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少子社会の設計図  作者: カトーSOS


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6-2 企業は制度を前提として行動する

6-2 企業は制度を前提として行動する



市場が制度を修正しないのであれば、次に期待が向かうのは企業である。


企業が変われば社会も変わる。経営者の意識が変われば雇用も改善する。長期的な視点に立つ企業が増えれば、不安定な働き方は自然に減っていくのではないか。


こうした期待は、ある意味で理解できる。企業は社会の中で大きな影響力を持ち、雇用の現場に直接関わっているからだ。


しかし、ここでも本書は結論を明確にしておく必要がある。


企業は制度を変えない。


なぜなら、企業は制度の設計者ではなく、制度の利用者だからである。


まず整理しなければならないのは、企業の本質的な役割だ。企業は利益を最大化する主体である。これは倫理的な評価ではない。企業という仕組みの定義そのものだ。利益を出し続けなければ存続できない以上、合理的な選択を行うのは当然の帰結である。


ここで重要なのは、「合理的」という言葉の意味である。


もし制度の中に、雇用責任を軽減できる仕組みが存在するなら、それを使うことは合理的である。派遣制度が合法であり、コストを調整しやすく、景気変動への対応を容易にするならば、企業がそれを利用することは自然な行動だ。


これは善悪の問題ではない。


制度がそう行動させているのである。


しばしば議論の中で、「企業のモラルが低下した」という説明が持ち出される。しかし、この説明は問題の本質を外している。企業が突然非倫理的になったわけではない。制度が変わり、合理的な選択の方向が変わっただけである。


企業に道徳的な自己制限を期待する議論は、一見すると魅力的だ。だが論理的には成立しない。競争環境の中で、ある企業だけが制度を使わずにコストを背負い続ければ、競争に敗れる可能性が高まる。結果として、その企業は市場から退出する。


つまり、個別企業の善意では構造は変わらない。


むしろ制度が存在する限り、制度を利用する企業が残り、利用しない企業が淘汰される方向へ圧力が働く。


ここで責任の所在を明確にしておく必要がある。


企業が悪いのではない。


制度が企業にその選択をさせているのである。


だからこそ、企業に制度変更を期待するのは論理的に誤っている。企業は制度を前提として行動する主体であり、制度そのものを変更する権限も動機も持たない。


制度が変われば、企業の行動も変わる。


しかし、企業が制度を変えることはない。


この順序を見誤ると、議論は感情論へと流れ、解決の主体を見失う。


では、市場でも企業でもないとすれば、制度を維持している装置はどこにあるのか。


次では、行政という存在を整理する。

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