29.間章 女神と覗いていた者たち
女神アメリアは相変わらず毎日お供えさる食事やお菓子、お酒などを寝ころびながら食べたり飲んだりしながら、モニターでタケルたちの様子を見ていた。タケルが元居た世界で言うならば二十四時間配信をずっと見ているようなものだ。
「なかなか愉快な展開になってきたじゃない」
最初は農業スキルを要求され一人で農業を始めたときはどうなるかと思ったが、いい感じにイベントが起きて面白いことになっている。どんどんタケルという人生のコンテンツにはまってきている女神アメリアであった。
「私が何もしないでイベントが発生するのはいいけど、これじゃあクエストも依頼できないのよね……」
自分のことを大事に扱うタケルに対して何か与えたいという気持ちもあるが、かといって無条件であげるというわけにもいかず、じれったい思いをしている。
「ま、きっとまた別の機会があるでしょう。上げ過ぎも良くないしね」
女神アメリアはうんうんと一人頷く。
「さて、続きはどうなるのかしらね」
女神アメリアは大事なことを忘れているのだが、それに気づかずにタケルの人生というコンテンツを見続けるのであった。
◆
時はちょうどタケルがブラドを倒した瞬間。
戦場から遠く離れたところで、カーニア、ラピノザメトラの三人は戦の様子を観察していた。
なぜかハァハァと息の荒いカーニアが満面の笑みを浮かべている。
「戦ってもいいよね! 戦ってもいいよね!」
「ダメです! カーニアさん! ダメです!」
今にも飛び出しそうなカーニアをラピノザとメトラが必死につかんで止めようとしている。
正直敵の強さが想像以上だった。こんなことならカーニアと一緒に戦の様子の観察など行わなかった。
「魔人に悪魔にあの男。三人一緒ならものすごく楽しめると思うんだ!」
ラピノザとメトラが一緒でも徐々に引きずられていく。
「あー、もう戦っちゃう!」
「ダメですって! 上に怒られますよ!」
「怒られてもいい! だって、戦えるんだから!」
止まりそうにないカーニアにラピノザとメトラは慌てる。
「この手は使いたくなかったのですが……私が持っているはちみつが使われた非常食の残り全部をカーニアさんに差し上げましょう!」
「……少し弱い」
と言いながらもカーニアの勢いが弱まる。
ここは攻め時だと感じたラピノザは追撃する。
「あとメトラさんが持っている砂糖がふんだんに使われている甘いクッキーも差し上げましょう」
その言葉を聞いてメトラが驚愕する。こっそりと隠し持っているのがバレているというのと、それをカーニアにあげるという二つの意味でだ。
「それで手を打とう」
ようやくカーニアの勢いが止まった。
「ふぅ……」
ラピノザが一息ついているところにカーニアが手を差し出す。さっさと約束したものを寄こせと言うことだ。
「はいはい、分かっていますよ。ほらこちらです」
そう言ってラピノザはカーニアにはちみつが使われている非常食を渡す。
「ほら、メトラも寄こせ」
「はい」
渋々という感じでメトラもカーニアにクッキーの入った袋を渡す。
「……まだあるだろ。出さないっていうなら戦いに行くぞ」
「……はい」
さらに渋々という感じで残りのクッキーもすべて出す。
手にいっぱいの甘いお菓子を見てカーニアはにんまりと笑顔を浮かべる。そして早速食べ始める。それをメトラは少しばかり羨ましそうに見る。
「やれやれ、痛い出費ですね」
「でも、良かったんですか? カーニア様が行かせるのも一つの手だと思ったのですが……」
メトラは今回の作戦の深いところまでは知らされていない。あくまでラピノザの指示に従うという指示しか知らされていない。あの手ごわい相手をここで始末してしまうのもいいのではないかと考えたのだ。
「あなたは知らされていないでしょうが、今回の作戦目標の一つに、グリムヴェイル大森林を大きな勢力に支配させるというのがあるのですよ。だから、巨人族側が負けたとしてもそれは構わないのですよ。もちろん最善ではないですが、次善といったところでしょうか」
「なるほど」
「ですから、カーニアさんが飛び出してあの勢力の主要人物たちを殺してしまう方が問題なのです」
もぐもぐと口に頬張ったままカーニアが質問してきた。
「作戦はもう終わり?」
「ええ、終わりです。奴隷の大量確保、首輪と丸薬の実験もそれなりにうまくいったので上もきっと喜ぶでしょう。あとはあの者たちが上の狙い通りのことをしてくれることを祈りましょう」
こうしてラピノザたちは報告のために本部に戻るのであった。
3章終了。。。
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2週間くらい休みます。7月13日再開予定。




