5-6 派遣は「今すぐ」止められる
5-6 派遣は「今すぐ」止められる
ここまで読んできた人の中には、こう思う人もいるかもしれない。
理屈は分かった。しかし現実には無理ではないか、と。
制度は巨大であり、社会は複雑であり、一つの仕組みを止めれば混乱が起きるのではないか、と。
だがここで確認しなければならないのは、派遣は自然発生した市場現象ではないという事実である。
派遣は法律制度である。
法律によって認められ、法律によって拡大され、法律によって維持されている。
つまり、法律一本で止められる。
これは比喩ではない。
派遣は「市場が勝手に作った構造」ではない。立法によって許容された制度であり、その前提がなければ存在できない仕組みである。したがって、その前提を撤回すれば構造は変わる。
ここで重要なのは、財源調整は不要だという点だ。
消費税の議論であれば、代替財源が必要になる。税率を下げれば、どこかで補填しなければならない。しかし派遣は違う。制度の廃止に新たな財源は必要ない。
また、巨大な新制度設計も必須ではない。
雇用は元々、直接雇用が基本形である。派遣という中間構造を除去することは、新しい制度を作るというより、例外を閉じる行為に近い。
もちろん、移行期間は必要になるだろう。急激な変更は混乱を招く。段階的な制限、業種ごとの整理、一定期間の猶予措置。設計は可能である。
だがここで明確にしておきたい。
派遣を止めること自体が少子化対策なのではない。
それは、少子化を生み出している装置を止める行為である。
装置を止めることと、結果を直接回復させることは同じではない。派遣を廃止したからといって、翌年に出生数が回復するわけではない。
しかし、不安定さを制度的に固定する仕組みを残したまま、少子化対策を語ることは論理的に矛盾している。
ここまでの議論で確定したのは四点である。
派遣は公共目的を持たない。成長にも安定にも寄与しない。人生設計を不可能にする。そして法律制度である。
であれば、止められる。
「難しい」と「不可能」は違う。
止められないのではない。止めていないだけである。
では、なぜ止まらなかったのか。
三十年にわたって拡大し続けたこの制度は、誰によって維持されてきたのか。
そして、止める主体は誰なのか。
その問いを扱うのが、最終章である。




