open the story 003 二人目の足音
昇降口の床の上で健斗はしばらく立ち止まっていた。自分の足元を見ている。
「これ、誰のだろう・・・」
黒いローファー、見慣れているようでどこか違う。きれいにも見える。
「間違えたんだよな、俺どうしよう、名前書いてないし、放置するわけにもいかないんだよなぁ・・・・」と小さな声で呟いていた。
その時、別の声がした。
「あの・・・・」小さな声、振り向くと一人の女子高生が立っていた。
「それっ、私のです、多分・・・」
足元を指さした。
健斗は驚いた顔で、
「えっ、あっ・・・ごめんなさい」と慌てて脱いだ。足元には違うローファーがあった。確かに、似てる。
どうやら、お互いに履き間違えたんだね。
僕は床に置かれ、ひんやりとした感触、別の足が入った。その足はゆっくりと慎重に体重がかかる。どこか震えているような足だった。
女子生徒は小さく「ありがとうございます」と言った。
二人は少し笑った。そして何も言わず歩き出した。コツコツコツ・・・。
やがて夕方が近づき、空は少しオレンジ色になっていた。彼女はバス停まで歩きベンチに座る。ぽつりと甲のあたりに温かい雫が落ちた。
俯き、肩が少し揺れている。誰もいないバス停、小さく息を吸う音が伝わってきた。
「ばかだなぁ、私」何かを後悔しているのか?、喧嘩したのか?
人の足には重さがある。
僕は涙を止められないし、言葉もかけられない。
しばらくするとバスが来て、彼女は立ち上がり、バスの階段を上がった。
僕は迷っている足と、泣いている足を知った。
僕の持ち主とは違う人生だと、感じる。
僕の経験値が増えた気がした。
そして、この後三人目の足に出会うことになる。
その足は夢と迷いの間で、立ち止まりかけていた。




