25 それぞれの夜
その日の夜、美世がリビングでくつろいでいると、スマホがリン! と音を立てた。確認すると、ふわりからメッセージが来ていたのだ。
『テツ君と付き合うことになったよ』
そのメッセージを見て、美世は「まじ!?」と声を出す。すぐに「おめでとう。話聞かせて!」と返信し、彼女から付き合うことになった経緯を教えてもらった。
『テツ君の家にプリントを届けに行ったの。そしたらテツ君が一緒にいて欲しいって言ってくれて、しばらく部屋で二人きりだったんだ。それから……色々あって付き合うことに……』
「色々あって」の部分がものすごく気になるが、ぼかしているのを見ると恥ずかしくて言えないのだろう。2人はいったい部屋で何をしていたのか……まさかキスでもしたのかと思ったが、テツは風邪を引いていたはず。そんなことしたらふわりにうつってしまうだろう。だが他に「色々あって」に該当しそうなことも思いつかない。
美世は迷った末に、「何があったかめっちゃ気になるけど、とにかくおめでとう! 病人と会って来たんだし、手洗いうがいはしっかりね」と返信した。
ふわりから「ちゃんと手洗いうがいしたよ!」と返って来たのを見て微笑んでいると、風呂場から「美世、お風呂空いたわよ」と母の喜咲の声が聞こえてきた。
「はーい」
美世はスマホをテーブルに置き、着替えを取りに自室へ戻った。
しばらくして、喜咲が髪を乾かし終えてリビングにやってきた。美世がいない様子をみると、彼女は風呂に行ったのだろう。ソファが空いているし、すこしくつろがせてもらおうか。そう思い、喜咲はソファにもたれかかる。何か見たくなってテレビをつけると、ちょうど夫の祐一が医療ドラマに出ているところだった。主人公の先輩医師を演じる祐一は、真剣な顔でかっこいい。
「ふふ、今日も素敵」
喜咲が頬を緩めていると、不意にテーブルに置きっぱなしのスマホがリン! と鳴った。通知が来たと同時にスマホの画面が点灯する。誰かとメッセージのやりとりでもしていたのだろうか。気になった喜咲がちらりとスマホを覗くと、思いもよらない通知が来ていた。
――八坂冬紀「明日、家庭科室に来られそう? ファッションショーの服ができたから試着してくれるかな」
「冬紀君……?」
まさか、昔家族ぐるみで仲が良かったあの八坂冬紀だろうか。経済的な不安から、美世に関わるのを止めた、彼だろうか。
(美世、まだ冬紀君と仲が良かったのね……大丈夫なのかしら)
喜咲は普段の娘の様子を思い返して、不安げに俯く。自分の知る限りでは、美世は従順で、不平不満なんて言えない子だ。もし冬紀から何かを要求されていたとしても、断ることなんてできないだろう。自分を出せないあの美世が、冬紀と関わっていて大丈夫なのだろうか……。
喜咲が「後で聞いてみよう」と思っていた頃、ちょうど玄関の開く音がした。「ただいま」という声と共に、祐一がリビングにやってくる。
「喜咲、ただいま……あれ、どうかしたのか?」
「ああ、祐一さん。実は、美世のスマホに冬紀君から連絡が……」
喜咲の言葉に、祐一は目を丸くする。しかし、祐一にも思いあたる節があった。先日、一人で道を歩いていた美世を見かけたとき、彼女の笑顔は冬紀と遊んでいた時のように嬉しそうだったのだ。
「やっぱり、冬紀君と会ってたんだな」
「ねえ、美世、大丈夫なのかしら」
「ああ……聞いてみたほうがいいかもな」
2人が不安げな顔で話し合っているところに、風呂から出てきた美世がやってきた。
「パパ、お帰り。……2人とも、すごい顔だけど、どうしたの?」
「ああ、美世」
祐一は美世に向き直ると、深刻そうな顔で彼女に尋ねる。
「まだ冬紀君と会ってるのか?」
美世の顔から、血の気が引いた。
「え……?」
「スマホに連絡が来てたみたいだけど」
「あっ……」
美世は慌ててスマホを手に取ると、両手で握りしめた。どうしよう。震えが止まらない。
「大丈夫なのか? 何か要求されたりしてないか?」
祐一に尋ねられ、美世は慌てて首を横に振る。しかし、両親からの疑いは晴れない。
「本当に平気なの? あなた、自分の意見を言える性格じゃないでしょう。お金のこととか、他のことも……何か頼まれて断れないなんてことない?」
「ああ、僕もそれが心配なんだ。美世、大丈夫なのか?」
両親の言葉を聞き、美世の胸にグラグラと熱いものがせり上がる。2人は自分達の何を見ているのだろう。自分が2人に意見を言えないのは、2人からのプレッシャーが大きいからだ。学校にいる時、本来の自分のままでいる時は、自分の意見をはっきり言えるし、嫌なものは嫌と断れる。
それに、冬紀は自分の嫌がることなんてしない。お金をせびってきたことだって一度もない。冬紀は、自分と一緒にいるために入試を勝ち抜いて特待生になってまで初風学園に来てくれたのだ。学費だって、バイトもして工面しているといっていた。そんな冬紀の努力も知らないくせに、どうして2人は冬紀をそんな目で見るのだろう。
「パパとママは勝手だよ!!」
美世の口から、怒鳴り声が飛び出した。
「冬紀のこと、何も知らない癖に……なんでそんな目で冬紀を見るの!? 冬紀は……お金のことも自分で解決しようとして、私と一緒にいることをパパとママに認めてもらうために、すごく努力してるんだよ!」
美世は、自分の反抗に驚き固まる両親を睨んで、続けた。
「私、もうパパとママに守られてるだけの子どもじゃないの。自分の意見だって言えるし、ちゃんと自分でものを考える事だってできる。そのうえで言うけど……私は冬紀と一緒にいたい」
「美世……」
「冬紀の努力が信じられないなら、創業祭のファッションショーを見に来てよ。私、冬紀が一生懸命作った服を着て歩くから。冬紀が頑張った証、ちゃんと見て」
美世の言葉を聞き、両親は顔を見合わせる。
「だ、だが……」
「ねえ……」
煮え切らない二人に対して、美世は大きな声で、はっきりと言い放つ。
「逃げないで」
娘に強い口調で申し出られ、両親は根負けして頷いた。
「分かった。見に行くよ」
「ええ。ママも、一緒に見に行くわ」
両親の言葉を聞き、美世はスマホを握る手の力を強くする。
(冬紀の努力、絶対に無駄にはしない。モデルとして、冬紀の服の魅力を最大限に引き出すんだ)
美世は心の中でそう誓った。
* * *
一方の冬紀はリビングで数学の教科書を読んでいた。ノートに一通り練習問題を解き終わったところで時計を見ると、時刻は夜8時半だった。
「あー、そろそろ終わろっかな」
そう言って伸びをしていると、芽生がホットミルクの入ったマグカップを冬紀の前に置いてくれたのだ。
「おつかれさま」
「ん、姉ちゃんありがと」
「冬紀、高校に入ってから勉強頑張ってるね」
「ああ、特待生だから、成績落ちるとまずいんだよね」
そう言って苦笑いしながら、冬紀はミルクをこくりと飲む。少し甘くて、優しい味がした。
「……もちろん、美世達に認められたいって言うのもあるけど」
「そっか。頑張って」
芽生は微笑みながら、自分のマグカップを持って冬紀の隣に座る。
「姉ちゃんもね。部活とか恋愛とか、頑張って」
冬紀にそう声を掛けられ、芽生は不思議そうな顔で首を傾げた。
「恋愛? 私が?」
「え? 前に蓮介さんが好きって言ってたよね?」
「蓮介先輩が……?」
芽生は顎に手を当てながら、俯く。
「そんなこと言ってたっけ……」
「え……?」
姉のおかしな様子を見て、冬紀は目を丸くした。
「言ってたよ。バドミントンで仲良くなるって言ってたじゃん。姉ちゃん、どうしちゃったの……?」
「冬紀の方こそ。私、蓮介先輩は尊敬してるけど、別に好きだなんて言ってないよ?」
「勉強のし過ぎで疲れてるんじゃない?」と笑う芽生を見て、冬紀は困惑する。先日、蓮介のことを話していた芽生はたしかに彼に恋していた。好きでもないのにあんなに赤い顔になれないだろう。真面目な芽生は嘘が下手なのだ。だが、今目の前にいる芽生も、無理して嘘をついているように見えない……。
「あ、小レポート出てるんだった。私、自分の部屋で課題やってくるね」
芽生は「おやすみ」と声をかけ、マグカップを片手に階段を上っていってしまった。冬紀はその後ろ姿を心配そうに見つめる。
(姉ちゃん、どうしたんだろ……まるで魔法にかかったみたいに恋心だけ忘れちゃうなんて……)
そこまで考えて、冬紀にふわりの顔が浮かぶ。そうだ。世界史によれば、かつてイギリスにいた魔法使いは世界中に散らばり、初風市にもふわりのように魔法を使える人間がいるのだ。だったら、彼女以外にも初風市に魔法使いがいて、その人物が魔法で芽生の恋心を奪った可能性だってある。
そうだとしたら、取り戻さなければ。だって、姉の大事な初恋なのだから。
(ふわりんに相談してみようか……)
冬紀はそう決めて、ふわりに『姉ちゃんが魔法掛けられたかも。助けてもらうことってできるかな?』とメッセージを送った。もう夜なので電話は控えたが、メッセージであれば見られるときに見てくれるだろう。
冬紀は少し息を吐いて、教科書を閉じてミルクを飲んだのだった。
* * *
佐藤家でも、そろそろ寝る支度をしようという頃。ふわりは美世にメッセージを返信した後、キッチンでニコニコしながらハーブティーを飲んでいた。向かい側の席その様子を見ていた母が微笑みながら「何か良い事でもあったの?」と尋ねてくる。
「え? ああ、うん。……ふふ」
「あら、何その反応? 分かった、テツ君と何かあったんでしょ」
「えへへ……実は付き合うことになって」
「あら!」
母は目を輝かせながら頬に手を当てる。今朝、付き合っているのか分からないと悩んでいたばかりなのに、もう解決したのか。案外、ふわりは行動力があるのかもしれない……今までは魔法を理由に消極的だったのをテツが変えてくれたのだろうか。そんなことを思って母は微笑む。
「良かったわね。あ、でもお父さんには内緒にしておこうかしら?」
「うーん、黙っててもいつかバレるだろうし、そのうち話すよ」
ふわりは頬をかく。
しばらくして、風呂から出てきた父がやってきた。
「お風呂空いたぞ……あれ? 蓮介は?」
「ああ、そういえばいないわね……」
「自分の部屋かな? 私見てくるよ」
ふわりはそう言うと、席から立ち上がって2階の蓮介の部屋に向かった。ドアの前まで来て、コンコンとノックする。しかし、中から返事は返ってこない。
(寝てるのかな……?)
そっとドアを開けると、デスクのパソコンを点けっぱなしにしたまま眠り込んでいる蓮介が目に入った。
(やっぱり寝てる……このまま寝てると風邪引いちゃうし、起こした方がいいかな?)
ふわりは蓮介の傍に寄り、彼の肩を叩く。
「れんにい、大丈夫?」
声を掛けるが、蓮介がおきる気配はない。よほど疲れているのだろうか。
(どうしよう……とりあえず、何か毛布でも掛けてあげようか)
ふわりはベッドから薄手の毛布を持ってきて、蓮介にかけた。そうだ、パソコンも消した方がいいよね……と、ふわりはマウスを持ってパソコンの電源を落とそうとして、目を丸くした。
「え……?」
画面いっぱいに表示されていた、11年前のイギリスの事件の新聞記事。その見出しには、こう書かれていた。
——ロンドンで魔導士殺害。かの英雄、アリス・スチュワート死亡。
ドクドクと心臓が嫌な音を立てる。浅くなる呼吸をなんとか落ち着けながら、ふわりは記事を読み進めていく。
——2007年3月27日、ロンドンの街中に発砲音が響いた。撃たれたのは、魔導士狩りを終息させ多くの魔導士の命を守った女性、アリス・スチュワートだ。アリスを撃ったのはLODAM副長官のアクセル・ノイマン。取り調べによると、アクセルは魔導士に私怨があり、魔導士狩りを終息させたアリスを強く憎んでいたようだ。アクセルの魔の手によって、アリスは58歳の生涯を閉じた。魔導士狩りは終息したものの、魔導士達にとって平和な時代が訪れるのは、まだ先なのかもしれない。
「おばあちゃん、殺されたの……?」
ふわりは声を震わせた。
「れんにいは知ってたの? なんでれんにいがこの記事を持ってるの?」
混乱し、ふわりは浅い呼吸を繰り返しながらへたり込む。
「おばあちゃん……嘘でしょ? 嘘だよね?」
上手く息ができない。苦しい。祖母のことは記憶にないはずなのに、彼女の死が殺害によるものだったと知った瞬間、全身から力が抜けた。信じたくなかった。祖母は殺されていいような人間だったのか? 祖母は殺されてしかるべき人間だったのか? 分からない。分からないはずなのに、心がそれを否定する。
おばあちゃんは、殺されるような人ではないのだと。
ふわりが蹲っていると、彼女が降りてこなくて心配になった父が部屋に入ってきた。
「ふわり!?」
父は蹲るふわりを見て慌てて彼女の体を支えた。
「おい、大丈夫か!?」
「お父さん……」
はあっ、はあ……と苦しそうな呼吸を繰り返しながら、ふわりは涙目を父に向ける。
「おばあちゃん、殺されたの?」
ふわりに問われ、父は目を見開いた。
父の声を聞いた母も、心配になったのか部屋にやってきた。母も蹲るふわりを見て慌てて彼女に駆け寄った。
「ちょっと、大丈夫!?」
「お母さん……」
3人の声が聞こえたのか、蓮介は目を覚ました。妹の浅い呼吸が耳に入り、蓮介は勢いよく後ろを見る。すると、苦しそうに蹲るふわりと、彼女を支える両親の姿が目に入った。
「ふわり……!」
駆け寄ろうとする蓮介を、ふわりは潤んだ瞳で見つめる。
「れんにい、教えて」
「え……?」
「おばあちゃんは、殺されたの?」
ふわりに尋ねられ、蓮介は目を見開いて硬直した。その反応を見て、両親も彼を信じがたいものを見る目で見つめる。
「……ばあちゃんは」
蓮介は声を震わせながら、絞り出すように答えた。
「殺されたんだ……」
涙が、蓮介の頬を伝った。
「嘘だよ……嘘だって言って」
「嘘じゃない。そうでしょ、母さん」
蓮介に問われ、母は目を伏せながら頷く。
「……そうだったんだ。知らなかったの、私だけだったんだ」
ふわりは胸を押さえながら、涙を零す。
「なんで、教えてくれなかったの……?」
「ふわりを、巻き込みたくなくて……」
「巻き込む? 何に? 家族のことなのに、巻き込むも何もないでしょ!? 何も知らずに幸せに生きていく方が、ずっと怖くて悲しいよ!」
ふわりは蓮介に怒鳴り声をぶつけた。
「私、自分の幸せばっかりで……今日だって浮かれてた。この11年間、おばあちゃんが殺されたことも知らずに、楽しく暮らしてた。11年前の3月ってことは、私だって生まれてたのに。なのに、LODAMの人も憎むことも、おばあちゃんの死を悲しむこともしてなかった……!」
泣きながら怒鳴るふわりを見つめた後に、蓮介は静かに口を開く。
「ふわりの分も、俺が憎むから大丈夫だよ」
蓮介の言葉に、3人は目を丸くする。驚いた様子の3人を見つめて、蓮介は告げた。
「俺が、ばあちゃんを殺したLODAMを消す」
「え……?」
「復讐するんだ。でも、絶対にみんなは巻き込まない。俺と、グリフィンさんとで……全部終わりにするから」
光の無い瞳でそう告げた蓮介を見て、3人は何も言えずに固まっていた。
重苦しい沈黙が訪れる。それを破ったのは母の声だった。
「そんな馬鹿なことやめなさい!」
母の怒鳴り声に、蓮介は目を見開く。母は蓮介を睨みつけながら、必死に訴えた。
「復讐なんてしても、おばあちゃんは喜ばないわ! あなたが過去に縛られずに未来を歩いて行けるように……あなたとふわりの心を守るために、おばあちゃんはあなた達の記憶を封じ込めたのよ!? その優しさを無駄にするの!?」
「全部忘れて自分だけ幸せになるのがばあちゃんの願いなの!? それじゃあ、ばあちゃんの無念は誰が晴らすんだよ!?」
蓮介は怒鳴り返した。
「母さんは、ばあちゃんが殺されたのに黙ってられるの!? それって……すごく薄情じゃないか!」
「やめろ蓮介!」
今度は父が大声を出す。
「母さんが、ばあちゃんが死んだときにどんなに悲しんでいたか、お前には分からないだろう!? 記憶を失くしたお前とふわりとは悲しみを分かち合うこともできなくて……行き場のない悲しみを抱えていた中で、ばあちゃんの気持ちを尊重して事件のことを黙って生きてきたんだぞ!? ばあちゃんと母さんの気持ちを無駄にするのか!?」
「っ……そんなの押し付けだろ」
蓮介は震える声で呟く。
「俺は嫌なんだよ。大好きなばあちゃんが殺されたのに、何もせずに生きていくのが……ふわりだってそうだろ?」
蓮介に問われ、ふわりは口ごもる。たしかに、祖母の死を忘れてのうのうと生きていくのは嫌だ。だが、復讐をすることが正しいとも思えない。なんと答えればよいか分からず、ふわりは黙り込んでしまった。
部屋に再度沈黙が訪れたその時、部屋の時計が音楽を奏でて9時を知らせる。
もう遅い時間だ。これ以上言い争いをしていたら、近所迷惑になりかねない。
「……今日はここまでにしましょう」
母が静かに立ち上がった。
「蓮介、あなたが何と言おうと、私は復讐に反対よ。でも、今日はこれ以上話し合いはしないわ」
母は静かに部屋を出ていく。それを見送って、父がふわりを支えて立ち上がらせた。
「蓮介もふわりも、もう今日は休みなさい。……まだ話したいことがあるなら、明日以降に聞くから」
父はそう言うと、ふわりを促して部屋から出ていく。部屋を出る直前、ふわりの視界に蓮介の悲し気な顔が映った。
(れんにい……)
ドアが閉まる。その後、ふわりは父に連れられて、自分の部屋に戻っていった。
ベッドに横たわり、天井を見上げる。
(……私は、どうしたらいいんだろう。おばあちゃんが殺されたのは悲しいし、これ以上それに知らん顔をして生きるのも嫌だ。でも、復讐が正しいとも思えない……。魔法は、おばあちゃんやLODAMの人みたいに、人を不幸にさせてしまうものなのかな。れんにいが復讐に使うように、人を傷つけるものなのかな。……現実はそんなに甘くなくて、魔法は人を笑顔にするものだっていうのは、ただの夢物語なのかな……)
様々な思いがよぎった。
テツと出会ってから、ふわりは自分の魔法が好きになれた。彼がそう言ってくれるように、魔法は人を笑顔にするものだと信じて疑わなかった。だが……本当にそうなのだろうか。
――テツ君なら、この疑問にどんな答えを出してくれるだろう。
テツ君に会いたい……。
彼の笑顔を思い浮かべているうちに、ふわりは眠ってしまった。




