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28.戦後処理

 

 タケルたちは戦後処理として、敵だった者たちを扱うかを決めるべく主だった者たちを集めた。


 味方側にはタケル、カリュネラ、ヴェルノア、バルガス、ダルム、シェイド、フォリン、クルガン、オルケイアスと護衛として十人ほどが集められている。


 敵側としては巨人族の代表として副族長だったグラウル、鬼人族の代表としてディオラン、鳥人族代表としてガルーダン、蜥蜴人族の代表としてクルドラク、ゼルアントの魔物がタケルたちの前に連れてこられた。


(うーん、どうするかな)


 タケルは戦いをしたのはいいが、勝ったときこいつらをどう扱うのか全然決めていなかった。処刑するというのは目覚めが悪いし、配下にすると言っても無理やり配下にするのもどうかなという感じだ。


 そのため今更ながら腕を組みどうするのか悩んでいた。


「主様がお望みであれば皆殺しでも構いませんが?」


 ヴェルノアの言葉にグラウル、ガルーダンとクルドラクは顔を青ざめさせる。


「いや、さすがにそれはしねーよ」


 皆殺しはしないということが決まったところでカリュネラが口を挟んできた。


「主―、こいつは配下にしてこき使おうよ! 便利だよ!」


 カリュネラはゼルアントの魔物をガシッと掴みながら言ってきた。


「いや、そいつは操られていただけなんだろ?」


「それはどうだけどさー」


「それなら別にそのまま解放してもいいんだが」


 ゼルアントの魔物を開放するという流れになったところで当の本人であるゼルアントの魔物が発言を求めてきた。


「少しよろしいでしょうか?」


「なんだ?」


「このカリュネラが進化した秘密を知りたいので、ぜひタケル様に仕えさせてください」


「まあむやみに人を攻撃しない、配下にもさせないって言うんならいいぞ」


「ありがとうございます」


 向こうから配下になりたいというのであれば受け入れるいいだろうと判断した。


「それで他の奴らはどうしたいんだ?」


 タケルは、まだ他の奴らをどうするかまだ迷っていたので、いっそのことどうしたいのか聞くことにした。


「できれば私もタケル様の配下に加えていただきたく」


「私もタケル様の配下に」


「わ、私もタケル様の配下に」


 蜥蜴人族族長クルドラク、鳥人族族長ガルーダン、巨人族副族長グラウルがそれぞれ頭を下げながらタケルの配下になることを求めてきた。


 しかしそんな中、ディオランが他とは違う発言をした。


「お前たち配下になるのを望むのがいいが、食料はどうするつもりだ。仮に豊富にあるとしても我ら全員を食わせることは難しいはずだ」


「「「……」」」


 元々食料を巡っての争いだ。仮に配下になったとしても食料がなければ結局奪い合いだ。しかも元々敵だったものだ。与えられる食料はわずかかもしれないどころか、奪われる可能性すらあるのだ。そのため全員黙ってしまった。


 しかし、そんな空気を打ち消すような言葉がタケルから出た。


「食い物ならあるから心配するな」


 食い物ならあると言われても、それでは納得はできず全員疑困惑したままだった。


 そんな様子を見たバルガスは補足をすることにした。


「タケル様それでは分からないかと」


「そうか?」


「ええ、俺の方から説明させてもらいます。タケル様は特殊な力によって農作物を大量に生産することが可能なのだ。そのおかげで我らも飢えずに済んでいるし、難民でやってきたものにも十分な食料を与えることができている」


 ディオランはクルガンの方を見ると、クルガンはコクリと頷いた。


「そのような力が……」


 ディオランはまさか膨大な食料を生み出すことができる力を持っている者が、この森の中にいるとは思っていなかったゆえに愕然とした。


(道は残されていたのか)


 ディオランはあの時食料を巡って争うしかないと思っていた。しかし、そんなことをせずとも生きられる道はあったのだと、今気が付いた。そして本音がポロリと漏れた。


「もっと早くあなた様に出会いたかった」


 もっと早く出会っていれば食料を巡って争うことも、何の罪もない村人たちを捕まえ奴隷として売ることもなかったのだ。ディオランは道を模索し続けなかった自分を恥じた。


 そして新たな決意をする。


「で、どうするんだ?」


「どうか我ら鬼人族もタケル様の配下にしていただきたい。誠心誠意働くことをお約束します」


 そう言って深々と頭を下げる。


「よし! 分かった! 今日からお前らは全員俺が面倒を見てやる! だからもう争うんじゃねーぞ」


「「「「ははっ!」」」」


 こうして敵のすべてがタケルの配下に加わることが決まったのであった。



 ◆



 ヴェルノアは一人戦場だった場所にいる。そして魔獣につけられていた首輪を手に取った。


「やはり似ていますね」


 かつて自分を支配しようとした男と女。あいつらが自分につけた首輪とかなり似ていた。魔獣につけられていた首輪をよく観察すると自分につけられた首輪の劣化版のもののような気もする。


 ヴェルノアは自分を封印から解放してくれたことには感謝しているが、支配しようとしたことは決して許していない。いつか必ず報いを受けさせるべく手掛かりになりそうな首輪を回収した。


「必ず報いを受けさせてやる」


 その瞳には復讐の炎が宿っていた。




 ◆




 タケルは町に戻る前に保存ボックスにある食料を大量に出した。それだけで安泰というわけではないが、とりあえずの食べるのに困ることはないだろう。


 大量の食料をいきなり出したことに、元々敵だった者たちは驚き、喜び、涙した。もう戦わないでも食事にありつくことができ、家族も空腹に苦しませることはなくなったのだから。


 細かい差配はヴェルノアをはじめとする一部のものに任せ、タケルたちは町に帰った。


 タケルたちは町に帰ると戦勝祝いとばかりに大盛り上がりで待っていた。


 その後勝利祝いとして宴を開きみんなで飲み食いした。


 そうして一段落したところで、家でフィリーとゆっくりと話ができるようになった。


「それでどうなったのかしら?」


「……全員俺が面倒見ることになった」


「まあ、そんな感じになるんじゃないかと思ったわよ」


 フィリーはジト目で見る。


「待て! 俺にも考えがあって配下にしたんだ!」


「考え?」


「大農場計画だ! 俺の配下たちにはそれぞれ自分の村で畑を耕し作物を育て俺に納めさせる! そして、俺はそれを売ってお金を手に入れる! 完璧な作戦だぜ!」


「……普通の領主とやってることはほとんど同じね」


「……確かに!」


 フィリーに言われて気付いたが、タケルがやらせようとしていることは普通の領主と同じであった。


「いっそ国でも作れば?」


 フィリーは冗談交じりで言う。


「いや、さすがにそれは気が重い……俺も農業したいし面倒ごとは増やしたくない」


「まあ、でも周囲の国は放っておかないかもしれないわよ」


 国という体裁を取っていなくても、周囲の国からは国家に近い扱いを受ける可能性はあるのだ。その場合国家という体裁を取っていないと不利に働くこともある。


「……なるべくひっそりとしていよう」


「それができるといいわね」


 タケルはなんだか面倒くさそうなことになりそうなことはひとまず棚に上げ、気分を入れ替える。


「それはさておき! 俺は新しい野菜の販売先を開拓するぞ! 俺の野菜のうまさを世に知らしめ世界を支配するのだ! がっはっはっは!」


 こうしてタケルは新たな目標を定め進んでいくのであった。




 ◆




 クルガンは妹のエウラシアが待っているテントに戻る。


「お兄様……母上たちはどうなったのでしょうか?」


「……北の国のどこかに奴隷として連れ去れた可能性が高い」


 クルガンは一瞬迷いながらも、正直に話すことにした。


 クルガンは商人との取引に関わっていた巨人族の者たちから情報を聞いていた。


 その結果、どこに連れ去られたか分からないということが分かった。


「そう……ですか……」


 エウラシアはその情報を聞いて落胆した。


「っ!」


 落ち込んだ妹の様子を見てクルガンは今すぐにでも救いに行きたい気持ちが湧いてきた。しかしグリムヴェイル大森林の北部の国々に牛人族であるクルガンが侵入したら、捕まる可能性が高い。そのため情報収集すら難しい。そんな自分の力のなさに悔しさでいっぱいだ。


 クルガンは落ち込んだ妹を慰めるべくハグをする。


「俺がいつか必ず母上たちを救ってみせる。だから、それまで待っててくれ」


「はい」


 絶望的な望みだと知りながらもエウラシアは健気に少しだけ元気を出し返事をしたのであった。



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