6-5 立法権を動かす唯一の手段
6-5 立法権を動かす唯一の手段
ここまでで、制度変更の主体は立法にあることを確認した。
市場ではない。企業でもない。行政でもない。
制度は法律によって存在し、法律によってのみ変更される。これは思想ではなく手続きの問題である。
では、その立法権をどうやって動かすのか。
この問いに対して、多くの人が理想的な答えを想像するかもしれない。社会的議論が深まれば変わるのではないか。専門家の知見が共有されれば政治も動くのではないか。世論が盛り上がれば自然に制度は修正されるのではないか。
しかし現実の政治は、そこまで単純ではない。
議論は影響を与える。世論は圧力になる。だが、それ自体では立法権を動かさない。
立法権は選挙によって構成されている。
ここが出発点であり、同時に結論でもある。
民主主義の制度設計において、立法府の構成は選挙によって決まる。どれほど優れた政策提言があっても、どれほど説得力のある分析があっても、選挙を経由しなければ制度変更の決定権には到達しない。
これは理想の話ではない。
現実の制度の話である。
しばしば「政治は信用できない」「投票しても変わらない」という声が聞かれる。そう感じる理由は理解できる。政治は不完全であり、期待どおりに動かないことも多い。
だが、制度変更の入口が複数あるわけではない。
現実には一つしかない。
選挙である。
ここで誤解してはならないのは、選挙が万能であるという主張ではないという点だ。選挙は不完全であり、短期的な人気や情報の偏りに影響される。しかし、それでもなお、制度変更を強制できる唯一の正式な経路として存在している。
つまり、「完璧だから選挙しかない」のではない。
「他に手段が存在しないから選挙しかない」のである。
この違いは重要だ。
制度を変えたいと考えたとき、多くの人は別の解決策を探そうとする。企業の自主努力、行政の裁量、社会運動、世論形成。これらはすべて意味を持つ可能性がある。しかし、最終的に制度が変わる瞬間は、立法府の構成が変わり、法律が改正されたときだけである。
ここまで来ると、責任の所在は明確になる。
制度を維持するのも、制度を変えるのも、立法を通じてしか実現しない。そして立法を構成する主体は選挙によって決まる。
本書は特定の政党や政策を推奨しない。
行っているのは、経路の確認だけである。
制度を変えるなら、選挙を経由するしかない。
それ以外の方法は、存在しない。
では、この結論は何を意味するのか。本書全体の整理として、最終的な到達点を次で固定する。




