7-6 技術進化による制度の陳腐化
7-6 技術進化による制度の陳腐化
派遣制度が誕生した当初、その核心的役割は「労働力へのアクセス問題」を解決することにあった。企業は必要なときに人を確保できず、求人情報の流通は遅く、採用には時間とコストがかかっていた。派遣会社はその摩擦を吸収する存在だった。
しかし現在、その前提条件は大きく変化している。
SNSは個人と企業を直接結びつける。マッチングアプリや求人プラットフォームは、条件検索によって即時に候補者を提示する。即時雇用型のサービスでは、数時間単位で人材を確保できる仕組みすら存在する。
かつての「労働力は必要なときに手に入らない資源」という前提は、技術によって大幅に緩和された。
情報流通の遅さは消えた。
応募のハードルは下がった。
採用プロセスは短縮された。
この変化は静かである。しかし構造的には決定的である。
派遣制度の本来の存在理由は、「アクセスの非効率」を解消することだった。だがその非効率が技術によって解消されたとき、制度の役割は相対的に縮小する。
にもかかわらず、制度そのものは残る。
ここで矛盾が生まれる。
制度は消えない。法制度は慣性を持つ。既得権も関与する。企業の業務フローも固定化される。その結果、本来の機能を終えた制度が、形を変えながら存続する。
この段階で、派遣制度は「アクセスインフラ」から別の役割へと移行し始める。
もともと仲介のために存在していた構造が、労働市場の中心的経路として固定化される。技術が直接接続を可能にしているにもかかわらず、間接経路が標準化される。
これは悪意ではない。
企業は慣れた仕組みを使う。派遣会社は既存の業務を継続する。労働者も登録済みのルートを使う。合理的選択の積み重ねが、制度の存続を支える。
しかし構造的には、役割を終えたはずの制度が、依然として大きな比重を占める状態が続く。
技術進化が制度を無効化するとは限らない。むしろ制度は技術変化に追いつかないことがある。そのとき、制度は本来の目的から乖離し、新しい機能を帯びる。
ここで重要なのは、派遣制度を否定することではない。
問題は、存在理由が変化したにもかかわらず、その変化が制度設計に反映されていない点にある。
アクセス問題が解消された社会で、派遣制度はどのような役割を果たすのか。
この問いを避けたまま制度が存続するとき、構造的な歪みが生まれる。次節では、その変質がどのような形で現れるのかを分析する。




