5-3 派遣は財源にも成長にも寄与しない
5-3 派遣は財源にも成長にも寄与しない
5-2では、派遣には公共目的が存在しないという点を整理した。では次に、よく語られるもう一つの主張を確認する必要がある。それは「派遣は経済に必要であり、成長や財源に貢献している」という見方だ。
この主張は直感的には理解しやすい。
企業が柔軟に人材を活用できれば、効率が上がる。効率が上がれば生産性が向上し、経済は成長する。経済が成長すれば税収も増える。したがって、派遣は社会にとって必要である。おおまかには、こうした論理で語られることが多い。
しかしここでは、印象ではなく構造を見る。
まず財源という観点から考える。
財源とは、安定した税収を意味する。国家が社会保障や公共サービスを維持するためには、継続的に予測可能な税収が必要になる。その中心は所得税と消費税であり、いずれも可処分所得と密接に関係している。
派遣労働は、雇用の安定性を弱める。
収入の継続性が低くなれば、所得税収は安定しない。また収入が抑制されれば、消費そのものも伸びにくくなり、消費税収の基盤も弱くなる。つまり、個人側の所得が安定しない構造は、長期的な税収の安定とは相性が悪い。
次に成長という観点で見る。
短期的には、派遣は企業にとって合理的である。必要な時に必要な人数を確保できる。固定費を削減できる。これは企業単位で見れば効率的な選択だ。
しかし社会全体として見た場合、その効率は必ずしも成長に直結しない。
長期的な成長には、技能の蓄積が必要になる。経験が積み重なり、熟練が生まれ、組織の中でノウハウが共有されることで、生産性は上がる。しかし派遣は、雇用の継続性を前提としていない。短期契約が前提となる環境では、企業も労働者も長期的な技能投資を行いにくい。
結果として、社会全体の技能蓄積は弱くなる。
さらに、将来の不安定さは消費行動にも影響する。将来が予測できないとき、人は支出を抑える。住宅、教育、子育てといった長期的な支出は慎重になる。この傾向が広がれば、内需は伸びにくくなる。
つまり、派遣は短期的な効率を高める可能性はあるが、長期的な成長基盤を強くするとは限らない。
ここで強調したいのは、企業の合理性と社会の合理性は必ずしも一致しないという点である。
企業にとって便利な制度が、社会全体の安定や成長に寄与するとは限らない。むしろ、不安定な雇用が広がれば、将来への投資は減少し、人口構造にも影響を与える。
ここまでの整理で見えてくるのは、派遣が財源を支える制度でもなく、長期的な成長を支える制度でもないという構造だ。
では、それでもなお派遣が拡大し続けた理由は何なのか。
次では、その問いに踏み込むことになる。




