open the story 002 一人目の足音
知らない足は高架下を通過し、歩き続ける。少し早い感じだ。そして、時々止まる。まるで考えごとしているような歩き方。
そして、バス停の前で止まった。
「おーぃ、健斗」と声がする。
「おはよう」どうやらこの足の持ち主は"健斗"というらしい。
「今日さ、進路用紙の提出日だろ?」
健斗は、少し黙った。アスファルトの上でつま先が動く。
「まだ決めてないんだ」健斗が応えた。
「マジカッ・・・」
「なんかさ」と言いかけて、やめた。バスが通過した。
「俺何になりたいんだろう」
その言葉は靴の底まで伝わってくるようだった。
人の足には重さがある。体重以外の、迷いの重さ、不安の重さ、
健斗の足はその全部を抱えているようだった。
信号が青になり、二人は歩き始めた、コツコツ、さっきよりもゆっくりになっている。
友達が言う。
「別にさ、今決めなくてもいいんじゃないの?」
健斗は、応えないままだった。
人は言葉で変わることがてる。靴はそれを足元から感じている。僕は思った。人は迷いながら、歩く生き物なんだと。
昼が近づく頃健斗は学校へ戻った。
昇降口に入り床の感触が変わる。その時「えっ・・・」
僕を見ていた。
「俺の靴じゃない、どこでまちがえたのだろうか・・・」
どうやら、やっと気づいたらしい。そうだよ、僕は君の靴じゃないんだよ。
僕には帰る足が、あるんだ。今は旅しているんだな。
でも、同時に、思った、迷っている君の足の重さを知ったよ。持ち主とは違う重さだ。
この後、僕は二人目の足に出会うことになる。
その足は僕がまだ知らない、涙の重さを持っていた。




