5/5
open the story 005 最終話
沢山並んでいる中に、僕も静かに並んでいる。店の中からは、にぎやかな声が聞こえてくる。グラスの音、笑い声・・・・。
新入生歓迎会、それは門出だろう。
しばらくして、戸が開いた。数人が室内から出てくる。
「マジ、緊張したわっ」
「先輩面白かったな」そんな声が弾んている。
その時僕はある音に気付いた。
コツコツ、カクカクゆっくりとした歩き方で急がない。
胸の奥がふっと温かくなる。
"この足音、間違えない、僕の持ち主だ"
足音が近づき、靴を探している気配・・・。
「あっ、これだ」
小さな囁き。少し安心した声だった。次の瞬間足が入った。ゆっくり体重がかかる。
帰ってきた、この足に。僕も安心に包まれる。
僕は色んな足を知った。
迷い足、泣き足、悩み足・・・・、どの足もそれぞれの人生を歩いていた。
靴はそのすぐ下でそのすべてを感じている。
持ち主は友達と歩いていた。持ち主とは違う人生を少しだけ知った。之はどこかでつながる道なんだと、こうして、戻れたからそう思う。
僕はただのローファーの靴だ。話すことも、道を選ぶことも、できないけれど、僕の経験値は増えた。
そしてこれからも、この足と一緒に歩いていく。
夜の道に足音が響いていた。




