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7.囚われた聖女

 

 セラフィナは中央神殿に送られた後、新たに目覚めた回復魔法の力を示すように指示された。


 神殿内の一室にて、サルビオ枢機卿をはじめとする数人がその様子を見ることになった。


 その部屋には指を失った騎士がいる。


「さあ、セラフィナよ。この者を治療しなさい」


「はい。セイントヒール」


 セラフィナは指を失った騎士に回復魔法を施す。


「おお!」


 と周囲にいた者たちが声をあげる。今までセラフィナが回復魔法を使ってなかったのが、仕えるようになったからだ。しかもセイントヒールという小さな欠損であれば回復できる魔法を。


 セラフィナは額に汗をかきながら必死に回復魔法をかけている。まだスキルが目覚めたばかりで回復魔法の習熟度が低いためそう簡単に指は戻っていかない。しかし、ゆっくりとだが確実に失った指を取り戻していった。


「これが聖女セラフィナの力か!」


 周りにいる人達はセラフィナを賞賛する。


 そして実際に指を復活させてもらった騎士はセラフィナに感謝する。


「ありがとうございます!」


「無事に治ってよかったです」


 セラフィナは微笑みながら応える。


 騎士は頭を下げながら部屋から出ていく。


「セラフィナよ。これからあの者と同じように怪我をして苦しんでいるものを連れてくるからそれを治療するのがこれからのあなたの仕事だ。分かったか?」


「……サルビオ枢機卿。お話があります」


 セラフィナは意を決したように話す。


「なんだ?」


「教会を辞めることを認めてください」


「それはならん。聖女は教会から抜けることはできぬ。第一、女神様の声が聞こえるものが教会以外のどこで働くというのだ」


「女神様の声が聞こえないからと聖女を辞めさせ、辺境に送ったのはあなたではないですが! 私はもうただのシスターのはずです」


「我々もあれから検討したのだ。わずか数年女神様の声が聞こえぬからと聖女を辞めさせるのは早計ではないかと。聖女候補生たちと同様に修行をさせ、再び女神様の声が聞こえるようにするべきではないかと。そういう意見が出たため、セラフィナを再び聖女に戻すことになったのだ」


「しかし……」


 セラフィナは反論しようとするが、言葉に詰まってしまう。本来であればもう女神様の声を聴けるようになっているのだ。しかし、それを言うと間違いなく教会を辞めることができなくなってしまうがために黙っているのだ。そのためどうしても反論が弱くなってしまう。


「それともなんだ? 貴様は女神様の声を聴くという大事なお役目を粗末にしていいと考えているのか?」

「そのようなことは!」


「なら、おとなしく教会で祈りでも捧げ、再び女神様の声が聞こえるように努力したまえ」


 そう言ってサルビオは去っていった。


 セラフィナは思わずタケルのことを思い出す。


(タケル様……)


 セラフィナはタケルと一緒にいるとどこか心が温かくなった。あの神々しい光を放っているがゆえに最初は緊張したが、接しているうちに人柄の良さが伝わってきた。教会にいる人たちのように作法に優れているわけではない。しかし、タケルが作ったというヤマトという町では皆が明るく幸せそうに暮らしていた。女神様からもらったという農業スキルで人々を救った結果だ。あれはまさに女神様の使徒と呼ぶにふさわしい人物だ。


 あの人のそばにいたい。そう自然と思ってしまうような人だったのだ。


(これもまた試練なのでしょうか?)


 その後、セラフィナは神殿から一歩も出ることを許されず軟禁状態にされるのであった。


 神殿内のサルビオの部屋。


「黙って私の指示に従って動いていればいいものを」


 サルビオはこの期に及んでまでセラフィナが辞めると言ってきかないことにうんざりしていた。


 追放する前はもっと従順な女だったはずだが、心変わりするような何かがあったのかもしれないと推察する。


「まあいい。所詮は無力な女だ。神殿から抜け出すことはできぬ」


 セラフィナはお人よしなので、目の前に傷ついたものがいれば必ず回復魔法を使ってしまう。回復魔法を使うのであればサルビオとしては何の問題もないのだ。


「あの力があれば……」


 昔に病で亡くなった娘のことを思い出す。セラフィナは怪我の治療だけでなく病気の治療もできると言っていた。もしセラフィナがもっと早くに力に目覚めていれば娘を救うことができたのではないかと思わず考えてしまった。


「ふん。くらだんことを考えてしまったな。女神様は無慈悲だ。女神様は誰も救わない」


 どれだけ女神に祈っても病で苦しむ娘を救うことができなかった。それがサルビオの中でのすべてである。


「あの女の力があれば有力者に恩を売ったり、多額の寄付金を集めたりすることができる。絶対に手放すわけにはいかぬ」


 サルビオは机の上にあった報告書を手に取る。そこにはオルドンの町のマルセルからセラフィナを嗅ぎまわっている人がいたという内容だった。


(あの女が教会を辞めると言い出したことに関係するのか?)


 セラフィナは幼少のころから教会におりある意味箱入り娘だ。世間知らずなのでまともに働くことはできないはずだ。そんな中で教会を辞めるという決断をした以上、誰か手助けをしてくれる人がいてもおかしくはない。もしくは、あの力目当ての協力者が。


「しばらくの間、神殿内の警備を厳重にした方がいいな」


 こうしてサルビオはセラフィナを逃すまいと神殿内の警備を厚くするのであった。




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