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少子社会の設計図  作者: カトーSOS


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4-4 派遣と消費税が結合したとき


ここまでで見てきたのは、二つの仕組みである。


一つは、派遣によって収入が流動化する構造。もう一つは、消費税によって支出が固定的に作用する構造。


どちらも単体では説明されてきた制度であり、それぞれに導入の理由があった。ここで善悪を論じるつもりはない。ただ、この二つが同時に存在するとき、どのような状態が生まれるかを見たい。


派遣は、収入の継続性を保証しない。


契約は期間単位で更新される。次の更新があるかどうかは確定していない。収入は働いた分だけ得られるが、その継続は常に不確定である。


これは企業側のリスクを軽減する合理的な仕組みでもある。だがその結果、不確実性は個人側に移動する。


一方、消費税は生活のあらゆる消費に一定割合でかかる。


収入が増減しても、生活に必要な支出は大きくは変えられない。そこに税が恒常的に作用する。


つまり、収入は変動し、支出は固定的に圧迫される。


この二つが結合したとき、可処分所得は常に揺らぐ。


収入が不安定であるにもかかわらず、生活費は一定水準を下回らない。税はその生活費に上乗せされる。結果として、収入が減少した瞬間に、可処分所得は急速に縮小する。


ここで重要なのは、単発の困難ではない。


継続的な圧迫である。


収入が不安定な状態では、余剰を前提とした計画が立てにくい。将来に向けた貯蓄は、余剰の中から生まれる。しかし余剰が常に削られていれば、貯蓄は積み上がらない。


貯蓄は、単なる金額ではない。


将来に対する安全装置である。


その安全装置が形成されにくい状態では、人は大きなリスクを避ける。結婚は長期契約であり、出産は不可逆的な選択である。いずれも、途中でやめることができない。


収入が安定し、支出の予測が可能であれば、リスクは計算できる。しかし収入が不安定で、支出が固定的に圧迫される環境では、リスクは拡大して見える。


ここで示したいのは、個別制度の問題ではない。


派遣だけを見れば、柔軟な労働市場の一形態である。消費税だけを見れば、広く薄く負担を求める税制である。


しかし、収入の流動化と支出の固定化が同時に存在するとき、社会は一つの状態に傾く。


それは、不安定の常態化である。


この状態では、将来に向けた意思決定は慎重になる。慎重さは合理的である。だが合理的な慎重さが広範に共有されれば、社会全体として長期選択は減少する。


結婚という長期契約が減り、出産という不可逆的選択が減る。


ここに道徳的な非難は必要ない。


誰もが合理的に判断した結果である。


問題は、個人の判断ではなく、判断を取り巻く前提である。


収入が不安定で、支出が固定的に圧迫されるという前提。この前提が制度として組み込まれているとき、社会は自然にリスク回避へと傾く。


派遣と消費税は、それぞれ別々に説明されてきた。


しかし結合したとき、それは強力な不安定装置となる。


装置とは、意図の有無にかかわらず、一定の結果を生み続ける仕組みである。


その装置が生み出しているのは、将来を引き受けない合理性である。


そしてその合理性の積み重ねが、少子化という結果を形作っている。

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