、社長に走り寄った瞬間だった。
降り立った――。
目の前の開けた野に、真・ビリオンバードが。




