再生の森
「あれ? おかしい……」
社長にもっと質問をしようと思った時、トモくんさんが呟いた。
視線の先に、ぼんやりと緑色の光が広がっているのが見える。
「偽ミリオンバンブーの林は、燃え尽きたんじゃないんですか?」
俺も驚いて声を上げた。こんなに離れていても、深呼吸をしたくなるような、緑の香がした。
「そうだよ。少なくとも三ヶ月前に僕がここに来た時には、焼け野原だった」
トモくんさんがゴクリと唾を飲む音が、やけに大きく聞こえた。
「役者がそろったから、舞台が動きだした——ということか」
社長の言葉が静かに響いた。
そう言えば、さっきから虫の声さえ聞こえない。社長の言葉も重なって、すべてが準備されたセットのように思えてきた。
「なんの舞台ですか? 役者って?」
「わたしとトモくん、そして君。それからオシドリラボの二人が出演者だ。もしかしたら、もっといるかもしれない。例えば、わたしにビリオンバードのことを教えた人物とか。わたしたちがそろうことで、新たな異能が開花する……なんて、実はわたしにもわからない」
ああ、俺の思っていた通りのことが、今夜、この島で起きるかもしれないんだ。そう思うと胸が高鳴った。しかし、まだ気になっていたことがある。
「社長に鳥の話を教えたのは、誰だったんです?」
「まだ話していなかったね。実は、わたしが本当に探して欲しいのはその人だ」
哀しそうな溜息をついたのは、社長ではなくトモくんだ。
「やっぱりそうだったんだね……」
「ああ、トモくんはとっくに気が付いていたよね」
二人が並んで歩を進めながら勝手に納得し合っているが、俺にはさっぱりだ。
「ちょっと……どういうことですか?」
「わたしにビリオンバードのことを教えてくれたのは、わたしの母だよ」
緑の香が一段と濃くなった気がした。
「社長のお母さん?」
「ああ、告白する。わたしは顔なしで生まれた。正確には、顔のパーツがないのっぺら坊だった。それでも生きていた。安楽死をさせることもできず、研究対象になることは必至だった。だから、母はわたしを連れて逃げ出したんだよ。そして、最期にこう言った『お母さんの顔をあげる』って。わたしの異能は開花し、母は死んだ――と思われる」
そんな小さな時の記憶があるものなのか? 質問をする前に、トモくんさんが口を開いた。
「僕が子どもの時に会ったのは、やっくんの叔母さんだよね? ごめん……君の家に遊びに行った時、写真立てに二人のよく似た女性のものがあった。姉妹だなって思って……」
「トモくんにはわかっていたよな。そう、母が逃げ込んだのは実の姉のところだった。後にわたしを自分の子どもとして育ててくれた人だ。子どもに恵まれない夫婦でね、とても良くしてくれたよ」
トモくんさんは社長の生い立ちを察していた。それを思うと、いつも半歩下がって見守っているような態度だったのも腑に落ちる。
「で、ヨシカズくんが聞きたいのは、鳥について知る経緯だったな。それは母の日記に隠されていた」




