open the story 004 三人目の足音
バスが止まりドアが開く。彼女はゆっくりと降りた。少し落ち着きのある足音に感じた。
夕方の空気は、やわらかく、街の灯りが一つずつ付き始めている。
バス停の前には小さな店があり、入口の横には靴がいくつか並んでいた。
どうやら、座敷の店らしい。彼女は店の前で足を止めた。そして、静かに僕を脱いだ。
さっまで感じていた体温が少しずつ消えていく。僕は入口のすみで、しばらく並んでいた。
いろんな靴がある。スニーカー・サンダル・・・・それぞれの人生を歩いている靴。
いろんな場所へ運ばれる僕たちなんだ。嬉しい場所、行きたくない場所、楽しい場所、不安な場所、それでも、黙って足を支える。
しばらくして、また違う足に出会った。
背の高い男性、大学生らしい。そう、三人目の足。
二人とは違い、迷いの重さを持った足だ。
男性は歩き出す。街灯の下で彼は立ち止まった。
ポケットからスマートフォンを出 し、画面を見て苦笑した。
「夢ってさ、簡単じゃないよね・・・」その言葉は、夜の空気の中へとけていった。
僕は思った。進むべき道を考えているんだと・・・。
人はみなそれぞれの道を歩んでいる。
遠回り・たちどまり・戻り、色んな道。でも、誰もが足を動かしている。迷いながらでも、前に進む。三人目の足の重さはそんな人生の重さだった。
男性は店の前で止まった。入り口にはたくさんの靴が並んでいる。
店の看板には「新入生歓迎会」と書かれていた。
楽しそうな声が聞こえてくる。男性は少し笑って言った。
「まあ、行くか」
そして僕を脱いで入口に並べた。
とても懐かしい足音が、近づいている予感がした。
僕がよく知っているあの足音だった。




