5.女神様の使徒?
「女神様の声が聞こえました」
セラフィナは先ほどまでの顔と違ってどこか晴れやかな顔をしている。
「そりゃあよかったな」
「はい。すべては女神様の導きでした。それで女神様からタケル様に何かを授けたのでそれをもらうように言われたのですが……」
「ちょっと待て」
タケルはギフトボックスのメニューを開くと種とだけ書かれたものがあった。それをタップするとその種の項目は消え、タケルの手に見たことがない種が現れた。
「これだな」
セラフィナはタケルの手にある種を覗き込む。
「これは一体何なのでしょうか?」
「うーん、分からん。育てて見れば分かるんじゃないか?」
農業スキルのあるタケルでもこの種が一体何なのかよく分からない。普通の作物の種ではないことだけは確かだ。
「ちゃちゃっと俺が育てるけどいいか?」
「はい、大丈夫です」
セラフィナには作物を育てるための知識もあまりないため、タケルに任せることにした。
タケルたちは農場の方に移動した。
タケルは空いている畑に種を埋めて育成スキルを使った。タケルの勘ではこれは一気に育てても大丈夫な種だということは分かっていた。
種から目が出て、茎がどんどん伸びていく。
「わあ」
あまりの成長スピードにセラフィナは感嘆の声を上げた。
茎の先に花のつぼみのようなものができ、パッと開くとそこには小さな実がなっていた。
「これだな」
タケルはそれを収穫すると、セラフィナに渡した。
「多分、それ食っても大丈夫だ」
タケルの勘では少なくとも毒があるようなものではないことが分かった。
セラフィナは見たこともない食べ物なので、一瞬戸惑ったが女神様からの贈り物なので勇気を出してぱくりと食べた。もぐもぐと租借したあとゴクリと飲み込んだ。
「あっ」
声を漏らしたセラフィナは虚空を見つめている。
「スキルをいただきました」
「へえ、良かったな。どんなスキルなんだ?」
「癒しの手という回復魔法が使えるスキルみたいです。……なるほど、だから女神様は人を救うようにおっしゃったのですね」
「そんなこと言ってたのか?」
「はい。私はこれからこの力を使ってより多くの人を救いたいと思います」
セラフィナはまさに聖女と呼ばれるような朗らかね笑みを浮かべてそう宣言をした。
その夜。セラフィナはタケルの家に招いて夕食を食べることになった。
メニューは女神様にお供えしたものと同じものだ。この場にいるのは、タケル、フィリー、カリュネラ、ラグナ、エルミィ、ピルカ、ヴェルノア、セラフィナだ。
「いただきます!」
「「「いただきます!」」」
タケルのいただきますに従って、他の者たちもいただきますをする。セラフィナは早速目の前にあるご飯を食べる。
「ん!」
あまりのおいしさに思わず声が漏れた。
「飯うまいか?」
「はい! とてもおいしいです」
「そうだろ、そうだろ」
セラフィナがうまそうに食べている様子を見てタケルは満足そうだ。
「それにしてもタケル様はものすごいスピードで作物を育てていらっしゃったので驚きました」
「俺は農業スキルを持ってるからな」
「セラフィナに聞かせてやったら、あんたがこの世界にやってきたときの話を」
ピルカが言う。
「それは一体何なのでしょう」
セラフィナが興味津々に聞きたそうにしているので、タケルは渋々話すことにした。
「俺はこの世界に来る前に女神様に会って、さっき言った農業スキルをもらってこの森に送ってもらったってだけの話だ」
「女神様にお会いしたことがあるのですか!?」
「一応な」
「私は信じてないけどね」
ピルカは言った。それに対してセラフィナは何かを考えこむ。
「いえ、そういうことなら色々と納得できます。タケル様は神々しい光を放っていることや農業スキルの特殊性。……もしかしてタケル様は使徒様なのですか?」
「使徒?」
「はあ? 何言ってんのよ。タケルはね、めが……むぐ、むぐ。って何するのよ!」
ピルカが余計なことを言いそうだったので、口をふさいだ。女神アメリアの子供なんていう称号は不要だ。
「別に何か役目をもらったわけでもないし、そんな使徒なんていう大それたものじゃねーよ」
「タケル様がそういうのであれば、そう言うことにしておきましょう」
セラフィナは全然そうだとは思っていなさそうな感じだ。それから和やかに食事は進み、皆が食べ終わったところでセラフィナが改まってタケルに向き合った。
「タケル様に一つお願いがあります」
「なんだ?」
「私はこの場所は聖地だと思うのです」
「聖地?」
「もちろん教会の正式な認定はされていませんが、それは些細なことです。ここは女神アメリア様に最も近い場所だというのは間違いありません。神託を授かる聖女としてはこの場所に滞在しなければならないのです。ですから、どうか私をこの町に住まわせていただけないでしょうか?」
「……いいのか? 教会は?」
「正直、教会のあり方に疑問があるのです。教会よりもこの場所で祈りを捧げた方がいいのではないかと思うのです」
セラフィナは教会の教えが正しいとずっと思ってきた。しかし、この場所でのやり方を見て何が正しくて何が間違っているのかよく分からなくなってしまったのだ。
実際に中央神殿にいる者たちよりもこの町の者たちの方が神々しい光を纏っている人が多いのだ。それでは一体教会の教えとは何なのだろうか?そう疑問に思わずに入られない。
それに何より神社の本殿に立っている光の柱。あんなものは中央神殿でもない。これが見えているのがセラフィナだけなのだが。
「まあ、教会に所属することだけが信仰ってわけじゃないからな。うちに来るっていうなら歓迎だ。神社の管理をしてもらえると嬉しい」
「よろしいのですか?」
「それはこっちのセリフだ。女神様の声が聞こえるなんて最高じゃねーか。もっと何が欲しいかとか聞けるしな」
今のところお供えするものはこちらがいいと思うものを送っているが、実はこう言ったものが欲しいとなればそれを送れる。そうなればきっとポイントも多くもらえるだろうし、タケルにとってもメリットしかないのだ。
「ありがとうございます!」
「こっちこそよろしくな」
「はい!」
こうしてセラフィナはヤマトの町の一員となった。




