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少子社会の設計図  作者: カトーSOS


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4-5

4-5 合理化は成功したが、生活は合理化されなかった



ここまで見てきたように、雇用の流動化と消費税という仕組みは、それぞれ単体では合理的な理由を持って導入されてきた。


企業の側から見れば、人件費を固定費から変動費へ移すことは合理的である。市場の変化に柔軟に対応できる。景気の波に合わせて体制を調整できる。


国家の側から見れば、消費税は安定した税収を確保する装置である。所得や企業収益に依存せず、広く薄く徴収できる。財政の予測可能性を高める。


つまり、制度としての合理化は成功している。


問題は、その合理化がどこまでを対象としていたのかである。


企業は合理化された。国家財政も合理化された。しかし、生活は合理化されなかった。


むしろ生活の側は、不確実性を引き受ける側に回った。


雇用の流動化は、企業にとってはリスク分散になるが、個人にとっては収入の予測可能性の低下として現れる。契約更新のたびに将来が揺れる。収入は働いた分だけ得られるが、継続は保証されない。


一方で消費税は、生活の支出に恒常的に作用する。収入が減っても、生活に必要な消費は消えない。その消費に対して税がかかり続ける。


結果として、企業と国家が得た安定性は、個人側の不安定性として現れる。


ここに重要な非対称性がある。


制度は合理化されたが、生活は合理化されていない。


合理化とは、本来は予測可能性を高める行為である。だが、制度の合理化が生活の予測可能性を下げる方向に働いたとき、長期的な意思決定は困難になる。


人は将来を計算できるときにのみ、大きな契約を結ぶ。


住宅ローン、結婚、出産。いずれも長期の継続を前提としている。途中で簡単に撤回できない。だからこそ、将来の見通しが必要になる。


しかし、収入は流動化し、支出は固定的に圧迫される。この環境では、将来を計算するための前提が崩れる。


その結果、人々は慎重になる。


ここでいう慎重さは、消極性ではない。合理的な適応である。リスクが大きければ、リスクを取らない。それだけのことだ。


制度の合理化は、企業と国家にとって成功だったのかもしれない。しかし生活の側では、合理性が別の形で現れた。


それは「将来を引き受けない」という合理性である。


長期的な責任を伴う選択が減少するのは、意識の変化ではない。環境への適応である。


ここまで見てきた構造は、誰かの誤りとして語るべきものではない。制度はそれぞれの目的に沿って設計されている。ただ、その設計が組み合わさったとき、生活の予測可能性が低下するという結果が生まれた。


そして、その結果が少子化として現れている。


次に考えるべきなのは、この状態が偶然なのか、それとも構造的な帰結なのかという問いである。

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