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君の魔法が僕の世界を変えていく。  作者: 月島
第一章 恋と魔法と始まりの日々
18/55

17 林間学校②

 炊事後、昼休みを挟んでウォークラリーが始まった。今回のウォークラリーは、登山してきた道とは反対側にある遊歩道を班ごとに散策し、各チェックポイントにあるお題をクリアしてゴールするのが目的だ。

 A組の生徒達も全員出発し、いよいよふわり達のB組3班の番がやって来た。3班は先程まで休んでいたオルラも復帰し、全員揃っている。


「班長に解答用紙と地図を渡しておきますから、これを見てチェックポイントを回って下さいね。制限時間は夕方5時30分までです」


 教頭はそう言うと、桂にお題の解答用紙と遊歩道の地図を渡した。


「分かりました。みんな、行こう」


 桂の声に頷き、ふわり達は遊歩道の道へと入っていった。


「お題ってどんなのが出るのかな?」


 ふわりがワクワクしながら尋ねるのに、テツも笑顔で答える。


「楽しみだね」

「うん!」


 仲良さそうに並んで話すテツとふわりを確認して、桂は溜息をつく。


(2人が元気になったのは良かったけど、なんか複雑だ……)

「桂君、顔に出てますよ」


 突然横から声が返ってきて、桂はビクリと肩をすくめた。隣を見ると、オルラがニコニコとこちらを見て笑っていた。


「急に驚かすなよ……」

「驚かせるつもりはありませんでしたが、ビックリさせたのなら謝ります」


 悪びれる様子のないオルラを見て、桂は頭をかいた。


「その様子、すっかり元気って感じだな……」

「桂君からご飯を貰ったお陰です」

「そうかよ。……まあ、元気になったなら良かった」


 親しげに話すオルラと桂を、美世は後ろから見て微笑む。

 5人がしばらく歩くと、前に屋根のついたテーブルのある休憩スペースが見えてきた。

 地図を確認すると、そこは1つ目のチェックポイントになっている。


「1つ目はここだな」


 5人はテーブルの上にある紙を確認した。するとそこには「班員の将来の夢を書いて下さい」とある。


「……」


 こんなのがお題でいいのか? とその場にいた全員が首を傾げた。


「林間学校で出るお題がこれなの……?」


 不思議そうな顔をするオルラの隣で、ふわりは慌てて口を開く。


「もしかしたら、班員の親睦を深めようとしてるのかも! 私達、意外とお互いのこと知らないし……」


 ふわりの言葉を聞いて、桂と美世もなるほどと頷く。


「じゃあ、ちゃちゃっと話して次行こ。私から話すね」


 美世は咳払いすると、胸に手を当てて口を開いた。


「私の夢は、ダンサーになること。世界で活躍できるダンサーになって、両親に追いつきたい」


 美世の夢を聞き、全員がパチパチと拍手をする。桂は「安住はダンサー」と書きながら、彼女に尋ねた。


「両親に追いつきたいっていうのは?」

「ああ、うちの親、2人とも芸能人だから……2人に胸を張れる娘になりたいなって」


 そうだ。2人に認めて貰えない限り、きっと冬紀と一緒にいることも許されない。美世は決めたのだ。冬紀が努力しているように、自分も両親に認められるように努力するのだと。

 いつまでも、2人に守られているだけの子どもではないことを、証明したいのだ。

 真剣な美世の顔を見て、桂は微笑む。


「そっか。頑張れよ」

「ありがと。それで、桂は何になりたいの?」

「俺は……」


 桂は少し迷ったように宙を見上げる。

 好きなものや、本気なものを挙げるとしたら、やはりバレーボールなのだが……。

 ズキリと、痛まないはずの右足が痛くなって、桂は歯を食いしばった。

 沈黙する桂を見て、美世が不思議そうに首を傾げる。


「桂、どうかした?」

「ああ、ごめん。警察官かな。父さんも警察官だったんだ。色々あったけど、やっぱり人を助ける仕事に就きたい」

「へー、確かにあんたに向いてそう」


 美世に微笑まれ、桂は胸中のモヤモヤに気付かないふりをしながら「ありがとな」と微笑む。

 誰も桂の小さな嘘に気付くことはなく、会話は進んでいった。


「ふわりの夢は?」


 美世の声と共に、テツとオルラもふわりの方に注目した。ふわりはちらりとテツの顔を見ると、顔を赤くしながら俯いて小さく呟く。


「お……お嫁さん……かな?」


 その答えを聞き、テツは表情を強張らせた。


(……もしかして、好きな人とかいるのかな)


 そんな疑問が、胸に冷たく刺さる。


「佐藤、それ用紙に書いて大丈夫か?」


 桂が心配そうに尋ねると、ふわりは慌てて手をブンブンと振った。


「や、やっぱり変える! えっと……周りの人を笑顔にできる魔法使い!」

「それも大丈夫なのか? 魔法使いバレするぞ」

「うう、確かに……じゃあ、実家のカフェを繁盛させる、で……」

「了解」


 テツは、恥ずかしそうに項垂れるふわりから目を逸らして俯く。


(……佐藤さんの夢。それが叶ったら、僕はどうしたらいいんだろう)


 ふわりが知らない誰かと結婚式を挙げている様子を想像して、テツは唇を噛んだ。


(きっと、素直に喜べないな)

「テツ君?」


 ふわりに声を掛けられ、テツはハッとして彼女の方を見た。


「テツ君の夢も教えて?」


 ふわりに優しく尋ねられ、テツは笑顔を作った。


「う、うん。えっと……そうだな……」


 いつも目の前の人間関係のことで頭がいっぱいで、将来のことなど考えていなかった。常に母の言葉に従って、環境に流されるままに生きてきたため、自分の意思がよく分からない。


(何て答えよう。無難に会社員とか……? でも本当にそれでいいのかな)


 テツの表情が暗くなる。必死に頭を悩ませているが、上手い言葉が出てこない。


(駄目だ。早く答えないと……まだ他にもチェックポイントに行かないといけないのに)

「テツ君?」

「あ、ご、ごめん……」


 焦りと罪悪感でいっぱいになっているテツだったが、そんな彼にふわりは優しく笑うのだった。


「テツ君、ゆっくりでいいよ」


 その、彼女の優しい笑顔を見て……テツの視界が明るくなった。

 ふわりの優しい笑顔は、いつも自分を救ってくれる。ふわりの優しい思いやりは、いつも自分を安心させてくれる。

 なんで、こんなにキラキラして見えるんだろう。

 そんなの、簡単なことだ。

 

 ──佐藤さんが好きだ。ずっと一緒にいたい。


 テツは初めて、自分の本当の気持ちを自覚した。

 途端に、顔がぶわっと赤くなる。

 テツの真っ赤な顔を見て、美世と桂は目を丸くした。


(まさか、自覚した……?)

「あ……えと……」


 テツは頭をかきながら俯くと、小さく呟く。


「まだ、考え中で……」


 テツのか細い声を聞いて、ふわりはきょとんと首を傾げる。


(夢が決まってないのって、そんなに恥ずかしいことかな……?)


 2人の反応を黙って見ていたオルラだったが、やがて小さく笑った。


(ちゃんと、自分の正直な気持ちに気づけたんですね)


 それだと、オルラ自身の使命の妨げになってしまうが……オルラはそれでも良いような気がした。

 自分のことを知ろうとしてくれたふわり。自分を心から心配して、助けてくれたふわり。ふわりは、自分に初めて友達の優しさを感じさせてくれた。彼女が幸せになれない世界は、きっと間違っている。


(佐藤さん。あなたにさっき助けて貰ったことへの感謝、私も行動で示させて貰いますよ)


 オルラはふわりの方を見て微笑み、「私の番ですね」と口を開く。


「私の夢は、幸せにしたい人を幸せにすることです」


 オルラの言葉を聞き、ふわりは彼女に尋ねた。


「幸せにしたい人? それって誰?」

「私を大事にしてくれる人達のことです」


 あなたのようにね。オルラは心の中でそう呟き、柔らかく微笑んだ。

 その温かい笑顔を見て、ふわりは自分に問いかけた。


(オルラちゃん、本当はいい子なのかな……?)


 不意に、昨日の桂の言葉が蘇る。


(寂しがり屋な、普通の女の子……か。私、オルラちゃんのこと誤解してたのかも。もしそうなら……ちゃんと謝って、友達になれないかな)


 やがて、桂が全員分の将来の夢を書き終え、「よし、じゃあ次行くか」と声を出す。

 ふわり達はそれに頷き、次のポイントへ歩き出した。

 そんな中、オルラはテツに近づき、こそりと告げる。


「言葉にしないと伝わりませんよ」

「あ……」


 顔を赤くして俯くテツを見て、オルラはクスリと笑った。


「まあ、応援してあげます」

「え……?」


 目を丸くするテツににこりと微笑み、オルラは桂の隣へ歩いて行った。


* * *


 3班は順調にチェックポイントを回り、残りあと1つというところまで来た。桂が時計を確認すると、現在時刻は夕方4時55分。なんとか集合時間には間に合うだろう。


「桂君、あと1個だね」


 テツの言葉に桂も頷く。


「ああ、そうだな。えっと、最後のチェックポイントは……あの丘になってるとこの休憩スペースか?」


 桂が指差した方向は、たしかに他の場所より高い丘になっていた。歩いて近づいてみると、休憩スペースの向こうに落下防止の柵がある。

 ふわりは柵の前に来てみた。すると、澄んだ夕暮れの空が遠くまで広がっており、山の木々が柔らかく橙色に染まっているのが目に入った。


「うわぁ、綺麗な景色……」


 ふわりが目を輝かせる横で、テツも嬉しそうに目を細める。


「うん。本当に、綺麗だね」


 2人が景色を見ている脇で、桂がチェックポイントのお題を確認する。すると、用紙には「集合写真を撮って下さい」と書いてあった。


「集合写真か。よし、撮るか」


 桂はそう言うと、スマホを取り出して内カメをオンにする。


「ほら、テツと佐藤もこっち来い」

「うん!」


 2人も桂のすぐ後ろに集まった。美世もそれに続いてカメラの中に収まる。

 一方で、オルラは遠慮がちに脇の方に寄っていた。


(私は、ここに写っていいのかしら。こんな友達とするみたいな幸せなこと……これ以上受け取っていいのかしら)


 そう思うのも無理もない。だって、オルラはふわりとテツの恋路を邪魔しようとしていたのだ。

 この場にいるほとんどのメンバーが、それを知っている。

 本当だったら、もっと拒絶されたっておかしくないのだ。

 罪悪感が胸を占めて、オルラはこれ以上の幸せを受け取るまいとしていた。

 しかし、この場にいる誰も、彼女を拒絶しようとは思っていなかった。


「オルラ、もっと寄れ」

「え……でも」

「何か気にしてんのか? 大丈夫だから早くカメラの中入れ」


 桂に何でもないように言われ、オルラは遠慮しながら半歩内側に寄る。しかし、カメラの中にはまだ入っていなかった。

 そんなオルラの様子を見たふわりは、彼女の手を取り、微笑む。


「オルラちゃん、こっち」

「あ……」


 ふわりに引き寄せられ、オルラは顔を赤らめながら目を丸くした。

 驚いた顔のオルラに、ふわりは明るい笑顔を見せる。


「ほら、笑顔!」


 ふわりの笑顔につられて、オルラの表情も明るくなる。


(本当に、温かい人だわ。佐藤さんって)

「撮るぞ。3、2、1……」


 カシャッとシャッター音がして、明るい笑顔の5人が写真の中に収まった。


* * *


 無事にウォークラリーを終えたふわり達は、食堂で夕食をとっていた。

 夕食は特に席が決まっておらず、クラスも関係なく自由に座っていいことになっている。

 そんな中、ふわりと美世とオルラは3人で固まって食べていた。夕食のメニューはカレーライスだ。


「あっ、みよちん人参避けてる!」

「うっ……後でちゃんと食べるからいいでしょ」

「ほんとかなぁ……オルラちゃん、どう思う?」

「ふふっ、こっそり残すつもりだったんじゃないですか?」

「もう、オルラさんまで……分かったよ。今食べるから」


 渋い顔をしながら人参を咀嚼する美世を見て、ふわりとオルラはニコニコと笑っていた。

 一方で、桂とテツも一緒に夕食をとろうと席を探していた。

 しかし突然、2人の元に桂を見つけたバレー部の生徒達がやって来たのだ。


「桂ー、バレー部で次の練習試合の作戦会議しながら食べようって話してるんだけど、来てくれないか?」

「あー、ミーティングすんのか……ごめんテツ。この埋め合わせは今度するから」


 申し訳なさそうに頭を下げる桂に、テツは優しく笑う。


「大丈夫だよ。また今度、ご飯一緒に食べよう」

「ああ、悪い」


 桂は短く謝ると、バレー部の仲間の元へと歩いて行ってしまった。

 その背中を見送り、テツは辺りを見渡す。


(どうしようかな。とりあえず座って食べよう)


 テツは長テーブルの隅に空席を見つけ、そこに向かって歩いて行く。そんな彼の背中に、声を掛ける生徒がいた。


「テツ!」


 振り返ると、冬紀がカレーを手に立っていた。


「あ、八坂君」

「1人? もし良かったら一緒に食べない?」

「うん。じゃあ、そこの端が空いてるから、行こう」


 テツは冬紀と連れだって、長テーブルの隅に座った。

 2人でカレーを食べ進めていると、ふと冬紀がテツに笑いかけた。


「なんか、こうやって2人で何か食べるの、ふわりんのカフェ行ったとき以来じゃない?」

「んっ」


 ふわりの名前を聞き、テツは動揺でカレーを喉に詰まらせてしまった。


「っ……! ぐ……」

「うわっ! テツ、水! 水飲んで!」


 悶絶するテツに、冬紀が水の入ったコップを手渡す。テツは水をゴクゴクと飲んでカレーを押し流すと、深く息を吐いた。


「死ぬかと思った……ビックリした……」

「うん、オレもビックリしたよ。……オレ、なんか変なこと言っちゃったかな?」

「あ、ううん! 変なことは言ってないよ。ただ、僕が動揺しただけっていうか……」


 テツは頬をかきながら照れ笑いする。その笑顔を見て、冬紀は直感した。


「ふわりんと何かあったでしょ」

「な、何もないよ! いや、あったにはあったんだけど、それはもう解決したっていうか……」


 赤い顔で必死に首を振るテツに、冬紀はニヤリと笑う。


「恋でもしちゃった?」


 冬紀に尋ねられ、テツは赤面しながら目を伏せる。


「……さっき、気付いたんだ。でも、遅すぎたと思う。佐藤さん、多分、好きな人がいるから」


 テツの言葉を聞き、冬紀は思わず眉間を押さえた。


(カフェでの反応を思い出す限り、ふわりんが好きなのは君なんだよな……)


 その言葉を喉の奥に押し込め、冬紀はにこりと笑う。


(とはいえ、オレがバラすのは粋じゃないよね)

「テツ、そんな簡単に諦めるなんてもったいないよ。せっかく好きって気付けたんだから、気持ちを伝えてみたら?」

「……そんなことして、佐藤さんを困らせないかな?」

「でも、何も言わずに諦めたら、きっと後悔するよ。だって、そんなに顔赤くするぐらい好きなんだから」

「う……」


 図星をつかれて苦笑いするテツに、冬紀は微笑んで続ける。


「相手のこと考える気持ちは分かるけど、自分の気持ちに嘘つく必要はないんだよ」


 嘘をつく必要はない。その言葉を聞いて、昼間の桂とのやり取りを思い出す。


(気持ちを正直に話した後、桂君ともっと仲良くなれた。なら、きっと佐藤さんも……)


 テツの表情が変わったことに気が付き、冬紀は安心した顔でテツの肩をポンポンと叩いた。


「じゃ、早速誘ってきたら? この後の星空観測、たしか自由に見てよかったはずだからさ」

「……うん。八坂君、ありがとう」


 テツはしっかりと頷くと、席を立ってふわりの元へ歩いて行った。

 その後ろ姿を見送りながら、冬紀は小さく呟く。


「オレも頑張んなきゃな」


* * *


 テツは広い食堂の中からふわりを見つけ、迷わずに歩いて行く。

 心臓がバクバクと音を立てている。顔が熱い。断られたらどうしようという不安もある。でも、それでも……せっかく踏み出せた1歩を無駄にしたくなかった。


「佐藤さん!」


 テツに声を掛けられ、ふわりは彼の方を見た。


「テツ君?」


 不思議そうにこちらを見つめるふわりを見て、テツは一瞬息をのんだ。

 ふわりには他に好きな人がいて、もしかしたら自分じゃなくて他の人と星を見たいかもしれない。しかし……もう自分に嘘はつきたくなかった。

 テツは意を決して口を開いた。


「星空観測、僕と一緒に見てくれませんか……!」


 テツの誘いを受け、ふわりは顔を真っ赤にする。


(テツ君からの、お誘い……! あ、でももしかしたら、班のみんなでってことかも……)

「班のみんなでってことかな? 桂君とかみよちん達も一緒なんだよね?」


 ふわりが笑顔を作りながら尋ねるのを見て、テツはゆっくりと俯き……小さく呟く。


「ふ、2人で……2人だけでって思ってたんだけど」


 テツの言葉を聞き、ふわりは赤い顔で固まってしまった。


(ふ、2人きり……? テツ君と、2人きり……?)


 ショート寸前の頭で必死に状況を整理しようとしながら、ふわりは震える声で尋ねる。


「私と2人でいいの……?」

「うん。……佐藤さんと、2人がよくて」

「あ……、そう、なんだ」


 照れて何も言えなくなってしまっているふわりを見かねて、美世が咳払いした。


「私、ダンス部の友達と星空観測するから。木村、ふわりのことよろしく」

「では、私もクラスの子に混ざって見ます。テツ君、佐藤さんと一緒に見ていいですよ」


 2人に背中を押され、テツは赤面しながらもふわりを見つめて尋ねた。


「佐藤さんも、それでいいかな?」


 それに、ふわりも顔を赤くして頷く。


「うっ、うん! 一緒に見よう!」


 ふわりの答えを聞き、テツは嬉しそうに微笑む。


「ありがとう。じゃあ、後で玄関で待ち合わせよう」

「うん! 後でね!」


 テツはふわりに笑顔を向けると、冬紀の元へ戻っていった。

 テツが行ってしまった後、ふわりは両手で顔を覆って俯く。


「私の心臓、もたないかも……」

「ふわり、耐えな」

「むりぃ……」

「ふわり、木村も多分すごい勇気出して声かけたんだと思うよ。だからさ、しっかり向き合ってきなよ」


 美世に言われて、ふわりは先程のテツの顔を思い出す。


(真剣な顔だったな……でも、ちょっと赤かった。初めて見たかも、あんな顔)


 指の隙間から、ふわりの赤い顔が覗く。


(テツ君の気持ち……ちゃんと、聞かなきゃ)

「……うん。私、頑張る」


 ふわりの照れ顔を見て、美世もオルラも優しく微笑んだ。

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