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少子社会の設計図  作者: カトーSOS


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4-6

4-6 本章の結論と次章への接続



ここまでで、第4章の役割は終わる。


第3章までで、少子化は原因ではなく結果であるという前提はすでに固定されていた。そして、その結果を止めている直接要因が「将来予測不能な貧困」であることも確認してきた。本章では、その不安定が偶然でも自然現象でもなく、制度として作られていることを具体的に示してきた。


まず雇用は、安定から流動へと移された。これは単なる時代の変化ではない。効率化という名のもとに、企業側のリスクを軽減する方向で制度が設計された結果である。そしてその反対側で、雇用継続の保証は個人に移された。不確実性は分散されたのではなく、むしろ弱い立場へと集中した。


次に、派遣労働という仕組みの性質を見た。派遣は善悪で語るものではない。だが構造として、雇用責任を分離し、責任の所在を曖昧にする装置であることは否定できない。使用者と雇用者が分断されることで、長期的な関係が成立しにくくなり、将来計画を立てる基盤は弱くなる。これは個人の努力不足ではなく、制度設計の帰結である。


さらに、消費税という税制の性質にも触れた。ここでも善悪の議論は行っていない。重要なのは構造だ。消費税は収入に関係なく徴収されるため、生活の支出側を固定化する。とくに低所得層においては、日常生活の中で将来予測の余地が削られる。支出の見通しが立てにくいということは、未来の選択を慎重にせざるを得ないということだ。


そして本章の核心は、この二つが結合したときに現れる状態である。


派遣によって収入が不安定化する。消費税によって支出が固定化される。この組み合わせは、可処分所得を常に圧迫する。収入が上下する一方で、生活コストは確実に存在し続ける。結果として、貯蓄は積み上がりにくくなり、長期的なリスクを引き受ける余地は消えていく。


ここで重要なのは、人々が非合理な行動をしているわけではないという点だ。むしろ逆である。将来が予測できない状況では、不可逆的な選択を避けることは合理的な判断になる。結婚という長期契約を躊躇し、出産という取り返しのつかない決断を先送りするのは、個人の問題ではなく環境への適応である。


つまり、結婚しないのではない。できないのである。子どもを望まないのではない。望んでも選べないのである。


ここまでで結論は固定される。


派遣と消費税は、それぞれ単独では説明されてきた制度である。しかし結合したとき、それは強力な不安定装置として機能する。そしてその装置が、結婚と出産という長期選択を合理的に回避させている。


不安定は自然に生まれたのではない。制度として作られた。


少子化は、その必然的帰結である。


では、この装置は誰のために設計されたのか。


なぜ長期間、修正されなかったのか。


誰が安定を得て、誰が不確実性を引き受けさせられてきたのか。


次章では、この問いから始める。


制度は、誰を守ってきたのか。

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